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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #019




さあ、東北の方々、これから花見ですね。
今月からページの更新が15日組になったアガリです。
けっして先月末書き忘れたわけではありません。

ここ数日、自分の頭は「パイプの鋭角切り」と「ナスカ展」のことで一杯です。
一見関係なさそうなこのふたつ、実際も関係ないんですが、しかし・・・

話は遡ること数週間前。教育テレビの番組で、夢のようなマシーンを見ました。
その装置は、手描きの絵を機械にインプットすると、
その絵が3次元化されてプラスチックの立体になって出てくるというもので、
携帯電話の試作などにも使われているらしい。
透明の液体に特殊な光線を当てて成形すること数時間。
液体の中からウソのように、複雑な立体が浮かび上がってくるのです!
「うわ!もう職人いらないじゃん。」
未来はもう来ている!と実感して、一瞬うろたえる自分。


右の角パイプを写真左側のように切断していきます。


グラインダーによる“手切り”


2つのパイプを合わせて溶接中。


磨いて完成。


工房にある45°までなら切れるメタルソ―


ナスカ展は上野の科学博物館で6/18まで。
土器に、ミイラに、頭蓋骨・・・ 
地上絵というよりは、地上絵を描いた人々の生活が明らかに。


気を取り直して翌日工房へ。
発注されたパーツの図面を見ると、
パイプ2本合わせて20°にする鋭角切り。
それが何十本も必要。
でも、手持ちの機械で切れる角度は45°までなのです。
角度に合わせたジグを作り、各パイプに一本ずつ線を引いて、
グラインダーで切り落とすことに。

― そう、未来は来ているのに、僕は“手切り”・・・

もちろん、大規模な機械があれば、
いとも簡単に大量切断できるのですが、
少量を手で製作している自分の規模では、
そんな高価な設備は不相応というものです。
というか、グラインダーに付けて
鋭角に切れるようになる付属パーツとかないんですかね?
(いや、ありますよね?きっと。)

全く人の手にかからず
モノが出来上がってしまうのは淋しいけれど、
道具と共に仕事をしている身としては、
機械工具が進化してさらに様々な形が作りやすくなるのは、
やはり大歓迎ということでしょうか。


一方、時代はかなり遡ってナスカ時代。
先週、上野で話題の「ナスカ展」に行ってきました。
地上絵のあれです。ちなみにペルーです。

ナスカが繁栄したのは、紀元前1世紀から紀元後7世紀。
人々はなんと金・銅以外の金属加工は手がけず、
植物のトゲや骨製の針、黒曜石のナイフなどを駆使して、
器や織物、装飾品を作ったり、
頭蓋骨手術までしていたといいます。
そして、幾何学模様や動植物の巨大な地上絵を、
正確な直線や曲線で描いたというからさらに驚きです。
(直線だけでも、数キロにおよぶものもある!)

まあ、僕は「宇宙人説」を採りたいところなのですが、
この展示会はこの説を全否定。(注)
どうやら、ナスカ人が身近な素材を存分に駆使して、
これだけの偉業を成し遂げたらしいです。

結局のところ、道具は使いようってことですか。

道具をつかってモノを生み出すナスカ人の工夫と、
複雑な作業をスピーディに実現する道具の進化。
21世紀の現在、自分の立ち位置は、
ナスカと例のスーパー・マシーンとの中間といった感じでしょうか。

この先、どのように機械化されいくかは未知ですが、
自分の感覚を手から道具に伝えてモノを作り上げるプロセスが、
きっと自分には合っている気がします。・・・今のところ。

とはいえ、「ホントはきっと宇宙人と交信してたのに・・・」
と信じたい今日この頃です。


※注
「(宇宙人説は)地球上の文化には地上絵を作る技術力はなかった。
だから、その作業は人間よりも優れた地球外知的生命体
によって行われたに違いないというものである。
この説は、限られた技術だけで人間がどれだけのことを
成し遂げられるかを理解していない人々の
無知につけこむものだった。」
(「ナスカ展―地上絵の創造者たち」展示会図録より)

そこまで、言わなくても・・・


東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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