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ホーム > モノ作りの現場から > hitin metals 佐藤江利子 #006



梅雨真っ盛りになりました。
人気薄のこの季節、いかがお過ごしでしょうか。


レシピ


イマイチな私の脂台


まず、松脂を暖めます。


松脂が完全に溶けたら・・・


地の粉を少量ずつ入れます。


地の粉を入れつつかき混ぜ


麻紐をほぐし、入れます


少し熱がおさまったら、定板の上で練ります。


先生、笑顔です。


また鍋に戻し


火にかけます。練っている時に麻紐がごわごわしなくなったら出来上がり。

今回は、スーパーサブのつくりかたについて、です。
何のことかと言うと・・・、松ヤニのことです。

以前からちょこちょことご紹介しているこの松ヤニ。
基本的に彫金や鍛金の仕事をしない方には、
あまり縁のないものだと思います。
松ヤニのことを、「ヤニ」とも呼びますが、
名前的にもあまり良いイメージがなく、
見た目も真っ黒で、何だかいやーな感じ。
が、しかし、本当に便利な道具なのです。

松ヤニは、金属に彫りや打ち出しなどの装飾を行う時に、
金属を固定するものです。
熱すると柔らかくなり、冷めると固まるという性質を利用して、
複雑な形にも密着します。
冷めて固まれば、柔らかめの当てがねのような役割を
してくれるので、鏨(たがね)を使って模様を付けたり、
動物や植物など自由曲面の多い形を金属板を使って
表現する場合に良く用いられます。
小さなものなら、私が持っているような鉄の半球(ピッチボール)
に松ヤニを盛った脂台に貼付けて作業しますし、
より大きく、器状になっているものなら、
その中に松ヤニを流し込んで成形します。
平たく言うと、金属用の粘土みたいなものです。

彫金を本格的に始めてから松ヤニを使うことが多くなり、
使い慣れてくると尚更に便利だなという思いが募り、
今や私のスーパーサブ的存在で、
勝手ではありますがそういうことにさせて頂きました。

しかし、その便利な松ヤニにも、善し悪しがありまして・・・。

私が使っていた松ヤニは、その昔作ったものだったのですが、
年月が経ったせいか、使い方が悪いのか、
最初の分量がおかしいのか、理由はわかりませんが、
なんだか使い辛いものでした。

私のヤニは、火をあてると、表面だけがダーっと溶けて
ベチャベチャになり、燃えだします。
おまけに、固まったら固まったで、
バサバサしてまとまらないのです。
でも、良いヤニを知らない私は、
松ヤニってそういうものなのかな、なんて思っていました。

しかし、ある日鎚舞でヤニ台を借り、あれ?と思うことに。

ヤニを触ったことのある方ならわかると思うのですが、
熱を入れると程よく柔らかくなるけれど、
地金などにネバネバと引っ付かないという、
いわゆる理想的なヤニだったのです。
私にとっては、ヤニのその一面がとても新鮮で、
「本来はこんなに扱い易い道具だったのか!」
と目から鱗が落ちた気分。
それで、是非、先生にヤニの作り方を習おうと思ったのです。

先生に自分の持っている松ヤニの話をすると、その松ヤニも、
持ってきてもう一度配合し直せば使いやすく出来るとのこと!

ということで、松ヤニ作りの始まりです。

☆ 松ヤニのレシピ☆

松脂 500g
地の粉 300g
菜種油 50cc
油煙(松煙でもよし) 大さじ1

さらに、鎚舞式では、つなぎとして、
ここにほぐした麻縄を入れます。

分量は、季節や用途により変えます。
例えば、夏は気温が高く溶けやすい為
油分を少なくしてちょっと固めに、冬は逆に柔らかめに作る、など。


@まず、鍋に松脂を入れてとかします。

A完全に溶けたら、地の粉を少しずつ加えて混ぜます。

B菜種油を加え混ぜ、さらにほぐした麻縄を混ぜます。

C十分混ざったら、定盤の上で練ります。

D練った松脂をもう一度鍋に戻し、弱火で溶かします。

Eそして更に練ります。

麻の繊維が目立たなくなったら、
ピッチボウルに乗せて出来上がりです。


ところで、あの前から持っていた松ヤニ、
どこが悪かったのかと先生に見てもらった所、
「結構しっかり作ってるで」とのこと。
「ただ、地の粉と油と、つなぎとして入れている和紙が多い」
だそうです。

ようするに、松脂が少ない。
そうすると、固い時にバサバサすると。
でも、油が多いので、
火をあてるとベチャベチャと溶け出して燃えてしまうよう。
なるほどー。

それから、やはり使っていくうちに松脂がどんどん燃えるので、
作りたてよりも固くなっていくようです。
その場合、松ヤニを剥がして鍋で作り直すのですが、
固くなった松ヤニも、板に彫りを入れる時など
がっちりと固定したい時には便利なので、
取っておいて使うこともあるとのこと。
そうやって、用途ごとに使う松ヤニの
バリエーションを増やしていくようです。

先生は、松ヤニの様子を見る時、
手で触って感触を確かめていました。
ちょっと気をつける必要はありますが、
良い塩梅の松ヤニは熱してもそこまでベタベタしていません。
松ヤニを手で練ることで、
ヤニの感触を覚えることが大切なようです。

新しい松ヤニを作りながら、途中で古い問題児ヤニを混ぜ、
そちらの治療も兼ねて鍋でグツグツと作りました。


松脂は、「万能当て金」と言われるくらい、
昔から職人さんの間で重宝されてきたものです。
特に東京の銀器職人さんはとても上手に松脂を扱うと聞きます。

用途によって使い分ける為、
色んな種類の松ヤニを工房内に積んでいるとのこと。

確かに、当て金で叩いて地金を延ばしたくない薄板の整形や、
裏面に極力キズを付けたくない小物などには有利ですし、
当て金で叩くより、より柔らかい形が作れます。

松ヤニを使いこなせば、もっと表現に幅が出せるんじゃないかと、
更にスーパーサブを増やしてしまいそうな気がしています。

でも、見た目はかなりエグいというか・・・。

私、毒リンゴ作ってそうだな、と思いながら鍋をかき混ぜてます。






佐藤江利子 (1978生)
2002 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 卒業
2002 株式会社プレステージジャパン 入社
オリジナル家具の販売、インテリア小物の仕入れ・開発に携わる
退社後、金工職人の元で仕事を勉強
2006 hitin metals設立

金属を使ったテーブルウェア、インテリア雑貨、照明器具、ジュエリーのデザイン・製作。
家具や什器における装飾部分のデザイン・製作などを行います。



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