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ホーム > モノ作りの現場から > Delivery Works 俵藤ひでと #065




皮を貼る前の真鍮のコーナーパーツをジグにハンドドリルで下穴をあけタップを切る。
果てしなく続く作業の始まりです・・・


蝶板やバックルは、クライアントさんがパリの蚤の市でアンティークのトランクを購入しそれをバラして取り付ける。止め穴もあけ直す。


仕事には毎回緊張感が伴うけど、今回はそれに輪をかけるヒリヒリするような物件でした。


特に蝶板の取り付けは細心注意を払いました。
真鍮のマイナスビスは分ネジという古い規格のモノですが、現在主流のミリネジよりもネジ山が高くピッチも粗いので、力を加えて締めることができる。なのでアクリルにタップを切るには向いていた。


完成!!


実際の古いsteamers trunksのパーツはリベット止めなので、かなりの数を打ってある。



なので、このビスの数は構造より、雰囲気をだす意匠的要素が強い。



このバックル、やっぱりカッコいい!
こういう金物を日本で探すのは難しい。


このトランクは開くとワードローブになっていて右は引き出し、左はハンガーが掛けられる。
ハンガーもアクリルで作りました。


頼れる男
(株)レスト代表・長谷川くんです。

steamers trunks(汽船に乗せるトランク)
このような物を、アクリルで製作できないだろうか?
仲間から相談されたのが2ヶ月前
ウチの工房のすごいご近所の(歩いて30秒、走れば10秒)
設計施工の事務所レストの長谷川くんからでした。


クライアントは
アパレル会社のシマムラトーキョー・コーポレーションさん。
ブランド「n°44」の為のディスプレイ什器。
ここが持っている100年くらい前のLouis Vuitton製の
ヴィンテージのトランクの画像を参考に製作が始まりました。


装飾部をレストさんが担当
アクリル部は僕が担当


レストさんは設計屋ですが、木工製作も自社で出来るし
長谷川くんはとにかく器用で、色んな素材に明るく
何でもワリと自分でやってしまう人です。
スペシャルソースのモリソンさんとも
しょっちゅう一緒に仕事をしてます。
細かい所まで気付いてくれるので
モリソンさんも「長谷川くんには助けられてるよ」
と良く言っています。


しかしまあ、どこから手を付けて考えたらいいやら・・・


送られて来た画像と同じ物を作るわけではなく
むしろ新しい物を作るので最初の方向性が大事です。


装飾部やコーナーパーツのサンプル出し
使用する皮の種類の選定、
真鍮の雰囲気も少し黒染めしてエイジングしたほうがいいしとか
最初は長谷川くんが忙しい。


僕はその頃あえてあまり考えることをしませんでした
何故なら考えれば考えるほどこの仕事の難しさを感じるからです。
まだ、使用するアンティークの蝶板やバックルも決まってなかったし、
やったこと無いことだらけだったので
もう出たとこ勝負に出ようと決めてました。


厚さ8mmのアクリルでBOXを作り、
全てのパーツを真鍮のビスで止めます。
600個の穴を手作業で正確な位置にあけ(誤差0.5mm)
ネジを切っていく工程は、
失敗の許されない綱渡りのようでした。
だんだん体力と気力が消耗していく・・・
そうするとミスする確率もあがる
あまりのプレッシャーで吐きそうになり、
何度も心が折れそうになりました。


そんなとき、真夜中同じように頑張ってる長谷川くんの励ましに
気持ちを切り替えることができました。
ひとつ一つ丁寧にやって行けばゴールは見える!
必ず完成させるんだー!


なんて、一人で盛り上がってしまいましたが、
仕事なので納めるのは当然といえばそうなんですが・・


スケジュールも厳しく、パーツの取り付けや組み立ても
一筋縄には行かず作業も納品ギリギリまで掛かりました。
何度かピンチもありましたが、お互いのいる場所が近く、
密な打ち合わせが常にできて
イレギュラーな出来事にもお互いが補い合って
対応したことが良かったんだと思う。
もちろん、反省点もあるし、改良点もある。
ただそれを踏まえても
僕ら二人じゃなかったら作れなかったと自負しています!


クライアントさんも、スタッフさんもみんな、
スゴーいって喜んでくれて
またひとつ良い仕事ができたかなぁと
ひと時だけその余韻にひたりました。


俵藤ひでと (1972生)
ICSカレッジオブアーツ卒
1995年 ひょうどう工芸入社
2002年 デリバリーワークス設立
アクリル加工を中心とする特注家具・照明器具・立体物のデザイン製作
オリジナル家具・照明の企画デザイン・製作・販売



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