モノ作りの現場から(アーカイブ) | 読みモノ(アーカイブ) | 最新のコンテンツはこちらです
ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #012



今月製作した扉の飾り格子に絡め、
今回は「格子」の話。



バーナーで板を溶断


仮組み





今回作った扉は、以前家具会社の工房で
働いていた時に製作を担当した、
青山のカフェのドアのデザインが元になっています。

この時は同僚のデザイナーのアイディア・プランから、
自分がバランスを見て、‘自由に’作らせてもらいました。
この‘自由に’っていうのが、けっこう難しい。
でも平面的な直線構成は、けっこう好きなジャンルだと、
仕事に取り掛かってから気づいたりもします。

今回はまず、2、30枚くらい
白い紙にラフスケッチを描いていきました。
あくまで‘自然で’うるさくなく、
でもある程度の強度を保つデザイン。
こういうものは描けば描くほど、
どれがいいかわからなくなるものです。
単なる直線の組み合わせのはずなのに、
いや、それだからか、幾何学の迷路に入り込むような感覚。
結局2、30枚描いた中から、
自分が選んだのは描き始めから3枚目のものでした。


しかし、机上のプランを実際に拡大して立体にすると、
当然バランスが違ってくるため、足早に実物の製作へ。
素材は、バーナーで鉄板を切断して、平棒に加工。
焼き切るときに切断面の両端が自然と波打つので、
1本ずつ表情が出るのが特徴です。
実際に棒を仮止めしてみて、
バランスを調整しながら製作を進めていきました。


i.桂離宮室内


ii.桂離宮の庭


iii.ポシャギ


iv.御絵図

さて、ここらで本題(?)。
ドアの取り付け後の写真を見た知人が、
「十字絣なの?モチーフは」と一言。
後日、沖縄の染織の本を開いて納得。
その中に、十字紋様が斜め方向に流れる、
美しい絣(かすり)柄の着物を見つけました。
それから、「格子」モノが気になりだして、少し調べてみました。


工芸品や日本の古い建築を見て、
そのモダンなデザインに息を呑む瞬間があります。
自分は中でも、キッパリと美しい直線の構成に目がいくようです。
いくつか紹介すると・・・


i.桂離宮の室内装飾
和室に映える水色と白の市松模様。
何気ない床の間の違い棚は必見。
欄間や畳縁も含め、あらゆる直線が交差する独特の世界。


ii.桂離宮の庭
ランダムな平面構成や敷石が絶妙。
ちなみにものの本には
「庭は作り手の精神世界を表わし・・・」とあります。
作者にいまだ定説のないこの庭、どんな人が作ったんだろ?


iii.韓国のポシャギ(包み布)
パッチワーク技法を使ったポシャギは「チョガッポ」と言われ、
庶民が余り布を利用して製作したものらしい。


iv.琉球織物の「御絵図」
写真の右ページは、実物の織物じゃなくて、
「御絵図(みえず)」と呼ばれる、いわば柄のデザイン見本。
首里城内で絵師が布幅とおなじ紙に顔料で描いたもので、
周囲の島々に配られてそれを元に織物が作られた。
ちなみに、左ページは噂の絣の着物。
絣といってもいろんな種類の柄がある。


いずれも作り手や使い手が見えるような表情をたたえている。
モノを作り、使う過程で遊び心が加えられ、
生まれた直線の交差。
洗練されたデザインは、潔さと活きのよさが快い。
同じ直線と面の組み合わせでも、
モンドリアンなどの極限まで恣意性を排したデザインとの
決定的な違いが、そこにある気がする。


表情のある「格子」のデザインは、
その向こうの風景をより魅力的に見せるようだ。


東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



#040 2009.12 骨パンダさんと銅の引き戸
#039 2009.06 部屋の息づかい―「シカケモノ」part2
#038 2009.05 「シカケモノ」
#037 2008.08 自分寄りのトロフィー
#036 2008.07 器としてのトロフィー
#035 2007.12 一筆書きのツリー
#034 2007.07 34回目にあたり
#033 2007.06 光のスジミチ
#032 2007.05 照明展への覚え書き
#031 2007.04 蜘蛛の巣
#030 2007.03 旧小坂邸の内と外」
#029 2007.02 2月の現場
#028 2007.01 初夢につられて
#027 2006.12 「シルバー色」は譲れない?
#026 2006.11 科学のじかん −鉄をまなぶ子供たち
#025 2006.10 抜群の切れ味
#024 2006.09 トースターのある机 - Oi design 岡嶌要 -
#023 2006.08 砲弾と包丁
#022 2006.07 わざわざ
#021 2006.06 リズムが生み出す装飾
#020 2006.05 ちょっとの余分
#019 2006.04 鉄を切りながらおもうこと
#018 2006.03 都会の中の「温室」と「学校園」
#017 2006.02 「雪」を伝えるには
#016 2006.01 江戸城跡で「工芸」を見る −鷹は静かに語りかける
#015 2005.12 iPod と フォーク と やかん
#014 2005.11 モノ作りを取り囲む“つながり”
#013 2005.10 ジオグラフ
#012 2005.09 「格子」の向こうに
#011 2005.08 ワニとの出会い −目黒の現場にて−
#010 2005.07 仕上げと防錆
#009 2005.06 黒皮という素材 / モノの行方 -ある博物館にて
#008 2005.05 ぶらり、天文観測所
#007 2005.04 九印
#006 2005.03 錆の話
#005 2005.02 Sieben
#004 2005.01 有限会社菊屋
#003 2004.12 金属の加工について
#002 2004.11 Delivery Works 俵藤ひでと
#001 2004.10 展示会出展家具について