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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #006



今月は錆び(サビ)の話です。

なぜなら、なぜか最近、agariは「錆び」仕事が多いからです。


展示会に出展した「花台」

そういう自分も、2月の展示会では「錆び」仕上げに
アレンジを加えた作品を発表しました。

「サビ」は本来、空気中で酸化して腐食していく過程で
出てくる層です。
ほっといたら鉄は当然錆びるのですが、
それでは仕事にならないので、
鉄に希硝酸をかけて腐食時間を早めます。


今回の作品の特徴は、「錆びの腐食分け」。
黒と茶色の部分共に、実は錆びさせています。

黒い部分は鉄で作った花台を一度全て錆びさせて
茶色に変化させた後に、サビ固定剤という薬品を塗って
さらに墨のような色に変化させました。
この薬品は屋外の鉄柱にも使われるほど防食効果が高く、
水がかかりやすい花台にも使えるというのが狙いです。
錆びた茶の美しさと、墨のような黒が合わさり、
どことなく日本らしさを感じるところが僕の好みでもあります。



錆び加工中

錆びさせる方法を紹介する本はわりとあるのですが、
「錆び」の歴史云々についてはあまり知らなかったので
ちょっと調べてみました。


さて、「錆」という漢字は日本特有の国字だそうです。
その成り立ちは、おもに次のような説があります。

1. 「金」の右側の「青」の上半分は「生まれる」、下は「丹」で赤を意味する。「錆」とは「金に赤を生じる」、つまり赤サビを表している。
2. 本来の意味は「金属の澄みきった色や、音」。日本では誤解され、金属のサビの意味となった。(現在、中国では「銹」が用いられ、「錆」という字は使われないとのこと。)
また、サビが出ると平らな表面が荒れることから、「錆びる」は「スサブ」という意味にも使われます。


腐食し、錆びるということは一般に好ましくないこと
と思われてきたようです。


人工的に錆びを防ぐ方法が考えられるようになるのは
大体15世紀ごろ。

それまでは、「働く鉄は錆びない」といわれたように、
使って研いで、磨いて・・・という作業を通して
人々は金属を錆びさせないように頑張ってきました。
特に刀剣を魂としていた日本の武士は、
刀が錆びることを恥とし、研ぐ技術が発達したのは有名です。
また日本の5世紀の古墳時代の出土品から、
錆びを防ぐために漆を塗った鉄の工芸品が
見つかったそうで、昔の人々は大のサビ嫌いだったとみえます。



錆び加工中

ところが、錆びた「色」、いわゆる「錆び色」は、
古くから日本人に好まれてきたようです。

奈良時代には、例えば銅に少量の金を合わせて
硫酸銅等で煮沸し、錆び色に変化させた赤銅(しゃくどう)
といった合金などが生み出されました。

その後時代が下って茶の湯が盛んになり、
「錆び色」を美しいとする感性が広がるにつれ、
「錆び付け」と呼ばれる鉄への着色技術が開発されました。

茶の湯の釜には鋳鉄がよく使われますが、
茶人達はこの茶釜の「錆びた」姿を「金味」(かなあじ)
と言って愛でるわけです。
しかしこのように錆びた状態で茶釜を使うようになったのは、
実は室町時代後期以降だとか。
それまでは茶釜を使った後に
よく洗って真っ白く光らせていたというから驚きです。



実験中!

銀白の金属色を良しとしていた日本人の感覚が、
侘び茶の広がりとともに「錆び色」を自然な深みのある色
と感じるように変化したのです。


最近の仕事では、銀色の鉄の生地と錆び色の組合せを
デザインに生かした仕上げ等もあり、
「錆び」に対する美意識も変化しし続けているのを感じます。



東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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