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ホーム > モノ作りの現場から > Delivery Works 俵藤ひでと #008



もう32年くらいの付き合いなのですが、本当に改めて取材というかたちで、
アクリル加工業職人、俵藤益仁さんにお話を伺いました。


ひょうどう工芸代表 職人 俵藤益仁



摩擦を無くすため、ロウを付けながらアクリルを切る。



いつ見ても素晴らしい技術。








二人 まあまあ、(取りあえずビールで)

この仕事を始て何年くらいなの?
あと始めるきっかけなど教えて。
アクリル加工業ってわりとめずらしい業種だと思うし。

代表 33年目だね。29歳の時、兄貴が
「会社おこすから一緒にやってくれ」って東京に呼ばれて。
9年間働いたから、独立して24年かな。

29歳からか。その前の仕事は?

代表 営業職が多かったかな、
先物取引やダンボールメーカーの営業とか。色々したよ。
職業訓練校で簿記を学んだ後、会社の経理もやったし。
その前に、高校卒業後上京してすぐ、
東芝のタービン工場に入った。
そこで機械や道具の使い方、
ジグの作り方の基礎をおぼえたと思う。
だからこの業界に応用は利いたし、
そんなに違和感なく加工業にも入れたよ。

異色の経歴だよね。
お兄さんとやってた頃はどんな仕事してたの?

代表 アクリル看板製作専門だった。
この頃、アクリルの切り文字、ミシン(糸ノコ)を
徹底的にやって覚えたね。
現場取り付けも昔は高所作業車とか使わなかったから、
ハシゴや足場を組んでやってたよ。
高いビルへの取り付けなんかは、
下から足場組んでくとコストが掛かるからって、
屋上から宙吊り足場組んで作業したこともあった。

おっかないねぇ。無茶させられてたんだ。

代表 取り付けもね下見ができないトコもあるし、
もちろん下地の位置、相手の材質とか聞くけど、
そういうの知らないお客さん多い。
だから、金槌で軽く壁を叩いて、音で強度を判断する。
また、それによってブラケット
(看板を付けるためのベース器具)を考える。
とにかく、建物にしても、機械にしても、
目に見えないトコが音に反映される。音は大事なんだよ。

私が今まで作った看板で落ちたモノは無い!
(自慢げ?落ちたら大惨事じゃないか・・)

自分は落ちましたけどね。
(この人、一昨年、看板取り付け作業中、
4メートルぐらいから落ちて、大怪我してます。)

代表 あれは油断したな。油断、油断(笑)。
着地は上手くいったと思ったんだけど・・・
足首があっち向いちゃって。自分で真っ直ぐに治したんだよ。

アタマおかしいでしょ・・・

代表 ぐぎぐぎって音がして・・・あーダメだって思った。
わりと冷静だったよ。

(この人反省してんのかな・・・)話はそれましたが、
看板の製作だけだったの?

代表 それからデパートのディスプレイ関係の
製作施工の仕事が多くなったかな。
カッティングシートでロゴにして、ウインドウに貼ったり。
この頃プロッターマシーンなんて無いから、
カッターで手で切って作ってた。




木材はロウを付けなくても切れる。ベニヤは加工しやすい。



右手でロウを持つため、彼は左手(片手)だけで
加工する技術がある。



アクリルの裏から絵や写真を特殊に圧着したモノを切る。着物の帯止めの飾りになる。



ほんと、外注さん使わないで、
何でも自分達でやってたんだね。
今でもサイン・ディスプレイの仕事は色んな要素、
素材のからみがあるから、広く浅くではないけれど
色んな知識がいる。
仕事のくくりが明確ではないので、
ある意味何でも出来なきゃならない・・・
みたいなところもあるしね。
独立してからも、同じ仕事そのまま続けてたの?

代表 お客さんは全て新規開拓したね。
広告代理店や、テレビ局の番組の美術の仕事が多くなった。
仕事の幅が広がった。
代理店の仕事はメーカーやブランドのショップや、
展示会ブースのサイン関係。
テレビ局はこの頃、歌番組の仕事が多かったなあ。
「夜のヒットスタジオ」とか。(なつかしー)
毎週金曜日に大まかな寸法が入ったスケッチで
発注が来て、土日製作で、月曜日収め。
リハーサルで何か足らないとかなると、追加製作で
その日の9時オンエアーまでに間に合わせる。
見積作ってるヒマ無いね。
値段じゃなくて、出来るかどうかが先決。
5,6年やったかなー。でも、もうイヤになっちゃって・・・。
「笑っていいとも」も番組始まった時から最近までずっと
「テレかくし」作ってた。

ゲストが友人に電話かける時、
手もと隠すヤツね(コレもなつかしー)。

代表 他の番組でも品物の出来が良いと、
アップでそれを映してくれてた。
テレビ局からのお礼みたいに感じてたかな。
いつでもキレイに作る、それが基本。
品物と言うより、自分の「作品」という意識で作ってる。

ディスプレイ、サイン関係の仕事でロゴサイン、
切り文字の加工は欠かせないと思うんだけど、
最近ミシン(糸ノコ)をちゃんと使える人少なくなったなぁって・・・

代表 レーザーカットやNCなど機械で
加工出来るようになったからね。
単純な機械ほど扱いが難しい、技術が必要なのね。
ミシンなんて一点で上下運動しかしてないんだから。
アナログなんだけど1点モノや、
プロトタイプやサンプル作りにはすごく向いている。
刃を替えれば、真鍮やアルミも切り抜けるし、
レーザーじゃ切れない、エンビ・ゴム・スポンジ、
素材が違うモノが合わさった複合板など
色んなものが加工出来る。
逆にマシーンに頼ってる今だからこそ、
おもしろいモノが作れると思うんだ。

代表 時代は動いてゆく、だからと言ってモノ作りは最後まで
人の手から離れられないのよ。
でもね、あまり意地にならないで情報収集もして、
時代に合わせて行かないとね。
私たちが出来ることはまだまだ有ると思うよ。
いつまでもプライドを持って仕事をして行きたいね。



製作したショップサインの取付け作業
『HAMBURG & STEAK HOUSE Jam's』
(5月中旬、恵比寿にOPEN予定)

先月で62歳。独立した職人に定年はありません。
いつまでも仕事と向き合って行けるのかもしれない。
歴史がまだ浅いアクリルの加工方法は
ちゃんと確立されてないので、経験値の高さがものをいいます。
もっと教えてもらわなくては。

俵藤益仁さんは、現在も私にとってお師匠さんであり、
良きビジネスパートーナーであります。


俵藤ひでと (1972生)
ICSカレッジオブアーツ卒
1995年 ひょうどう工芸入社
2002年 デリバリーワークス設立
アクリル加工を中心とする特注家具・照明器具・立体物のデザイン製作
オリジナル家具・照明の企画デザイン・製作・販売



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