モノ作りの現場から(アーカイブ) | 読みモノ(アーカイブ) | 最新のコンテンツはこちらです
ホーム > モノ作りの現場から > EXIT METAL WORK SUPPLY 清水薫 #026



株式会社ティグ 代表取締役 小澤隆治さん

先日、国際社会福祉機器展というのがビッグサイトでやっていまして、興味があったので行ってきました。
普段、僕が作る物はたいがい重いし、可動もしないので、
軽くて可動する、、、つまり伸びたり縮んだり折れてたためたり、スムーズに回転したり、ブレーキがかかったり、
そんな金物に僕は以前から興味を持っていました。
そんななか、「もしかして車椅子って、すごいプロダクトなんじゃないのか」と思い始め、
街に出て車椅子を見つけては、ジロジロ見るようになっていました。
実際、今回ビッグサイトに行って、何百種類の車椅子を見学してみて、
そのなかでドキッとさせられるメーカーが1社ありました。
そのメーカーが作っている車椅子はまるで本物のレーシングマシンのように存在がヒリヒリしていて、
僕は「超クールだよ、、、」と不覚にも見とれてしまいました。
立っている人に話を聞いたところ、「別に車椅子のメーカーじゃなくて、チタン専門の工場だ」というので
後日お話を聞きに、おじゃまさせていただきました。
社長の小澤さんは大変お忙しい中、快くお話をしてくれました(ありがとうございました)。
車椅子の話は私の胸にしまっておくとして、チタンについて面白いことを話してくれたので紹介します。



マラソン競技用車椅子のフレーム
もちろんオールチタン製「超クールです」



ショールームの隣に併設された車椅子施走場



チタンパイプとカーボンパイプによるフレームでできた自転車


清水 チタンって硬い硬いって言われていますけど、
ステンレス用のドリルの刃で穴開けられますか?

小澤さん 全然問題ありません。
まぁ、ステンと同じだと思って差し支えないでしょう。
ただ、チタン合金は硬くてちょっと難しいかな。
それは、航空機用の材料ですからね。
今、日本で「チタン」って言っているのは、
「純チタン」のことで、
まぁ、ピュアチタンとも呼ばれていますが。
この世に合金じゃなくて、
工業材料であるのはチタンだけなんですよ。
あとは、鉄にしても、ステンにしても、
アルミや真鍮、銅にしても
他の全ては、合金なんですね。
また、その全てが合金でないと、工業材料にはならない。
純鉄だって、純アルミだって、
柔らかすぎてどうしようもならない。
使い物にならない。
純チタンだけが、工業用材料として使えるんです。
何よりも興味深いのは、
原材料が地球上に無尽蔵にあるんですよ。

清水

本当ですか?

小澤さん 鉄よりたくさんあるよ。
ただ、それを取り出すためのプロセスが
非常に難しい、、、。
真空で溶解しないといけないから、、、。

清水 チタンって真空で溶解するんですか。
それは高価な感じがしますね。

小澤さん 高いですよ。
ステンのkgあたり、10倍くらい。
ただし、比重が軽いから、、約半分の重さだから、
同じ材料であれば、約5倍ですね。

清水 鋼材って種類が揃っているんですか?

小澤さん 揃ってないですね。

清水 例えば鉄で言ったら、
丸パイプとか、φ22.2、φ25.4、φ28.6とか、
3mmピッチくらいで、、、

小澤さん まぁ、そんなの無いですね。


チタン製の椅子



チタン製ドアハンドル



車軸調整可能な「TITAN-R Moduler」



ティグ製車椅子の構造を説明してくれる小澤さん



角度調整のためのパーツ



強くて壊れないチタン製車椅子の原点「TITAN-R」



チタンパイプのN字フレームがショックを吸収する「OZ」



テニス用車椅子「WT-510」



バスケット用車椅子「ATOMIC4」



スポーツタイプの回転軸を支える部分はこんなに角度がついています



なんてかっこいいブレーキのパーツでしょう



ショールーム全景



モータードライブ付き(充電式)車椅子



左がモーター部分で、右がバッテリー部分



正面から見るとほとんど目立たないほどコンパクトに収まっています



バスケット用車椅子に乗ってみました。
とてもシャープな乗り心地でした。


(チタン製のドアハンドルや椅子を見せていただいて)

清水 これらの商品は御社の製品なんですね。

小澤さん そうです。
こっちは丸棒を加工していて、
こっちは丸パイプを加工しています。

清水 溶接は直流ですか、交流ですか?

小澤さん 直流です。

清水 じゃあ、今僕が使っている鉄やステンレスを溶接している
同じ溶接機でできるんですか?

小澤さん 基本的にはできます。

清水 溶棒は、、、

小澤さん チタンの溶棒です。

清水 チタンって、溶接とか、やっぱり難しいんですか。

小澤さん まぁチタンは加工が難しい難しいって言ってるけど、、、
その昔、、、30年、40年前は
ステンも加工が難しいって言われてたんですよ(笑)。
やるところがなかったくらいだから、、、。
「俺んとこ、ステン削れるでっ!」
ってのが自慢だったんだから(笑)。

清水 へぇー(笑)。

小澤さん けど、今は誰もそんなこと言わないでしょ。
チタンも同じような道を歩んでいくんでしょうね。
そのために私達は全国でチタンの勉強会を開いて
チタンの加工者の育成をしているんですよ。

清水 次はいつどこでやるんですか?

小澤さん いつだったかなぁ、東京でもやるよ。

清水 行きます。

小澤さん もうそんな勉強会を、、、7、8年やってるかなぁ。
「チタンの伝道師」やね(笑)。
チタンを広げるために頑張ってるんだ。
私はね今までのチタン加工の経験と
ノウハウと情熱とを組み合わせて
世界に打って出るような商品開発をしているんだ。
金額や量や規模ではなくて、
アイデアだったり品質だったり、、、そういうところでね。
いろんなチタンの商品を今まで開発してきたし、
今もこれからもやっていきますよ。

そのなかのひとつとして、車椅子があります。
僕のところはもともと車椅子屋さんじゃないからね。
車椅子も製造している、ということです。
ただ、その車椅子に共感してくれた人々が、
このチタン製の車椅子を継いで行ってくれたら
それでいいと思います。
何を継いで行くかっていうと
「世界に通じるモノ作りをしよう」という思いですよ。
まぁそんなことを考えながら、
日々いろんな物を開発しています。
今は自動車のマフラーを開発していますね。

清水 (チタンパイプを叩いて音を聞きながら)
チタンって、ショックを吸収するっていいますけど
本当みたいですね。

小澤さん 「減衰特性」っていうんですけどね。
減衰特性っていうのはつまり、、、
バネのビョンビョンビョンっていうあれはね、
バネの力がないってことなんです。
バネの本来の動きというのは、力がかかって、
一回沈んだら一回で元に戻って止まるの、ピタって。
で終わりなの。それがバネなの。

で、チタンっていうのは、そういう振動を吸収する
っていう特性があります。
オートバイのマフラーとかに使用すると、
振動を吸収してきれいな音が出ます。
その他、高級品のスピーカーの振動盤には
チタンが使われています。
「超」何とか、って言われる金属の特性には
超塑性、超伝導とか、、、あと形状記憶合金とか、
光触媒とか、あれもみんなチタン絡みですね。

清水 すばらしく優秀ですね、チタン。

小澤さん 優秀です。
で、埋蔵量も少なければ意味ないですけど、
地球上に無尽蔵にありますからね。

清水 じゃあチタンを大量に生産してもらって、
もうちょっと安くなりませんかね?

小澤さん そうですね。生産プロセスを変えていかないと、、、
まぁ一番簡単なのは宇宙ステーションで
溶鉱炉を作ってですね、、、。

清水 そんなに空気が嫌いなんですか(笑)。

小澤さん まぁ、、、これからですね。
世界中でチタンを作っている国は
日本、アメリカ、ロシア、
あとイギリスのロールスロイスが少しだけ。
今、中国も作り始めた。
輸出しているのは日本だけ。

清水 僕は普段、近所の鋼材屋さんから
鉄やステンレスの鋼材を仕入れているんですが、
チタンって普通の鋼材屋さんから
仕入れられるものなんですか?

小澤さん んー、まぁー、よりけりだと思いますね。
うちでも売ってるよ(笑)、、、今は高いね。
非常にタイトな状況になっている、、、。
鋼材も今あるものと無いものとがあるんだ。
もう今はアングルとかフラットバーとかは無いね。

清水 無いんですか?

小澤さん 今ね、チタンが世の中にデビューしてから、
異常なんですよ。無いんですよ。

清水 無い?

小澤さん 飛行機でボーイングとか、あの大きい旅客機ね、
あれ一機作るのに、チタン約100トン使うのね。
で、全世界で年間に500機ほどしか
生産能力がないんですけど、
1500機くらい注文受けてしまったらしくてね。
そのエンジン周りのチタンっていうのは
日本から輸出していて、
そのチタンは日本国内に売るより、
3倍くらい高値で売れるので、、、

清水 そんなに高く買うんですか、そっちの人は。

小澤さん えぇ。日本にしかできないんですよ、そのチタン。
それがひとつ。

あと、まぁ、中国を含めた東南アジアの電力不足ね、
火力発電所をODAでやってるでしょ、日本が。
火力発電所ってのは全部海辺なんですよ。
何でかっていうと、
炉を冷却するためにたくさんの水が必要で
どこにたくさん水があるかっていうと海なのね。
海の水に完全に耐食を示すのは
プラチナかチタンしかないから、、、。
だから巨大なチタンの塊の冷却用コンデンサーがいるんだ。
火力発電所をボンボン作っているから、
その分チタンの巨大なコンデンサーがたくさん必要なんだ。

あともうひとつは、ペットボトルね。
つい何年か前までは
インドやフィリピンあたりでは手で水を飲んでましたが、
最近はペットボトルの需要が
そちらの地域にまで広がっていってね、
ペットボトルを外で作って運ぶとなると、
中身ほとんど空気なので意味が無いから、
やっぱり現地生産ってことになるのね。
ペットボトルのテレフタル酸を作るプラントが
オールチタン製なんですよ。
だからそっちの地方でもたくさんチタンが必要なんです。

清水 大人気じゃないですか、チタン。

小澤さん で、そうこうしているうちに、原油が高いでしょ、
アラブのオイルダラーは今すごく景気がいいのね、
彼らは地べたから石油は出ても、水は出ないから
海の水を淡水に換える「海水淡水化」っていうんだけど、
海水淡水化プラントがたくさん欲しいわけですよ。
そのプラントを作るのもやっぱり海水が絡むから
チタンでなければならない、、、
今現在、世界でチタンを生産するキャパが
決まっちゃってるから、、、
そんな状況だから国内に回ってこない。

清水 本当に国内には無さそうな話ですね(笑)。

小澤さん 来年の分はもう決まってしまっているけど、
再来年はもうこんな状況は続かない
と思っているけどね。

清水 じゃあ、僕は2、3年後からチタンやります。
どうぞよろしくお願いします。


株式会社 ティグ
所在地 大阪府東大阪市川田4-1-32
業務内容
小型チタンシェル&コイル熱交換器、
シェル&チューブ熱交換器、
コイル熱交換器の設計、製造販売
チタンフレキシブルチューブの製造販売
海水冷却装置、その他各種冷却装置
SUS熱交換器各種
チタンの伸線、熱処理、センタレス加工、
溶接棒の販売
チタン板、丸棒、パイプ、線材、
エキスパンドメタルなどの販売
チタン特寸パイプ加工、製缶、機械加工、
曲げなどの加工全般
真空熱処理イオン干化、陽極酸化、
研磨等の熱処理及び表面処理加工全般
チタン製自転車フレーム及びパーツの製造販売
チタン製日常用、スポーツ用車椅子の製造販売
チタン製小型、大型のモニュメントの製造
その他一般加工全般
MAIL mailadm@titanium-tig.com
URL http://www.titanium-tig.com/

清水薫 (1970生)
金属工房を経て、株式会社IDEE入社、IDEE WORKSHOPにて商品開発と製作を行う。
96年、EXIT METAL WORK SUPPLYを設立。
金属で物を作りながら考える事を中心に、家具・什器のデザイン、自社工房での製造、及び企業に対してのプロダクトデザインやマテリアルの開発等を行う。
2007年より既製品什器の製造・販売を開始。
メーカーを目指してみる。メーカーカタログサイト



#069 2010.09 モノ作り 今昔
#068 2010.08 上海見聞録
#067 2010.07 香港見聞録
#066 2010.06 現代手工業展2010
#065 2010.05 展示会の準備 その2
#064 2010.04 展示会の準備 その1
#063 2010.03 展示会について
#062 2010.02 NPOについて
#061 2010.01 新年のご挨拶
#060 2009.12 星のや京都
#059 2009.11 先人達に学ぶ
#058 2009.10 ビルの壁面のアート
#057 2009.09 rooms 19
#056 2009.08 日本のモノ作りについて思うことを少々
#055 2009.07 ハイテクなモノ作り
#054 2009.06 部屋を彩るもの ホームアクセサリー展
#053 2009.03 ホームアクセサリーを作る その1
#052 2009.02 EXIT この春の開発
#051 2009.01 両テは強えのか!2009
#050 2008.12 EXIT 今年の開発
#049 2008.11 井口産業の井口君
#048 2008.10 やさしいコンクリート KITSUJI
#047 2008.08 誰かの為のギフト&トロフィー展
#046 2008.07 トロフィーを作る
#045 2008.06 トロフィーをいじる
#044 2008.05 iron I(アイアンアイ)
#043 2008.04 現場で使える英会話
#042 2008.03 ロートアイアンのパーツのことならレッキーメタル オーナメント ジャパン
#041 2008.02 浦安
#040 2008.01 「溶接します。」
#039 2007.12 「ガス切りをやります。」
#038 2007.11 「パイプを曲げます。」
#037 2007.10 「鍛造やります。」
#036 2007.09 読書の秋
#035 2007.08 トラスボックス/EXIT 今月の開発
#034 2007.07 百合の義星/EXIT 今月の開発
#033 2007.06 協同して開発しています/EXIT今月の開発/平松工業 仕事展
#032 2007.05 什器のメーカーになってみよう
#031 2007.04 「モノ作り」白書
#030 2007.03 studioMIRA 太田彩子さん
#029 2007.02 工業用ネジからアートネジまで特殊ネジのことならなんでも 川端ネジ製作所
#028 2007.01 hitin metals 佐藤江利子さん
#027 2006.12 切れなくなったドリルの刃を研ぐ
#026 2006.11 チタンのことならなんでも 株式会社ティグ
#025 2006.10 建築金物全般と鉄の素地をそのまま見せる表面コーティングの研究と開発
株式会社 フロント
#024 2006.09 サンドブラストのことなら何でも 株式会社 仁木鍍研工業所
#023 2006.08 人の暮らしとすまいのために 株式会社マキタ
#022 2006.07 中古機械のことなら 北区 尾久 中古機械屋通り
#021 2006.06 作りながら考えてます
#020 2006.05 世界最高レベルのアルミ精密板金 株式会社 渓水 エアロコンセプト
#019 2006.04 電動工具の修理のことならなんでも 宮本電池株式会社
#018 2006.03 石材のことならなんでも 丸太石陶材株式会社
#017 2006.02 パイプ等の曲げ加工のことならなんでも アール産業 牧
#016 2006.01 RECENT WORKS
#015 2005.12 テーパーパイプのことなら 千葉テーパー製作所
#014 2005.11 コンクリートプロダクトならなんでも 立基建材工業株式会社
#013 2005.10 アルミ鋳造のデザインエンジニア オーシャンビートル(有)
#012 2005.09 ハンガーのことならなんでも 株式会社タヤ
#011 2005.08 木材のことならなんでも 岡崎製材株式会社
#010 2005.07 ステンレスデパート 株式会社 大誠工材
#009 2005.06 金属のリサイクルのことならなんでも ツチヤ産業株式会社
#008 2005.05 鉄鋼材料と加工品のことならなんでも 井口産業株式会社
#007 2005.04 HIZUKI
#006 2005.03 家具の物流から施工まで 株式会社オカムラ物流
#005 2005.02 プラスチックのことならなんでも 新興プラスチックス株式会社
#004 2005.01 GLASSとMIRRORの総合カンパニー 株式会社ティー・エイ・エヌ
#003 2004.12 ネジのことならなんでも 島崎鋼業株式会社
#002 2004.11 近藤康夫デザイン事務所代表 近藤康夫さん
#002 2004.11 TIME&STYLE代表 吉田龍太郎さん
#002 2004.11 STANDARD TRADE. 渡邊謙一郎
#001 2004.10 展示会