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ホーム > モノ作りの現場から > hitin metals 佐藤江利子 #003



すっかり暖かくなりました。
桜が本当に奇麗ですが、花粉も気になるところ。
花粉症じゃないはずなのに何となく鼻の調子が悪いのは、やっぱりそういうことですかね・・・。

今月はロウ付けをpick upしてみようと思います。


なまし場。ロウ付けもここでします。


バーナーの頭たち


銀ロウ


下の大きい方が早ロウで、上に乗っているのが2分ロウ。結構色の差があります。

普段、銀や銅や真鍮などの
非鉄金属を扱っている私にとって、
くっ付けると言えば、ロウ付けです。

簡単に説明すると、ロウ付けとは溶接の一種です。
でも、いわゆるあの、見てはいけない光を放ちながらする
溶接とはちょっと違います。

あの溶接は、アーク溶接と言って、
くっ付けたい部分を溶かして、
双方を一体化させるというもの。
ロウ付けは本体を溶かすのではなく、
溶けた合金(ロウ)を接合させたい部分に流し込むという、
イメージとしては接着剤に近いような感じですかね。
あくまでも私のイメージですけれど。

その、ロウ付けに使うロウですが、色々な種類があります。
ざっと上げるだけでも、銀ロウ、銅ロウ、真鍮ロウ、
金ロウ、プラチナロウ、パラジウムロウ、ニッケルロウ、
リン銅ロウ、錫、半田・・・。

その中でも色々な材料を付けるのに
多用されているのが銀ロウです。
私が普段使っているのも銀ロウ。

銀ロウは、主に、銀と銅と亜鉛を混ぜ合わせた合金です。
亜鉛など、融点の低い金属を混ぜて、
比較的低い温度で溶けるようにしてあるものです。
銀ロウにも色々種類があり、
混ぜている金属の比率を変えることで、
溶ける温度に差を持たせています。
その温度は515℃〜880℃くらい。
種類は2分、3分、5分、7分、早、のような具合で、
もっと種類があったりもしますが、
数字が小さい方が銀の含有率が高く、
融点が高くなっています。

複数箇所を接合したい場合などは、
銀ロウを数種類、使い分けます。

例えば、ひとつのものに二カ所のロウ付けをしたい場合は、
先に一カ所を2分ロウで付けて、
もう一カ所はより融点の低い5分ロウで付ける、
というように使います。
ちなみに、銀の含有率が低くなるほど、
銀ロウの色が黄色っぽくなったりくすんでくるので、
より銀の色に近い仕上げにしたい場合は
融点の高い銀ロウを使った方がいいです。



スプーンのロウ付けをします。
ヤスリをかけて接合面の擦り合わせをします。


希硫酸に浸けて酸化膜を落とします。

さて、実際ロウ付けをする時は、
まず接合面の油分や酸化膜を取ります。
これが残っているとうまくロウ付けが出来ません。
ヤスリをかけたり、希硫酸に浸けたりして取り除きます。


ロウ付けをしていきます。


フラックス。ちょっと固まっています。ショック。


フラックスを塗ります。


接合面がきれいになったら、フラックスを塗ります。

フラックスとは酸化防止材です。
加熱しても酸化膜が出来てしまわないように
塗っておきます。
フラックスも、ロウの種類によって
専用のものがありますので、使い分けます。

私が思う、フラックスの最も厄介な所は、
固まるとすぐに元にもどらない所です。
基本、ペースト状なのですが、うっかり蓋を閉め忘れると、
気付いた時にはすっかり乾いてカチコチ。
こうなると水を入れるだけでは元に戻りません。
乳鉢ですって水を入れればまた元に戻るみたいですが、
すぐ使いたい時にこのカチコチを見ると、
結構ショックを受けるので気をつけてくださいね。


ロウを置きます。


火を当てていきます。


少し溶けた所で火を止めます。


皿と一緒にセッティングします。


棒の方にロウが付いているので、皿に熱を集めて引っ張ります。


完成しました!

そして、ロウを置きます。
接合したい箇所のすぐ隣や上にロウを置き、
熱を加えてロウを溶かします。
左の写真のスプーンのロウ付けは、
先に棒の部分にロウを少し溶かして付けておき、
皿と挟んで、接合面で溶かすという風にしています。

この時、ロウだけに火をあてると一気にロウが高温になり、
亜鉛など融点の低いものが気化し、成分が劣化して、
ロウの流れが悪くなってしまうことがあるので注意です。

むしろ、ロウには火を当てず、
接合したい双方の地金に火を当てます。
両方の金属が同じ温度になるように熱を加えていきます。
片方に熱が偏ると、うまくロウが流れない原因になります。

地金が暖まってくると、自然とロウが溶けてきます。
こうなったら、火の勢いをちょっと上げて、
さっさと仕事をします。

ロウは熱の高い方に流れていきますので、
こっちの方向に伸びてほしいなという方に
バーナーの火を持っていきます。
火を使って、ロウを引っ張るような感じです。

左のスプーンの場合には、
棒にロウがくっ付いている状態なので、
先に皿に熱を持たせて、ロウを誘導しています。

あまり長く火を当てていると温度が上がりすぎて
ロウがボソボソになってしまいますのでさっさと火を止めます。
私が思うに、ロウ付けに深追いは禁物です。
うまく流れないからと言って、いつまでも熱を加えていると、
余計に状況が悪化します。
大抵、油分が残っているとか、接合面が合っていないとか、
ロウとは別の理由で流れが悪いことが多いので、
一度酸洗いしてからもう一度やった方がうまくいきます。

こうして無事に接合が出来るというわけです。


でも、ロウ付けで最も大切なことは、
接合部分がピッタリ合っているかや、
ロウ付けするモノが作業中に動かないように
ちゃんと固定されているかなどの、
作業を始める前のセッティングだと
職人さんが言っていました。
準備の作業ってちょっと面倒臭いことが多いのですが、
確かに、備え良ければ憂いなしってこと、多々です。

熱で顔がパリパリすることもありますが、
ロウ付けは意外と楽しい作業です。
火で金属を誘導するのがちょっと面白いなと思います。

夏は絶対にお勧めしませんが、
最近暖かくなってきて、
換気していても寒くないし、いい季節かも。
この時期ロウ付け、オススメです!



佐藤江利子 (1978生)
2002 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 卒業
2002 株式会社プレステージジャパン 入社
オリジナル家具の販売、インテリア小物の仕入れ・開発に携わる
退社後、金工職人の元で仕事を勉強
2006 hitin metals設立

金属を使ったテーブルウェア、インテリア雑貨、照明器具、ジュエリーのデザイン・製作。
家具や什器における装飾部分のデザイン・製作などを行います。



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