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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #017




何かものを考えたり悩んだりする時に、
靴下を脱いでイジル癖があります。
最近、靴下をムニョムニョと動かしていたら、
いろんな靴の形にみえてきて
「靴のデザインって、こうやって考えたら面白いな」とか思いながら、
つまんだり、ひねったりしながら楽しんでいます。




そういえば先月、「模型を作るための机」を
あるインテリア・デザイナーに頼まれて制作しました。
模型が作りたいがために、広いスペースに引っ越したとのこと、
手から出てくる形やイメージを大切にしたい、
という話が印象的でした。





昔、ある彫刻家が考えた一連の家具シリーズの
試作をした事を思い出しました。
弧を描いた細い鉄の丸棒が複雑に組み合わされ、
鳥の巣のように枝が絡みあったような
イメージのイスやテーブル脚でした。
最初にもらったのは針金で作った小さな模型のみ。
模型と格闘しながら実際にパーツを組み上げていくうちに、
彼の頭の中にある法則が徐々に見えてきて、
図面や絵では表現しづらかったんだろうなぁ、と感じたものです。


欲しい形を伝えたいときに、模型じゃなくても、
写真集や雑誌の切り抜きなどでイメージを伝えてくれる人もいます。
実際、イメージから共有していくことは、
線や数字で表わされた情報に加えて、
意外に重要だったりします。
口で伝えられたわけではないけど、
写真の中のテーブルが光をきれいに反射していて、
そんな感じの見え具合が欲しいのかな?と想像できたり、
そのモノに求める存在感の強弱がわかったりします。
でも、それを表わす言葉となるとなかなか見つからない。


どこかの雑誌で、人は名づけることによって、
その名が指すものを意識して区別し始めると読んだ覚えがあります。
イヌイットの人たちは「雪」を表現するのに、
たくさんの言葉を持っているとか。
雪に囲まれた生活では、「雪」をあらわすのには
「雪」という一語だけじゃ全然足りない。
微妙な形や色、硬さの違いなどを認識して共有しあうために、
さまざまな「雪」を指す名前が存在するのでしょう。
イヌイットの人たちにとって、
「雪」とはどんなにたくさんの言葉でも表現しきれないような
微妙な違いや豊かな表情をもったものなのではないでしょうか。


モノ作りにとっての形出しや、磨きや塗装の仕上げは、ときにイヌイットの「雪」のようなものなのかもしれません。



東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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