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(ユマ・サーマンがエアロコンセプトの化粧品入れをもって微笑んでいる写真を見ながら、、、)
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清水 |
ユマ・サーマンじゃないですか?
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菅野さん |
そう。いや、知り合いを通じて、、、
コレが欲しいってゆうから、、、
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清水 |
エリック・クラプトンもエアロコンセプトのギターケース持ってるんでしょ。
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菅野さん |
うん。話の始まりはね、ビル・ウォールっていう
シルバーアクセサリーをやってる人がいてね、
クロームハーツのお師匠さんなんだそうだよ、
その人がエアロコンセプトの名刺入れを
使ってくれてたみたいでね、ご夫婦で。
で、元ビームスの名物バイヤーの星名一郎さんも
エアロコンセプトのアルミのカバン持っててね、
でその二人で会って話してた時に
「アレ、そのアルミのカバン、オレの名刺入れつくった
同じヤツが作ったんじゃないの?」って話になって、、、。
で、この人きっとギターケース作れるんじゃないかなぁ
って事になったんだって(笑)。
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清水 |
勝手ですねー(笑)。
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菅野さん |
で、ギターケースを作って星名さんに渡したら、
ビル・ウォール経由でエリック・クラプトンに
渡ったらしい、、、
で、もう、えらい喜んでたよって言ってた。
そしたらフェンダーの方にもいっちゃって、
けど、フェンダー側としては最初はこのギターケース
売るとしたら一個 1万ドル以上はするだろうから
ビジネスにはならないって言って否定的だったんだ。
だけど後でフェンダーの副社長が出て来て
「1万ドルなんて関係ねーよ。
音楽を通じてアメリカンドリームをやって来たウチが
この凄いギターケースを売らなくて誰が売るんだょ。」
って言ったんだって。
で「コレを作った菅野ってヤツの顔が見たいから
ちょっと来てくんねぇか」と(笑)。
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清水 |
強引だなぁー(笑)。
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菅野さん |
で、初めてアメリカ行ってさ、アリゾナに行ってさ、、、
話してきて、、、でのんびりやりたいって言ったら、
じゃそれでいいって言うから、、、
まぁ名前の方は「FENDER by AEROCONCEPT」
ってことで、、、。
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清水 |
スゴイなぁ、、、菅野さんって
オレ達みたいな製造業者の夢ッスよ、、、。
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菅野さん |
夢かぁ、、、
まぁ夢みて暮らしてるからなぁ(笑)、、、。
でも、こんだけ貧乏人が
夢見っぱなしもツライけどね(笑)。
だから少しづつ夢が実現してゆくことが嬉しいね。
ウチはじいさんの代から精密板金ってのをやってて、、、
昔はNCなんて機械はないわけよ、
もう、全部いわば手作りでね、、、
オヤジの代もそうだった、、、
オレは機械は入れてるけど気持は今でもそうだね、、、。
若い方たちが清水君みたいに自分で会社を起こして
がんばってるんならね、周りにいくら反対されても
信じた事だけは絶対間違いないからね、、、。
なんで間違いないかって言うと、
信じたって事はその人が信じたってことで、
周りが信じてなくてもいいの、、、。
だから絶対あきらめないでほしいの、、、。
オレも途中で挫折の連続だからね。
一回は死のうと思ったくらい辛いどん底も見たし、、、
けどね、その時、オレあと生きんの30年でいいや
って決めたんだ、、、。
やりたい事を30年でやるためには
今なにすりゃいいんだって考えたの。
あの日から今日でちょうど13年、、、やりたかった事が
ちょっとづつ叶ってきてうれしいよ、、、。
実は今イタリアからオファーが来てて、
エアロコンセプトを販売したいって、、、。
こんなオレでもね、周り大反対で
ここまで来たのよ(笑)、、、。
つまりね、カバンを作りましたと人に見せると
10人中9人は「こんなの売れないしボクも欲しくない。」
って言われた(笑)、、、。
ただね、オレが良かったのは
売る気がなかったから、、、(笑)。
元々 自分で使いたい図面入れを
自分で作っただけだったから、、、。
でね、オレはデザインの事なんて何も知らないんだけど、
ずうっと今まで携わって来た板金の加工、
その中でも飛行機の部品づくりが多かったから
飛行機の構造体ってはすごく興味があったわけ。
で、この形になったってだけの話なんだ。
穴が開いているのは軽くするためなんだよね、、、。
けど周りの人がさぁ
「おまえ そんな穴だらけのデザインはねぇだろぅ!」
とかさ、、、。
なんか形にするとなんでも「デザイン」って
言うじゃない(笑)、あれ何だろうね、、、。
オレはデザインはできない、、、
半信半疑だよね、、、。
けど、ずうっと半信半疑でもいいのかなぁって、、、
自信のなさとね、、、デザインができないっていうのは
オレ本音で言ってるんでね、
べつに謙遜で言ってるんじゃなくてね(笑)、、、
どういう評価でもいいの、
お客さんによろこんでもらえてるんであればね、、、
「ありがとうございますっ!」って感じよ。
ただね、自分の中の自信のなさがね、
その自信のなさこそがね、、、
自分の出来る事をハッキリ見せてくれるような気がしてね、、、。
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清水 |
(天を見ながら)うぉー、、、、、、。
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菅野さん |
あのさ、いいデザインですねって言われるとさ、
オレってデザイナーなのかなぁなんて
勘違いしちゃうと怖いわけよ(笑)。
元々売ろうと思って何かを企画して
作り始めたんじゃないってとこもね、、、
大事にしなきゃいけないと思うのよ。
売れなくてもいいんだ、オレが欲しいんだから
作ったんだっていうところをもってないと、、、
実はここはすごく大事なんで、、、。
オレは作るとき まず絵かいて、図面書いて、、、
って絵かきながらも加工方法ってのが
身に付いちゃってるからさ、、、
ここ曲げんのキツイよなっていう絵は(笑)、、、
なかなか書けないよね、、、もうナリワイでね、、、。
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清水 |
、、、エアロコンセプトの今後は、、、?
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菅野さん |
あとは 夢は世界へっていう気持が
オレの中にずうっとあるよね。
こないだファゴットっていうオーケストラの、
管弦楽の楽器のケースを作って、、、
あとバイオリンのケースも作ってくれって言われてるし、、、
フルートとかいろいろな楽器のケースを
作って行きたいなぁって思ってるよ。
今まである楽器ケースっていう概念は
ありがたい事にオレの頭の中にはないモンで(笑)、、、
カバン屋じゃないヤツがカバンつくってんだからね。
飛行機部品屋が作ったら
楽器ケースがこうなりましたってね。
そこに仮にデザインって言われる部分が
もしあるとしたならそれは個人がもっている
オレはこんなんが好きだっていうエモーション、、、
それはあるかも知れないよね、、、。
けどそれはだれもが持ってるものだからね、、、。
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清水 |
まさに現代手工業だょなぁ、、、。
菅野さん、今度の6月にね
新宿のリビングデザインセンターOZONEって所で
現代手工業乃党の展示会をするんですけど
見に来ていただけますか?
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菅野さん |
もちろん伺いますよ。
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清水 |
そこで見て頂いてオレ達のやってること、
作ってるモノをもし認めていただけたら、、、
その次の現代手工業乃党の展示会に
参加していただけませんか?
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菅野さん |
(笑)なんだよ その妙な謙虚は(笑)、、、。
認めてるよ、、、もちろんだよ。
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清水 |
ありがとうございます。ガンバリます。(笑)
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菅野さん |
清水くんってオレと一緒で
デザイナーって呼ばれるのイヤかもしれないけど、
もうちょっとボクよりはあるんだよね。
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清水 |
何がですか?
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菅野さん |
いや、、、あんだよ、、、
形やディテールへのこだわりみたいなモンがさ、、、。
オレは知ってるよ。
君の作って来たモノを見てきてるから。
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清水 |
今まで、作りたいモノを作ってきて
「オレは何が好きなんだろう」
って自問自答を繰り返して来て、、、
「オレは何を作りたいんだ、、、?
オレらしいって何だ、、、?オレって何だ、、、?」
ってやってると作ったモンに
「オレ」が出ちゃうじゃないですか。
その生々しさが一点モノで作るプロダクトに
表せたらなぁって思ってます。
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菅野さん |
モノ見ると分かるよね、、、。
モノは結果そうなるし、、、
どうゆう結果がでるかはその人のナリだよね、、、。
オレはね、モノは人の手に渡った後で
いっぱいしゃべると思っているよ。
オレも好きなモノを持ってると
そのモノがオレに話しかけてくるのね。
それはどういうことかって言うと
そこに作り手の魂が入っていて
「オレは好きで好きで作ってんだよ」
っていう気持がね、、、
少しは乗り移ってるんじゃねぇかなって気がするのね、、、。
オレはねガキの頃から工場にいて、
工場の倅に生まれてモノ作りが好きで
こうやってきたんだけど、、、
オレが職業選んだんじゃないんだなぁって、
このアルミ板金加工っていう職業が
オレを選んだんだなぁって、、、
「菅野おまえがやんなさい」って。
職業がいってくれたんだなって、
そんな気がしてんだよね。
清水くん、あんたもそうだよ、、、
あんたがやんなさいって言われてるんだよ、、、。
こうやって話してるけど、今でも仕事始めた時と
同じような不安もまだ抱えてるし、臆病だし、
自信がないし、でもその自信のなさこそ、
「じゃあオレは何できんの」ってゆうのを
教えてくれるんだよね、、、。
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