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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #005


蔓草文様の装飾がほどこされた古びたアイアンの脚。
その上にのっかった20cmほどの小さな丸い木板。
この家具、かつてはイギリスの歯医者で活躍した、
歯科技巧の道具を置くための台だったという。

今回は新旧の素材が行き交うお店、
「Sieben」の瓦吹さんにお話を伺いました。





元リペア職人が見つける、素材としてのアンティーク

「Sieben」のオープンは一昨年の秋。
瓦吹さんはこの店の品を買い付け、
またどこかの場所に納められるまでの全てを取り仕切る。

ここはいわゆる普通のアンティークショップとは少し違う顔をもつ。
店舗は3F建てのビルの2階。
1Fには店舗内装をメインとしたデザインオフィス、
3FにはBARを併設する。
この全てが「TYPE SEVEN」の仕事としてつながっているのだ。
買い付けるモノに特にジャンルは無いという。

「ショップの内装などで存在感を放つもの、
あと素材としての意外性があるモノ」
「現地でも既に実用としては使われなくなった道具とか、
工業製品とか。」
使える‘素材’として古い家具や道具の可能性を
引き出しているところがこのお店の面白さだと思う。




瓦吹さんはこのお店を始めるまで、実際に都内の
アンティークショップで家具のリペアの仕事をしていた。
当時はお店の商品以外にも、横尾忠則邸や、
日本へ転勤する外国人が携えてきた代々受け継いだ
アンティーク家具、また飲食店の家具リニューアルなど、
さまざまな‘古い’家具たちを直していたそうだ。

アンティーク家具の修理は、一から製造するのとは
また異なる技術を要する。
椅子の修理は全ての部材をいったんばらし、
古い接着剤である膠をとってヤスリをかけ、
新たな接着剤を入れて組み直す。
その際、破損部は当然、新しく作って合わせ、
最後にはげた部分等に色を入れて塗装をかけ直す。
同じ木材の家具でも、使われている素材や作られた時代、
場所も千差万別。
その修理には様々な知識が必要だ。




現在の買い付けという仕事に、
このリペア職人時代に得た経験が生きている。
「マーケットでの買い付けはひらめき」と彼はいうが、
モノに出会ったとき、状態をみれば日本に輸送後
リペア可能か、またそれが金銭的に見合うかも
即座に判断できる。
これらの家具は彼らがデザインを手がけるお店の
重要なアクセントとして見つくろわれ、
時には新たな形に生まれ変わる。




今のモノと昔のモノ

今と昔のモノの違いを聞いてみた。

「素材かな。あと、極力装飾性が殺ぎ落とされた現代の
実用品としてのプロダクトとは違って、
古い工業製品には作り手や使い手の
オーダー家具的な遊びがある。
現在と比べて小ロット生産だったから出来たんだと思うけど。」




素材としてのアンティークとはどのようなものだろうか。

「アンティークのミシンの脚にスチールの天板とか、
逆に天板に朽ちた古い扉を使い、ステンレスの脚を
東山さんみたいな職人さんにつくってもらうとか、
面白く使える素材はたくさんある」

古いモノをただオーセンティックなアンティークとしてではなく、
様々な時代や場所の背景をもった個性ある素材として
提供する店。
近々、agariとしても一緒に素材同士を合わせられれば
と思っています。



Office「TYPE SEVEN」 Shop「Sieben」
所在地 東京都渋谷区南平台町7-9 type7 Bldg2-6-8 2F
URL http://www.type-seven.com

東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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