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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #011




上は、厚さ1.5mmのステンレス板を貼り合わせた、アクリルの引き戸付きの棚。
下は、長さ2m75cmもある同厚の一枚板を3回折り曲げた二段の棚。
ディスプレー什器のようなこれらの長い棚は、先日、製作取り付けした目黒の個人邸の仕事です。
デザイナーさんによるラフスッケチから始まったこの家具は、とにかく板が薄くて幅が長い。そしてシンプルに仕上げる事が重要。(キビシイ・・・)



























しかも頭を悩ませたのはその取り付け場所。
通常、棚の背面に穴を開けて取り付ければ
そんなに強度を意識しなくて済むのですが、
今回は背面の壁にネタ(石膏ボードの裏側にある木や鉄、
コンクリート等の補強)がなかったため、
両側の壁だけでもたせなくてはならなかったのです。


特に中に仕切りが付いた引き戸棚は、
いくらステンレスが強いとはいえ、単に溶接で接いだだけでは
グニャっと波打ってしまう。
そこで、上下の板を手前に折り曲げて強度をもたせました。
引き戸のレールもシンプルに隠せ、一石二鳥。
さらに中の仕切り板の数も1つ増やして補強し、
全体的なバランスもよくなりました。


しかし、困難は取り付け当日まで続く。
真っ白に仕上がった壁の間に、壁幅よりわずかに小さい
サイズの立体をキズ付けずに入れるのこそ、至難の業。
(片側2〜3mmの隙間で仕上げる寸法なので。)


壁は一般に垂直/水平には建てられていないため、
手前と奥では寸法が結構違うのです。
リフト状に平行に支え、3人で少しずつ入れていくのですが、
途中でつっかえて動かなくなって、
変な態勢で持ち上げたまま嫌な汗が・・・・・
どうにか取り付け位置まで持ってきた時点で
ヘトヘトになり腕は既にパンパン。
一緒の部屋で作業していたセコムの人も見かねて参加してくれました。
さあ後は両壁にビスを効かせるだけという時に突然、問題発生!


片側に4ヶ所ずつ止めるのですが、手前の2ヵ所だけビスが効かない!
ボードの裏には鉄がびっしり敷き詰められ、
どこにでもビスが効くハズなのに、運悪くその隙間に入ってしまって
ビスは柔らかいボード部分に刺さるだけ。
しかし、棚はその位置からは動かせない・・・というより動かない。
ビスを斜めにも打てないし、不恰好になるから
板の穴を広げる事も出来ないという状態・・・


ステンレス板上の5mmの穴からボードに打つ手段を
考えあぐねていたところ、薦められたのが<アリゲーター>。


アリゲーターはボードアンカーやトグラーといった小さな器具の一種。
(石膏ボード−天井や内壁に用いる板状石膏材。脆いため直接ビスを打つともたない−に打つとボードの内側でプラスチックやアルミの器具が広がって、ボードと一体化することでビスを固定するというものです。)
しかし今までの経験上、(使い方も悪かったのでしょうが)
しっかりと固定されるイメージがなく、あまり信用してなかったのです。


買ってきた「アリゲーター」のパッケージにはワニの絵。
そしてその横には「かみついたら離さない」の文字が・・・・・・
ウソくさい、まずワニの絵がウソくさい。
説明書によれば、コンクリートの下地なら
一本で1トンの加重に耐え、ボードなら170kgまでOKというが・・・


ムムムと思うが、効くというモノには
何でもすがらなくてはならない辛い状況。
ステンレスの小さな穴からスーと入れビスを回し入れると
確かな手ごたえ!がっしりと効いている。  


アリゲーターよ、ありがとう


他のアンカーたちも今まで疑ってごめんなさいである。

おまけにセコムさんもありがとう。

現場では今日も、ありとあらゆる人が、ありとあらゆる形のモノを取り付ける。
それに応じて器具も進化しているのだと実感した。
現場では想定外な事が起こるのは当たり前で、
そんな時のための準備と情報に日ごろからアンテナを
張っておくのも大切だと改めて思わされた一日でした。


東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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