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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #027



「アルミ」容器

12月も半ば、世間はクリスマス三昧で浮かれ調子です。
金やら銀やら街中チカチカしている季節柄、今回は「シルバー」の話です。



アルミの無垢棒




「シルバー塗装」のサンプル。
写真じゃ差がわかりませんね。




ソファのフレーム組み立て中。

言うまでもなく、鉄の注文品は自分が制作したあとに、
表面加工をせねばなりません。
電気を使うメッキや、顔料を吹き付けて釜で焼き付ける
塗装(焼き付け)などさまざまな仕上げがあり、
自分で出来ない処理は専門業者に出すのですが、
希望通りの仕上げを正確に伝えるのに苦労することも
多々あります。

鉄はステンレスよりも安価で、
また真鍮やアルミに比べて強度があるため、
予算や加工しやすさに応じて
擬似的な仕上げを施す事があります。
鉄にホワイトブロンズメッキをして「ステンレス風」にしたり、
真鍮メッキをしたりします。
さらに、一般に特殊仕上げでないかぎり、
メッキよりも塗装の方が割安なため、
鉄を塗装でなにものかに見せたい・・・
なんて要望もあるわけです。
でも、この「○○風」が結構難しい。
技術的にはもちろんそれなりの方法があるのですが、
それには手間とお金もかかるんです。
結局、ステンレスで作っても同じ程度の金額なんてこともざらです。

今、進行している仕事もお客さんと相談の末、
鉄に「アルミ風」塗装を施すことになりました。
2.5人掛けほどのサイズのソファ・フレームが10台程度。
大きな焼き付け釜がある塗装屋さんをということで、
当サイトでDelivery Works の俵藤君が紹介していた
荒木塗工所さんに相談してみました。

最初に自分がFAXに書いた要望は、
「色はシルバー色で、メラミン焼き付け、アルミの色に近いもの」。
しかし、
「シルバー色は仕上がりの色が希望と違うということが多いので、
サンプルを用意するので見に来て下さい」との返事が。
シルバー色を頼むときは大抵、
「粗め」と「細め」の二つから選びます。
「粗め」は銀粉の目が粗いため、
光を反射してキラキラしている感じ。
一方、「細め」はマットでグレーに近い。
これに対して荒木さんのサンプルは6種類もあり、
粗めから細めまで微妙にグラデーションとなっていて、
隣のサンプルとの差は一見見分けがつかないほど。
では、6種類の中に理想の色があるかというと、
そうは問屋が卸さない。(問屋?)
お客さんの要望は、アルミに近い色。
この「アルミに近い」というのが厄介で、
塗装サンプルを本当のアルミと並べて見比べると、
アルミの方が白っぽくて、
「シルバー色」はグレーっていうか銀色っていうか、
やっぱりシルバーはシルバー?
しっかり調色したり、粉体でアルミ色を出すという
方法もあるけれど、数も納期も予算も厳しい場合、
なるべく近い色のサンプルから選びます。
荒木さんいわく、シルバー色の顔料である
銀粉の割合を増やしたり、
ツヤの増減で多少は近づけることも出来るそうです。
シルバーは単に塗り重ねる回数だけでも
色が変化するらしいので、難しい塗装の一つだとのこと。
さらに、メラミン焼き付け塗装では色出しにも限界があるらしい。
スプレー缶等によくあるラッカー仕上げなら、
色の方は多少は「○○風」の達成に近づくのですが、
いかんせん皮膜の強度がない。
個人的にはなんとも「おもちゃ」っぽく感じてしまうのです。
結局、お客さんと相談の結果、
6種類の中からトーンの落ち着いたシルバー色を
指定する事になりました。

今回はステンレス鏡面仕上げ→鉄にクロームメッキ
→アルミ風塗装→シルバー塗装と、
予算等との兼ね合いでさまざまな「銀色」を旅する事になりました。
シルバー色を注文するときには、
自然光の下で十分差を確かめつつ、
気に入った仕上げを注文しましょう。

あんまり似たような「シルバー色」とにらめっこしたせいで、
今日はかなり目がチカチカしてて、
なんだか一人クリスマスな感じです。



東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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