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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #031



桜もひらひら舞い散ってしまった今日この頃(東京周辺の場合)、いかがお過ごしでしょうか。

新入社員が来るわけでもないアガリでは春先、こんなモノを製作していました。

そう、蜘蛛の巣です。


ひたすら曲げたパーツ


ジグを作って、曲げ作業


正確に切断する


作業台の上で仮組み中


このあと、さらに風合いをつけていきます。

デザイナーさんからの依頼なのですが、
設計段階で相当図鑑とにらめっこしながら、
デザイン化していったらしい。

パーテションかなにかに見えるこの代物は、
アパレルの店舗什器の一部。
ガラス什器の両サイドに設置される
欄間状の装飾パーツです。

一台の什器に4面、つまり4枚つくので、
予算との兼ね合いでかなり抽象化したデザインに
なっているとはいえ、十数枚分のパーツ作りは
なかなかハードな作業です。

黒皮材を使って風合いを出すため、
一つ一つのパーツの曲げ加工は、すべて手作業。
機械曲げだと機械の跡がついてしまうばかりか、
黒皮もベリベリはがれてしまうのです。

当然ながら、蜘蛛の巣の上段と下段では
R(弧の大きさ)が違う。
キツイRもあれば、緩やかなRもあるわけで、
8、9個の曲げジグを使い分けて、
平板を曲げていきました。
くるんと曲げた平板を1〜3分割にカットして、
各種類大量のパーツを用意していく地道な作業です。
しかし、すべてのRとすべての長さが
ぴったり合わないと組み上がらないわけで、
パーツ製作は精度が命。

風合いある手作りモノという依頼とはいえ、
ある程度量産するためには、
どのように「パーツ」化して製作していくかが、考えどころです。

ちなみにある雑誌で読んだのですが、
本物の蜘蛛は、7種類もの糸を使い分けて
(自分の身体から出し分けて)、
巣作りをしているらしい。
天井から糸一本でたら〜とぶら下がってくるときの
あの糸は、牽引糸という超強力な蜘蛛の命綱で、
ねばねばして獲物を捕まえるのは横糸。
すべて成分が違うというからびっくりです。

そんな高度な糸が組み合わさって出来た
蜘蛛の“ネット”を、人間が分割してでも
鉄で作ってやろうって言うんだから、
まあ、手間隙かかるのも当然ですかね。


なかなか作り応えがあったこの物件。
もう、蜘蛛の巣は不憫で掃えません。



東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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