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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #026



「たたら」製鉄とは?(『「もの」と「人」シリーズ1 鉄』より)

「なんでも知ってるつもりでも、知らない事がたーくさんあるんだよ」
と唐突に始まるリリー・フランキーの「おでんくん」ではないけれど、
かれこれ15年ほど鉄を触っているにもかかわらず、鉄について知らない事だらけな自分です。
車と一緒で、どういう仕組か知らなくても、運転はできてしまうわけです。

がしかし、大人になった今、語れないというわけにはいかない状況も多々あるわけで。
ここはウンチクの一つや二つ仕入れてやろうと(この記事もあることですし)、
図書館の専門書コーナーに行ってみたはいいものの、ページにおどる専門用語や数値データの羅列が理解できるはずもなく、早くも退散。
そんなこんなで帰ろうとした矢先、偶然ミラクルなコーナーに遭遇しました。
そう、それは児童書コーナー。


『「もの」と「人」シリーズ1 鉄』

『「もの」と「人」シリーズ1 鉄』(吉澤昭宣 監修、フレーベル館)
「鉄はシリウスのような巨大な星の中心に近いところで、
最後の燃えかすとしてできる元素です。」
そんな壮大な視点で鉄を語る監修者の言葉から始まるこの本は、
古代人の鉄との偶然の出会いから、
製鉄や鉄製品の歴史を現代まで見渡す“絵本”です。
「こんな内容、おもしろがる子供いるのか?」と思ったら、
貸出しカードにはびっしりと記録が。
おまけに、下線を引いて書き込みまでして熟読する始末。
君、将来有望です。
日本だけに発達した「たたら」製鉄の方法も絵付きで説明あり。


『くぎ丸二世号のひみつ ーさびができるしくみを探る』


くぎ、錆びてます。

『くぎ丸二世号のひみつ ーさびができるしくみを探る』
(佐藤早苗 著、大日本図書)

名著です。
「おせちの黒豆を黒く美しく煮るために、
なぜ錆びた鉄“くぎ”を入れるか」
という素朴な疑問から出発した佐藤先生の旅は、
錆の経過をみるべく、さまざまな溶液にくぎを浸して
寒天で固めた「くぎゼリー」作りに没頭するあたりからエスカレート。
「くぎはなぜ、両端から錆びて、真ん中は錆びないのか」
を解き明かすべく、くぎ工場を経由して、
最後はカツオ漁船の港に漂着。
通常、海水中では30分も経てば、くぎは錆び始める。
なのに鉄で出来た船が錆びて沈没しないのは
何か仕掛けがあるに違いない。
そんな難問に立ち向かう佐藤先生が、
海水でもまれた船底に見た小箱とは・・・・(つづく)
さまざまな花の絞り汁から作られた「くぎゼリー」に発現する
ピンクや緑の錆色も必見です。
ちなみにタイトルの「くぎ丸二世号」とは、
著者の実験でもてあそばれる舟に似せた“くぎ”の名前です。
しかも、二世。



『新・科学の実験 葉脈めっき』と
『たのしい科学あそび 鉄の実験』

めっきされた葉脈は最後になんとブローチに。

『新・科学の実験 葉脈めっき』(少年写真新聞社)
『たのしい科学あそび 鉄の実験』(馬場勝良 著、さ・え・ら書房)

一人で実験して納得していく上記の佐藤先生に対して、
この2冊は鉄のもつ性質
(かたさが変わる、錆びる、磁石にくっつく等)を知るための
さまざまな実験や、電気を使わずにニッケルめっきや銅めっきを「やってみやがれ」と勧める科学ものです。
「材料がかたい鉄であるため、実験のいくつかは
“力”や“わざ”が必要となります。
でも、みなさんの“やる気”でこれらをカバーして」ください。
と、最後は精神論で締める力強さも魅力です。
「使い捨てカイロは、使い終わると5g重くなっている。」
そんなウンチク満載です。


毎日行っている自分の鉄の作業に、
科学/化学がこんなにもてんこ盛りとは。
子供用といって侮るなかれ。
身近な冒険にワクワクすること請け合いです。
知りたいという欲求を気軽に満たしてくれる児童書コーナー、
小説や雑誌を見に図書館に行くついでに、ぜひおすすめです。

こんな本と子供のときに出会っていたら、
自分もあやうく科学者になってしまうところでした。



東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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