モノ作りの現場から(アーカイブ) | 読みモノ(アーカイブ) | 最新のコンテンツはこちらです
ホーム > モノ作りの現場から > Delivery Works 俵藤ひでと #005


基本加工である、切る・削る・曲げる・磨く・接着する。
その中でもアクリル加工業にとって一番難しいのは
接着をすることです。
どのような加工・製造業においても接着
(金属の場合は溶接)は難しい作業だと思います。
手間をかければ良いというわけではなく、
どちらかというと一発勝負で、技術がいるのです。

特にアクリルの場合、しっかり(強力に)接着
していれば良いという訳ではなく、
接着面との間に隙間なく接着液を入れないと、
つぶ状に気泡として残ってしまい、
無色透明な素材のため
意匠として全て見えてしまいます。
逃げが効かないのです。




完璧に接着出来ると塊を削り出して作ったのと同じ効果になる


特殊光で接着剤を硬化させているところ

溶剤接着について

アクリルの接着方法として一番一般的なのが溶剤接着です。
アクリルの接着面のどちらもフラットであることが前提で、
接着面同士のわずかな隙間(1/100〜1/10mm)に
溶剤が表面張力によってスーッと入って行きます。

アクリルを溶かす溶剤は
メチレンクロライド(おそらくは市販されてません)が主流です。
この溶剤は揮発性が高くアクリルの表面を溶かした後、
10数秒で乾くのですが、
その性質がメリットであり、デメリットでもあります。
作業すると取り返しがきかない、もう後戻りできないのです。
また、アクリルの質、気温や湿度など環境によって
接着条件が変わり、「この前出来たのに、なんで〜」
という事が多々あり、接着面積が広いほど難しく
安定して無気泡で接着することは、
厳密に言うと不可能に近いのです。

アクリル加工業者はそれぞれ独自の経験と方法で
溶剤に他の成分を混ぜて調整し、
出来るだけ気泡を入れないように加工しています。
加工品の見せ方、使われ方にもよりますが、
基本的にクライアントさんには許容範囲は見てもらいます。
でも実際あまり気にされない場合のほうが多い、
気にするのは製作側のほうですかね・・・
ちなみに、不透明なカラーアクリルの接着は
このような問題はあまり無いです。



パーツ(クリアアクリルt=10mm ・乳半アクリル)とジグ(型)


無気泡接着によって2色のアクリルに一体感が出る

重合接着について

アクリルの接着方法の中で一番理想的なのが、重合接着です。
重合接着とは、接着面どうしの間に2mmほどのすき間をあけ、
モノマー(アクリルの原液で、ゆるいゲル状)を流し込み、
硬化させる方法です。
溶剤接着のように速乾ではなく、モノマーが硬化するまで
時間がかかるため、その間、
中に入った気泡を抜くことが出来るのです。
強度もあり、アクリルそのものを10とすると、
約8〜9割あるといわれています(溶剤接着は3割程度)。

施工例では水族館の大きな水槽に厚いアクリル板が使用されていて、
既製品のアクリル板で一番厚い板材(おそらくt=50mm)を
何枚も貼り合わせているのです。
すごい水圧が掛かかってますからね。
水槽の例はオーバーだとして、
一見ちょっとしたモノでも重合接着の加工費はかなり高いです。
この加工は設備と時間がかかり、
手間と技術が非常に要求されます。
しかし製作物の用途によっては必要ですし、美しい接着です。



照明器具のボディー(スチール)とシェイド

新しい接着技術

ここ最近、画期的なアクリルの接着剤が開発されました。
光によって硬化させる接着剤です。

同じ考え方でガラス用の接着剤は以前から有るのですが、
アクリル用は勝手が違ったようで
ずいぶん開発に時間がかかったようです。
値段も結構します・・・。
でも、重合接着ほどのコストも時間も掛からない。
どんな光にでも硬化するわけではなく、
特殊というかある一定の波長の光だけに反応し硬化します。
光の強さや照射時間で硬化速度をコントロール出来るので、
溶剤接着ではかなり難しかった広い面でも
気泡を抜いて確認してから、硬化させ接着できるのです。



シーリングランプ『ポップ・アップ・バルブ』

前回発表した照明器具もこの技術で、
イメージ通りのランプシェイドを作ることが出来ました。

とは言っても、まだ性質というか感覚が
完璧につかめては無いので、
現時点では300mm角の面の接着が限界です。
まだ扱いづらい接着剤です。
強い溶剤なので手も荒れます。

しかし、この接着剤に新しいデザイン、新しい加工技術の
可能性を見出しています。
何度でも研究を繰り返し、独自の技術として確立したいです。







俵藤ひでと (1972生)
ICSカレッジオブアーツ卒
1995年 ひょうどう工芸入社
2002年 デリバリーワークス設立
アクリル加工を中心とする特注家具・照明器具・立体物のデザイン製作
オリジナル家具・照明の企画デザイン・製作・販売



#066 2010.08 新しい五月人形
#065 2010.07 アクリルのトランク型ディスプレイ什器
#064 2010.06 展示会のまとめ
#063 2010.05 現代手工業展2010
#062 2010.04 アートとモノ作り
#061 2010.03 アクリル引きモノパーツ / 現代美術VOCA展
#060 2009.12 コレクションショー
#059 2009.10 ショップ什器 / 展示会のお知らせ
#058 2009.08 バーテンダー
#057 2009.07 多摩美素材実習
#056 2009.06 2009年展示会を終えて
#055 2009.05 展示会に向けて2/コラボレーション
#054 2009.04 展示会に向けて−アクリルで本をカタチ作る
#053 2009.03 アクリルの茶杓 / 伝統と現代
#052 2009.02 掛川現代アートプロジェクト/アクリルの棗(なつめ)
#051 2009.01 氷のアクリル
#050 2008.12 NYにて
#049 2008.11 ニューヨークへ
#048 2008.09 裏方にまわる楽しさ
#047 2008.08 2008年展示会を終えて
#046 2008.07 想い込めて。仲間の協力を得て。
#045 2008.06 キスの練習 くちびるの習作
#044 2008.05 展示会のテーマ「誰かの為のギフト&トロフィー」
#043 2008.04 手を離れ商品化へ!
#042 2008.03 IID世田谷ものづくり学校でワークショップ
#041 2008.02 アクリルのシャンデリアの行方
#040 2008.01 ご挨拶
#039 2007.12 実習講義 素材とたわむれる
#038 2007.11 デザインにユーモアを
#037 2007.10 ある仕事の風景
#036 2007.09 ポリへドロン
#035 2007.08 アクリルの茶杓
#034 2007.07 バングルのデザイン - メイド イン ジャパン -
#033 2007.06 展示会、真っ最中
#032 2007.05 仕事とは時間を共有すること/6月の展示会に向けて
#031 2007.04 モノを作り表現する女の子たち
#030 2007.03 (続)プラスチック ってガンバってるかも
#029 2007.02 プラスチック って言っても様々
#028 2007.01 マイナーチェンジを繰り返す
#027 2006.12 多摩美術大学にて
#026 2006.11 趣のあるアクリル 茜色に染める
#025 2006.10 端折ってはいけないコト そこに愛はあるのかい?
#024 2006.09 FRPかぶき野郎
#023 2006.08 アクリルをシェイプする
#022 2006.07 展示会を終えて
#021 2006.06 展示会に向けて
#020 2006.05 友人の店を仲間達でつくる
#019 2006.04 ダイソン。それは格好良いだけじゃない掃除機。
#018 2006.03 絵のある部屋
#017 2006.02 アクリルの表現力
#016 2006.01 ロゴデザインをする
#015 2005.12 有限会社 荒木塗工所
#014 2005.11 マーキングフィルムで遊ぶ・レッツ カスタマイズ!
#013 2005.10 製作の現場だから気付くこと、出来ること
#012 2005.09 Delivery Works 南部健太郎
#011 2005.08 無駄の中に宝がある(大人編)
#010 2005.07 無駄の中に宝がある(子供編)
#009 2005.06 (有)クラフトロ 矢野心吾さん
#008 2005.05 ひょうどう工芸代表 職人 俵藤益仁
#007 2005.04 リートフェルトへのオマージュ
#006 2005.03 ショップサイン・電飾看板
#005 2005.02 アクリルの接着加工について
#004 2005.01 島谷製作所
#003 2004.12 大河原製作所
#002 2004.11 savor 末松貴久・小橋佐和美
#001 2004.10 展示会