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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #028



明けましておめでとうございます。
以前、知り合いの職人さんから、道具には神様がいて、正月は職人自身だけでなく、
道具も手入れして、休ませねばならないと聞きました。
この神様は大事にすれば職人を助けてくれますが、粗末にすると怪我や商売不振をもたらすらしいです。
そんなわけで、今年も道具とともに、充分休んでしまった次第です。

しかし今年は、餅食うだけの寝正月ではありませんでした。
きっかけはこんな初夢。
ある日いつものように工房に行くと、お客さんがいて、
「あれ、まだ鉄使ってモノ作ってるの?」と聞かれる、なんとも恐ろしい夢です。
近未来らしいその時代、世界から鉄は既に無くなったのか???




「サバイバルのために必要なモノは?」という問いに対する毛利さんの答え。自分も常備してます。


宇宙ステーションの居住スペースの実物大展示。


深海探査艇。


科学未来館の館内に浮かぶ特大の地球モニター。




つまらん夢を見たと思いつつ、
その衝撃を払拭することも出来ないまま
初詣の代わりに向かったのは、
お台場の「日本科学未来館」。(安易。)

現在、当館では
「65億人のサバイバル―先端技術と、生きていく。」
という企画展を開催中。
未来に生き残るためのヒントを教えてくれるというフレコミです。
(なによりも宇宙好きの自分は、館長の宇宙飛行士、
毛利さんに会えるのではないかという淡い期待を抱いていた・・・
南極にいるため不在。)

いずれ世界規模で起こりうる環境破壊や食料危機に備え、
植物を完全管理の下、人工光で生産する「植物工場」とか、
核融合で作る「人工太陽」まで、
実現化の数十歩手前にあることを知りました。
そして、極めつけは原子や分子を操作することによって、
今までになかった新たな物質を作り出す可能性をもつ
ナノテクノロジー。
例えば、炭素から成るカーボンナノチューブという素材は、
構造を組み替えると違う性質に変化したり、
ある状況下で材料となる部品を混ぜ合わせると、
生命体がDNA情報に従ってタンパク質合成をして
体の組織を自ら作るように、
複雑な分子構造を大量に作り上げるような
「自己組織化」という操作まで可能だとか。
参考:日本科学未来館 湯浅哲郎「ナノメートルの世界

とはいっても、難しい事は全然わからなかったので、
知りたい人は直接会場までどうぞ。
とにかく、そんな新素材が日々誕生しているこのご時世。
近い将来、初夢はやはり正夢に・・・!?

不安は拭えぬと、「やはり最後はお参りか」と思い、
浅草へ。(つくづく安易。)
ついでに、最近界隈の古い建築探訪に凝っている友人に
吉原を案内してもらいました。
遊郭や赤線華やかなりし時代は、
タイルやステンドグラス等を駆使した和洋折衷の建物が
軒を連ねていたといいます。
指定されて独特の様式が生まれたという風情ある建物が、
今はひっそりと佇むアパートなどに姿を変えて、
ネオン輝く風俗店の裏側に点在していました。
(雰囲気的に撮影できず。)
この地は、江戸の大火、関東大震災、
そして戦時中の空襲で度々壊滅的なダメージを受けたそうです。
でも、吉原は今も姿や業態を変えつつ、
さまざまな立場の人々の願望に合わせて生き続けているわけで。

さて、松の内も過ぎ、夕方だったにもかかわらず、
浅草寺の境内にはお参りのための長蛇の列ができていました。
いつもより華やぐ新春の参道・仲見世を通りながら、
数百年もの昔から、こうやって人々は一年の幸せを
祈り続けてきたんだなあ、と実感。
自分も雷門の大提灯の下から手を合わせました。
家内安全、商売繁盛、合格祈願、縁結び・・・
どんなに世の中が「進歩」しようとも、
結局人の願いはそれほど変わらないのかもしれません。

いつの日か追いつけなくなるようなスピードで、
でも漠然と進んでいく世の中の変化に、
誰もがおぼろげな不安を抱いている昨今。
鉄のモノ作りの未来は自分にもわかりませんが、
そこにモノを望む人がいて、それを作ることができる限り、
変化に柔軟に対応しつつ、モノを届ける。
やっぱりそこなのか?と思いながら、
今年もシンプルにスタートします。
とりあえず、道具の神様といつもお世話になっている皆様に
感謝の気持ちを捧げつつ。


東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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