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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #030



世田谷の二子玉川駅から自転車で10 分弱。
小高い山の坂をのぼった先に、「瀬田四丁目広場」のひっそりとした入り口が見えてきます。
今月は、この中に佇む「旧小坂邸」で開かれた2 日限りのワークショップとカフェの話です。









女中さんを呼ぶ呼び鈴。
各部屋のボタンを押すと、部屋の名前が小窓に出る。当時のハイテク機器。

古民家風の建物は、庭を望む和室や
レトロモダンな洋室、蔵まで備え、
さらに竹林に覆われた回廊式庭園と一体化した
大きな別邸建築です。
昔、このあたりは富士山を望む多くの
別邸建築があったそうですが、
この旧小坂邸が現存する唯一のものだとか。
「旧小坂邸の内と外」と題したこのイベントは、
この建物を管理している「世田谷トラストまちづくり」
という財団法人の主催で、
ワークショップは「chick こどもの創造の国」さん
と以前このコラムでも紹介したことのある
インテリア クリエーターの福田晶子さんが担当されました。
〈空間を感じながら造形アートを作る〉という
このワークショップを面白いと思ったのは、
「つくる」という行為そのものを楽しむように
考えられていたこと。
福田さんが材料として吟味したのは、
竹林の竹やいろいろな形の木片、
ひょうたんやインドの鈴、
きれいな色のオーガニックシルクの糸などなど。
知人のひょうたんクリエーターや、
木工屋さんが材料提供に協力してくれたとのことで、
穴が開いたり、班点があるクセモノのひょうたんは、
それだけでも表情豊か。
それらを自由に組み合わせて子どもたちがつくった作品は、
楽器のようにカラカラと鳴らすこともできるし、
吊るしてゆらゆらとゆれる姿を楽しむことも出来る。
いってみれば、用途を特定しないモノ。
いくつかの例は用意してあっても、
このように作るべき、という答えや目標としての見本もない。
だから、作品の出来栄えに優劣もない。
ほかの人のつくり方やアイディアを共有し、
素直に認め合ってお互いに楽しむことも出来るし、
そうすることで、自分の作品についてより深く考えたり、
感じたりできる。






プロジェクターを使って、ワークショップの模様を上映。


庭の池でカエルの卵を手にとる子ども。




ワークショップはまず、庭を知ることからスタート。
食べられる野草を教えてもらったり、
池の生き物を見たりしながら探索したそうです。
子どもたちは作品を竹林の中でのびのびと作って、
その後は旧小坂邸の屋内に飾ったり、
竹林に張りめぐらした縄にぶら下げたりして、
おんなじモノでも場所によって
まったく異なるように見えることを知る。
こうして〈内と外〉という「場所」と対話しながら、
ワークショップは進んでいく。
紐を結びつける、上から吊り下げる・・・というのは、
意外に普段やらなくなっている作業かもしれない。
福田さんたちによれば、それはおみくじを木に結んだり、
クリスマス・ツリーや七夕飾りを飾り付けるとかいう、
ちょっと非日常を感じさせる瞬間みたいで、
作業中、みんなが感覚的な刺激を受けながら、
つくる、かざるという、その動作自体に集中したといいます。
吊り下げモノは、竹林の中では、
それに囲まれた空間が結界のように神聖な場所に見えたり、
室内ではお祭りや季節の行事が行われるような
ちょっとワクワクするような雰囲気が出るから不思議です。
ぶらぶらモノがたくさん吊り下がっているからか、
赤い糸がそう連想させるのか?
自分が訪れた2日目には、
作品はカフェの会場である茶の間にも飾られていて、
床の間には昨日のワークショップの様子が映像として
映し出されていました。
食べられる草を知っている人、作るモノを考えられる人、
材料を提供できる人、それを映像に撮れる人、
おいしいお菓子を作れる人、人をもてなせる人、
人を結び付けられる人、
そして、ものづくりを体験した子どもたち、
近所の春を満喫しようと立ち寄った人(自分)など・・・
いろんな得意分野や興味を持っている人が、
自分なりに役割をもって参加できる。

そんな交差点のような場所に、足を踏み入れた一日でした。

※今回のお話をうかがった方
福田晶子さん
鶴本晶子さん(chick こどもの創造の国)

瀬田四丁目広場「旧小坂邸」
(財団法人世田谷トラストまちづくりウェブサイト)


東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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