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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #035



あっという間に師走ですが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
ご無沙汰しております。アガリです。
現代手工業乃党からぶらり散歩に出たっきり、気づけばクリスマスシーズン到来です。
というわけで、季節柄、ツリー製作の話でも。
がしかし、この仕事をいただいたのは真夏。
お盆の頃、打ち合わせのため、クライアントさんの渋谷のカフェへ。
そこで見せられた1枚のイラストには、クレヨン風の一筆書きでさらりと描かれた、1本の木のようなもの。
その上には2匹の鳥。
「こういうイメージでツリー、作れない?」
と問われ、レーザーカットなどを使った平面的なつくりを想像していたところ、
「できれば立体で」と畳み掛けるような一言。
「枝とかそういうの要らないから。“ いわゆる木です” とか無しの方向で。」
との要望でした。
セミの声がジージーと響く中、サンタがサーフィンする絵しか思いつかなかった帰り道なのでした。



とりあえず、絵を描きながら試行錯誤。
3−4mm パイの丸棒をらせん状に曲げていくという
イメージが浮かんだものの、図面には表しづらいので、
まずは針金をくねくね曲げて、手で考えてみました。
その結果がこれ。良く言えば、ミニチュア模型です。
これとイメージスケッチが最初のクライアントへの
プレゼン資料(?)でした。
これでなんらかのイメージ共有してくださった
クライアントさんに感謝です。



でもこれではよくわからないので、
実物大の曲げパーツも製作しました。
適当なジグにあてがいながらランダムに曲げていった丸棒に
錆び加工し、緑にペイントした葉を溶接。
この段階で、自分のなかでのイメージが固まってきました。
相手に伝わるか不安でしたが、なんとこれでプレゼンは終了。
検討期間を経て製作GO サイン。


リング状の構造体
しかし、実物は当然ながら針金のように柔らかいものではなく、
「“ 途中でやっぱり、曲げられません” とか
“ 構造的にもちません” とか無しですよ」
というコメントをいただき、構造になるものを作ってみました。
サイズは、高さ2m20cm、700 パイ。



当初はパターン化したパーツを数種類つくって
組み合わせようと考えていましたが、
円錐形に当てはめるのは無理だとわかり、あえなく断念。
一筆書きになるようにパーツをその場で考え、
一本の線状に溶接して底辺からすこしづつ、
巻きながらつなげていくことにしました。


作業台の上で気ままに一筆書き


さまざまな大きさの径のジグを作る。

蔦(ツタ)が巻きついていくようなイメージなのですが、
いわゆる中世ヨーロッパの城の装飾風になるのは
避けるためには、むしろ余白の空間が重要。
作り過ぎないフォルムを目指します。





その上、向こう側に透けて見えるパーツ部分との相性も考えて
曲げのカタチを決めていくという、いばらの道に突入。
(写真ではわかりづらいですが・・・)



ようやく頂上までたどりついたところで、さえずる鳥の製作です。
羽と本体を分けて、絵の世界からちょっとだけ抜き出た感じで。


錆び始めは黄色い。クリア色を塗ると濃茶に変わります。



続いて仕上げです。
錆(サビ)仕上げをするために、酸をかけて腐食させていきます。
裏側も錆びさせるのが、太い指では結構大変。




通称“ 三本ロール” でステンレスのフラットバーを曲げる。

次に葉の表面を塗装。
普段、モノトーン調の仕上げが多いため、
一部分だけカラーを入れるのは、
自分にとってもわりと勇気がいります。
この緑を決定するにも、思いのほか時間がかかる。


ステンレスの鉢。鉢と本体部分は段差をつけて、人目線では少し浮いたように。

ツリーの鉢になる土台部はあえて、
硬質なステンレスで組んで磨き仕上げに。
曲げた板に蓋を溶接し、円筒状にして、
筒の中に電飾等のパーツが収納できるようにしました。
上にのる一筆書きツリーを引き立たせるためにも、
ステンレスの鉢部分は、
溶接とバフがけ(手磨き)にも気を使います。
自由な曲げや錆加工とは対照的な手の動きが求められます。



鳥にも着色して、ようやく完成。





電飾をちりばめた、クリスマスシーズンだけに登場するのではない、
普段もかたわらにあっていい、ツリーのオブジェ。
そんなふうに使っていただけると、うれしいのですが。

※このツリーは、12 月25 日まで
渋谷パルコPART1、1 F のカフェ
MOPH(OPEN10:00-24:00) さんに設置中です。


東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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