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ホーム > モノ作りの現場から > agari 東山風 #037



今年で4回目となる現代手工業乃党の展覧会も、おかげさまで8月3日をもちまして、終了しました。
多くの方々にご来場いただき、ありがとうございました。
今回は新たなメンバーも加わり、十組十様のトロフィー&ギフトが並びました。
来場された方には、ひとつでも心にひっかかるものがあれば幸いに思います。



前回の記事では、何を制作したかには触れなかったので、
来場できなかった方も含め、改めて紹介させていただきます。
以下、展示会場につけた説明文にくわえ、
制作サイドの話も少々。






「拾いものをする人のための壁掛け (L)」
スチール黒皮材+錆加工
サイズ:H700×W480





拾いものをする人のための壁掛け (S)
スチール黒皮材 +磨き材
サイズ:H350×W350


川辺や砂浜で、あるいは道ばたで、なにげなく拾い上げて、
持ち帰ってしまう石や木の実、そしてガラクタ。
置き場なく、引出しの中にしまったままの〈拾いもの〉が、
誰にでもひとつやふたつあるのではないでしょうか。
なんでもないものだけど、自分にとっては、手に馴染んだり、
その日を刻んでいるものだったりする。
日々の大切なものをかかげ置くことで自分やその日の出来事を賞する、
そんなトロフィーがあってもいいのではないか。

小さな散歩が発見に変わる、そんな予感がする贈り物です。


競い合ってもらうトロフィーというよりも、
自分が大切にしているもので作り上げ、
自分に贈り、そしてモノたちをも賞するためのものを、
と考えたのが、この壁掛けです。
自分にとってしか価値がないものというものは、
実にさまざまなカタチや素材であり、
それらの台座になるようなものは
どのようなものがいいかと、思いあぐね、
シンプルでかつそのものを活かすようなあり方を模索しました。

「拾い物」を置く壁掛けの背景は、
錆び色とマットな銀色の鉄生地2種類。
背景が変わると、置かれるモノの見え方も全く変わる。
並べ方も、その時々の自分が現れる、
壁掛けと話し合うように、
毎日変わって行くトロフィーになればと思います。
(まあ、トロフィーと敢えていわなくてもいいのですが・・・)

そして今回、多くの拾い物を
「拾い物名人」の下中菜穂さんにお借りし、
種類ごとに次第に集まった拾い物を自分で選び、
並べることの楽しさを発見。
壁掛けの(L)、(S)ともに、
「自分カテゴリー」のモノたちを一列に並べられるような
長めの棚を多く作りました。
たとえば穴あきの白い石、
あるいはペットボトルの蓋をざっと並べてみると、
一つだけでは見えなかった標本的な面白さが出てくる。



結び
スチール黒染め+錆加工
サイズ:H330×W570


紐をそっと結んで贈る。
水引のように人と人、モノと記憶をつなぐ、
〈結び〉としてのフレーム。




現像
スチール黒染め
サイズ:H460×W940


何かを達成した瞬間の写真や、忘れられない風景のスケッチ、
手紙にポスター、もちろん、賞状だっていい。

覚えておきたい出来事は、
そんな多くのカケラの寄り集まりとして、
わたしたちの中にあるのかもしれない。

写真が連なるように、あの日の瞬間が現像される。
さまざまな記憶の断片やモノに重ね合わせるためのフレーム。

2つのフレームは、たとえば壁に留めた写真や葉書、
ポスターなどの上からかぶせることにより、
それらを特別なものにしようという、
これまた「自分寄り」の一品です。

〈結び〉のほうは、自分で手描きした楕円をもとに
カットした円部分と、ガスで手切りした横棒を組み合わせました。
楕円は片方は錆加工に、もう一方と横棒は黒染めにしてあります。
贈り物に紐を結うようなイメージで制作しました。

〈現像〉は、壁に付けてあるモノだけではなく、
さらに自分の記憶のなかにある場面や想いが
再現されるようなものを、と作りました。
暗室でたくさんの写真が現像され、
絵がどんどん浮かび上がっていくようなイメージです。
連なった四角に奥行きをつけて立体感を出しているのですが、
そこに現れる影の見え方も考慮し、
それぞれのグリッドの重なりの距離を
数ミリから数センチ単位で調節してみました。
モビールのように上から吊っても面白いかもしれません。



今回の展示会でのトロフィー&ギフトというテーマによって、
素材や機能、あるいは造りから出発している、
従来の作り手としての自分のモノ作りとは違い、結果的に、
「ギフトとしてもらった“その人”はどう感じるか」という、
カタチよりも送り手やもらい手の気持ちから入る、
新しい作り方を自分に課すことになりました。
多少でも気持ちの変化が見てとれるようなものになっていたら、
と思います。



東山風 (1971生)
鉄をあつかう技術を幅広く持つ工房で修行。
その後、家具メーカーの企画開発部で試作・特注製作を担当する。
2002年に独立し、個人邸や店舗の金属を使った家具・什器を製作しています。



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