モノ作りの現場から(アーカイブ) | 読みモノ(アーカイブ) | 最新のコンテンツはこちらです
ホーム > モノ作りの現場から > hitin metals 佐藤江利子 #008




あて金各種


回転体を叩く


鋼材を切る

暑い日が続いたと思ったら集中豪雨、
我がアトリエは暑さにも雨にもバシバシ影響を受けています。
最近は、流されるかもしれないという不安を隠せません。

さて今回は、先日、「あて金」を作った話をします。
正確には作る手伝いをしたのですが・・・。

「あて金」とは、鍛金により板材の金属を整形する時に
使う道具のひとつ。
金属の板を、あて金に押し当て、上から金槌で叩きます。
簡単に言うと、「R型」で、
そのRを金属に写し取るようなイメージです。
板を送りながら叩き、基本的には回転体を作ることが多いです。

あて金を作りたい友人が何人か集まって作ったのですが、
時間と場所を考慮し、今回は助手に回りました。
場所は以前、「うわさのアトリエ」でご紹介した、
永井くんの高尾のアトリエです。

まず、45Cの炭素鋼を必要な長さに切ります。
45Cは、炭素が0.45%入っているという意味。
あて金は型として、上から金槌で叩かれるものなので、
普通の鉄より硬い材料で作ります。
今回使った材料は、19角と25角の角材です。
大体、30〜50センチぐらいのあて金を作る予定でしたので、
先を潰したり、尖らせたりということを考慮し、
必要な寸法を取りました。

作るあて金は、「ぶったて」という、
鋼材の片方を尖らせ木台に刺して使うものと、
「への字」という、鋼材を曲げて片方を木台に空けた穴に入れ、
木片などで固定して使うものとの二種類です。


コークス炉に入れる


面を軽く取る


鋼材の頭を据え込む


このハンマーは2キロ


反対側の先を尖らせる


への字に曲げる


憧れの5キロハンマー


さて、鋼材を切り出したら、軽く面を取り、
炉に突っ込んで赤めます。

この炉は、コークス炉です。
以前、「鍛鉄、はじめませんか?」でご紹介した
平田さんの所は、石炭の炉でしたね。
おさらいしますと、コークスは、石炭を蒸し焼きにした燃料のこと。
火を付けて燃料を追加していけば、
それほど煙や煤も出ず、熱を保ってくれます。

先にしっかりと熱が入り、黄味がかってきた所を、
ハンマーで鋼材の先を上から叩き、先端の面を広げます。
こうすることにより、「型」となるR面を広くします。
もちろん、板材で作る形により、
鋼材の先端の面が小さい方が良い場合もあります。
ただ、どのような形を作るにせよ、
整形の初期段階では、安定性の高い、
なるべく広い面を持ったあて金を使うことが多いです。

ハンマーは振れる範囲で、なるべく重いものを使います。
鉄は、うまく熱を入れればかなり柔らかくなりますが、
それにしても硬いものです。
一度熱して叩いたぐらいでは、
なかなか思った形になりません。

最初の据え込みでは、みんな5キロのハンマーを
頭上まで振り上げて使っていました。(女の子も)

ぶったてと呼ばれるあて金を作る場合、
頭の据え込みが出来ると次は、
木台に突き刺す方を作ります。
据え込んだ方とは逆側を、コークス炉に入れて暖めます。
良い具合に熱が入ったら、
今度は側面から叩いて先に向けて尖らせて行きます。

への字の方は、逆側の先端も上から叩き潰し、
据え込みます。
据え込みが終わると、への字のごとく、鋼材を曲げます。
万力に挟んだり、アンビルの穴に突っ込んだりして曲げますが、
短い鋼材の場合、思うように力がかけられず、
曲げづらいことがあります。
そういう時は鋼材の上からパイプを被せて長さを出しますと、
てこの原理で楽に鋼材を曲げられるようです。

ここまでで、大きく形を動かす所は終了。
あとは、据え込んだ部分の形を整えて磨けば出来上がりです。

あて金は、必要に応じて様々なものを用意します。
作る面に応じたR面を持ったもの、
作る形に応じた曲り方をしたものなどなど。
器が深く、細くなっていけばそれだけ、
細く湾曲したあて金が必要になってきます。
ひとつの品を作る為には、
大抵はいくつかのあて金が必要です。
鍛金仕事の職人さんは、壁にびっしりと何十本も、
このあて金を揃えていたりします。
いわゆる「ジグ」みたいなものなので、
どんどん増えていってしまうんですね。

そして、あて金が入らないような所の整形の際は、
「スーパーサブの作り方」でご紹介した
「やに」をつめて叩いたりします。

自分のほしいラインは自分で道具を作って出すのです。
大変ですが、ぴったり来るものはなかなか売ってないので、
作るしかありません。

ということで、非鉄金属メインの私でも、
やはり鉄をある程度扱えないと仕事が出来ないのです。
鉄は苦手、なんて甘いことは言ってられません。

5キロのハンマーはさすがに自信なかったのですが、
某ファクトリーガールの方が壮快に振ってらっしゃったのを見て、
じわじわと感化されました。

私も5キロ、スカスカ振れるようになりたいです(今更ですが)!



佐藤江利子 (1978生)
2002 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 卒業
2002 株式会社プレステージジャパン 入社
オリジナル家具の販売、インテリア小物の仕入れ・開発に携わる
退社後、金工職人の元で仕事を勉強
2006 hitin metals設立

金属を使ったテーブルウェア、インテリア雑貨、照明器具、ジュエリーのデザイン・製作。
家具や什器における装飾部分のデザイン・製作などを行います。



#030 2010.08.05 KIKURA -器と暮らす。-
#029 2010.07.05 やっぱり涼しい、八ケ岳
#028 2010.06.05 2010年 展示会
#027 2010.05.01 SEA
#026 2010.04.01 ウィズの森にて
#025 2010.03.02 トトテン
#024 2010.02.09 金属仕事、あれこれ
#023 2010.01.06 あけましておめでとうざいます
#022 2009.12.18 「トトスク」にて展示会をしています。
#021 2009.11.03 しょうひんかいはつ3 −お祝い小物−
#020 2009.09.04 株式会社 渓水 エアロコンセプト
#019 2009.08.01 しょうひんかいはつ2 -INTERLUDE-
#018 2009.07.03 (有)マイクロキャスト
#017 2009.06.08 2009年 展示会 ありがとうございました
#016 2009.05.12 グリーンのある部屋
#015 2009.04.01 楽しいものをつくる人
#014 2009.03.01 復元のしごと
#013 2009.02.01 「うつすことから」 その1
#012 2009.01.01 時をかける器
#011 2008.12.01 11月のある日
#010 2008.11.01 ベビースプーンをつくる
#009 2008.10.01 地球にやさしい人
#008 2008.09.01 あて金を作る
#007 2008.08.01 おつかれさまを形にする
#006 2008.07.01 スーパーサブのつくりかた
#005 2008.06.01 最近、気になるもの
#004 2008.05.01 鍛鉄(たんてつ)、はじめませんか?
#003 2008.04.01 季節はロウ付け
#002 2008.03.01 しょうひんかいはつ1
#001 2008.02.01 うわさのアトリエ

ファクトリーガール
#12 2008.01.01 竹影堂 鎚舞
#11 2007.12.01 ザビエル現る!
#10 2007.11.01 光りモノには弱いです。
#09 2007.10.01 秋に思うこと
#08 2007.09.01 ホットな毎日です。
#07 2007.08.01 海辺に暮らしたい
#06 2007.07.01 金属とガラスと・・・
#05 2007.06.01 つゆ・梅雨・露
#04 2007.05.01 糸ノコの話
#03 2007.04.01 あらためて おもうこと
#02 2007.03.01 テーブルセッティング
#01 2007.02.01 はじめまして。