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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #022



7月ももう半ば、気温34度。室内体感温度それ以上。
暑い、むしろ熱くさえあるウチの工房。
こんな目玉焼きが焼けそうなところで、なんでわざわざ、鉄を熱して作ってるんだろうと、
一年のうちで一番、道を間違えたのではないかと思わされる季節がやってきました。

OZONEでの展示会が終わって早半月。
ご来場くださった皆様、また来られなくても応援してくださった皆様、ありがとうございました。
展示会を通してさまざまなことを考えることが出来ました。















「そもそも、(自分たちも含めて)“作り手”を
盛り立てていこうと考える現代手工業乃党がなぜ、
“わざわざ”展示会をやるのか?」

展示会が始まり、そして終わった今、
見てくださった方々からこの問いに対して、
自分なりの答えをもらった気がします。
OZONEという不特定多数の人が立ち寄ってくださる場所で、
普段は交差することがない方々と
直接話すことができたからでしょうか。

自分が接していて一番多く、そして一番意外だった感想が、
「ぜんぶ手で作ってるんですか?」
それすらも先入観としてもっていない人が来てくれているんだ、
という事実が逆に新鮮でした。

そして、ある初老のデザイナーさんの言葉。
「心の中にしまい込んでいたもの、
奥底にあったドロドロしたものを
引きずり出されたような感じがしました。」

「はじめに鉄有りき、アクリル有りき、という発想が自分にはない。」
という氏にとって、大切なのは第一に「使いやすい」形、
それに合わせた素材と作り方の選定。
「思いついたことも必然性がないという暗黙の了解で、
選択肢から外してしまうのが
いわば“当たり前”になっていた自分の中の何かを揺すぶられ、
大変楽しませてもらいました。」

確かに、自分のシェルフにとって「鉄の黒染めの生々しさ」が
自分としては表現の鍵だったのですが、
まあ、全部鉄でつくる“必然性”はないわけで。
椅子をアクリルで造る必然性がなければ、
そもそもそんな家具が世の中に出てこないし、
木とアクリルを合わせる必要がなければ、
なかなかアイディアには現れないものなのかもしれない。

「普通はわざわざ、そんなことしませんから。」
実際、氏のこの感想の真意は“?”ですが、
自分としてはこの言葉の中に、
作り手である自分たちが展示会をして、
作ったものを披露する意味(意義?)が
隠されているんじゃないかと思うわけです。

自分たちのモノ作りのアプローチはやはり、
「その素材を扱っている人だからこそ、出てくる発想」
なのかもしれません。




慣れない接客をしながら考える。
そもそも、家具を「理解」してもらうって、
どういうことなんだろうか?
自分としては、DVDの特典映像的な感じで、
現場の臨場感を伝えて楽しんでもらおうと思って
説明していたけれど、
一言のキャプションがときに
写真の見方を規定して殺してしまうように、
余計な説明はモノと人の可能性を狭めてしまうこともある。

そんなことを気にかけながら、
初めて出会った人とやりとりする中で、
この活動の可能性を改めて見出すことにもなりました。
ものをつくる人が、自分たちなりの発想で、
モノを一から考え、作ること。
それを多くの人に見てもらい、
“一緒に考えるきっかけ”となること。

現代手工業乃党が、“わざわざ”展示会をやるのは
そんなことなのかな、と考えつつ、
暑さで意識が遠退く中、今日も鉄棒をあぶりつつ。


東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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