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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #014




ここ数年、秋はインテリアやデザイン業界にとってにぎやかな季節になりました。
今年は、TOKYO DESIGNER’S WEEKも新たな装いとなり、さらにDesign Tideという新しいイベントが開催されるようです。
この時期は通常の仕事に加え、これらのデザインイベントや、展示会関連の仕事が
どさっとやってきて、てんてこまいになります。
よく去年は自分たちの作品を作って展示会をやったなあ…と自分でも驚いたりします。
前の会社では国内外のデザイナーのプロダクト試作を手がけていたため、
独立してからもそういう仕事が多いわけです。
新たなデザインやモノ作りの流れを生み出すべく、革新的なモノにチャレンジするケースが多いので、
頭も時間も通常の仕事よりも倍以上かかりますが、そういう方たちと一緒に考えていくモノ作りの作業過程は、
新たな構造や仕上げ方法を模索するいい刺激になっています。

今月は、今回のイベント関連の仕事の中から、2組のクリエーターを紹介します。









まずは「ground2」。

このg2(という略称らしい)は、
デザインやアート、音楽などの分野で活躍するクリエーターの基地。
中心となるのは、gift_labとTRIggERの2つのユニットです。
TRIggERは60−70年代のミュージックシーンを中心に、
「時代」のメッセージを検証して、
そのエッセンスを現代に復活させるというカルチャーショップ。
そして、gift_labは後藤寿和さんと池田史子さんの
ユニットgift_のいわば実験室的空間。
彼らのオフィスであると同時に、ギャラリー兼ショップ機能ももつ。
後藤さんはスペース+サウンドデザインを手がける奇才で、
この「ground2」の空間デザインも担当している。

「ここはただのインテリアデザインのオフィスではなく、
自分たちの切り口で選んだテーマをもって
<研究発表>していくためのラボ。
この場所で、自分たちの世界観をプレゼンしていきたい」
と語る。

60−70年代という切り口からアイテムを揃えるTRIggERの
ショップと音響・環境系を中心とするサウンドアート、映像など
トランスジャンルな発表を行うgift_labのギャラリー、
そしてデザインオフィス…と、
テイストもジャンルも違う多彩なメンバーが集まる面白さ。
ground2を構成するメンバー自身が、
いままでの職業の括りを軽々と飛び越えて
オリジナルのジャンルへと融合していくような人々。
次世代のクリエーションが芽吹いて育っていく
「土壌」という意味がこめられたground2で
今後なにが起こるのか、期待しています。

今回デザインタイドには「ground2」という空間演出として参加予定。
agariはそこの什器の一部を製作させてもらいました。











次に紹介するlimb green(リムグリーン)は、
ガーデンデザインを手がける温室の塚田有一さんと
インテリアデザイナーの福田晶子さん(Limb Co.)の
コラボレーションユニット。
agariは展示会で彼らが発表するプロダクトの
試作製作を担当しました。

展示の場所は、塚田さんが主催するギャラリー「温室」。
代官山ヒルサイドテラスの屋上にあった温室を
そのまま活かした、外に生い茂る木々や雲の流れ、
夜には月も眺められるスペースです。

今回2人が取り組んだのは
「インドアガーデンファニチャー」の開発。
庭のデザインから本格的な花活け、
グリーンを使ったアートワーク、そしてワークショップ・・・
と幅広く活躍する塚田さんは、
これまでもそれぞれの仕事に応じて
自分のイメージを実現するために
受け皿となるアイテムまで特注で作ってきた。

一方の福田さんは空間デザインから、
家具、雑貨などのプロダクト開発まで
精力的に取り組む、根っからのクリエーター。
手仕事から生み出されるモノの面白さを
引き出すのが得意で、職人と協力して
(職人泣かせとも言う…)新たな素材使いや技術に
チャレンジする姿勢には、いつも頭が下がります。

「室内のデザインにもグリーンの要素は欠かせない。
でも、室内に置くとなると、デザインがよくて実用性もある
鉢カバーやプランターってなかなかない。
だから、今回は<なんでないんだろう?>と
いつも探していたモノを作りました。」

水はけという制限を
逆にパイプを活かしたデザインへと昇華したプランターや、
吹きガラスの花器が宙に浮いたようなテーブル・・・
長年の仕事の中で浮かんでいた構想をお互い話す中で、
アイディアが次々と湧き出てきて、自然に形になっていった
と福田さんは話します。

ガーデンとインテリア。
部屋のウチとソトをフィールドにしてきたクリエーター2人が
手を組んで仕切りが取っ払われた、
そんないままでぽっかり空いていたすき間を埋めるよう新鮮なアイテム。
今後は商品化を目指してさらに開発を進めていく予定
ということで、これまた楽しみです。

今回は2人のユニットを象徴して特別にオーダーした色、
「リムグリーン」が会場である温室の壁に塗られています。
リムグリーンもデザインタイドに参加しているので、
是非足を運んでみてください。



さて、今年のイベントは分業化やジャンルの細分化が進んだ弊害を打ち崩していこうという
気概あるクリエーターの存在が際立っているという印象をもちました。

デザインという切り口から出発したこれらのイベントも、年を重ねるにつれ、
モノを作る、何かを創造してそのつながりに注目していく視点へと変化をとげているようで、
参加者もより多様化しています。

デザイナー、職人、アーティストといった肩書きや所属するジャンルの括りは、
ときに誇りとなるかもしれないけれど、
自らの活動をそれらの枠組みにあてはめて停滞される恐れもあわせもっています。
自分の技術や仕事を極めていくことは、自分がやることを固定化することとは違い、
むしろ新たな人や素材との出会いの機会を広げ、時代と向き合うことを可能にしてくれると思います。
現代手工業乃党がめざすのも、まさにこのモノ作りを取り囲む“つながり”。
風向きはぼくらの方に向いてきていたりして・・・


ground2
http://www.ground2.net/


gift_lab
http://www.giftlab.jp/


limb green
http://www.limbco.jp/





東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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