|
 |
|

シリア時代に作られた器。

|
|
|
新年は、1月31日(土)〜2月8日(日)まで、
元麻布にて古陶磁を含むテーブルウェア等を扱う「さる山」で、
展示をさせて頂くことになっております。
「うつすことから」1 という、文字通り、
器を写し取ることがテーマの展示で、
私を含めた7人の作家が参加します。
陶磁器、木工、金工の作家が、
同じ器を、それぞれの素材を使って表現します。
作品のテーマ、写すための陶器が送られてきたのは、夏の終わり頃。
シリア時代に作られたという器でした。
http://openers.jp/culture/saruyama_osamu/saruyama06.html
窯の底に眠っていたような、
今にも朽ちそうな雰囲気の土器を見て思ったことは、
「早く次ぎの人に回さなくちゃ・・・。」
モチーフの器は、参加する作家から作家へと回して、
全員が形を見る時間を取っていたのです。
ですから、万が一私が壊しでもしたら、
次の人やその次の人が制作出来なくなってしまい、
この企画自体がダメになってしまうわけです。
しかも、なんだか有り難そうな器だし。
|

鉄で作った器。

|
|
|
「形を写すという解釈で」と言われていましたが、
この量感や雰囲気も金属で写し取っておきたいと思い、
鉄でサンプルを作成することにしました。
鉄は9ミリの板を叩いて形にしました。
普段、非鉄金属ばかりを扱っている私にとって、
9ミリの板を叩くというのは恐ろしいことでしたが、
なんとか形になりました。
(普段、鉄をひっぱたいている現代手工業乃党のみなさん、
鍛冶屋さん、鉄鋼業のみなさま、すごいです。本当にご苦労様です。)
長い年月を表現するのは難しいですが、
少しでも印象を近づけたいと思い、
しばらく器を放っておくことにしました。
三ヶ月くらい放置したら、少しですが、古ぼけてきました。
直接雨が当たる所ではなかったのですが、
降り込んだ雨風にさらされて、サビがふいてきました。
地金が食われてボコボコしてきています。
もう少ししたら、蜜蝋か何かを塗って、
落ち着かせようと思っています。
|
|
|
この預かった器の形を写すこととは別に、この器を受けて、
それぞれの作家が、自分たちなりの器の提案をする、
というのも展示のテーマのひとつです。
さて、私はどんな器を作ろうか、と考えました。
焼き物のことは正直よくわかりませんが、
縄文土器の様な、ぽってりしてぼそぼそしたこの器の感じは、
結構好きです。
よく見ていると、この器の表情は風景の様に見えてきます。
アンデス山脈や、砂漠地帯や、岩場の続く丘が連想され、
そこで暮らす人々や家並みまで見えるような気がします。
大地と共に暮らす一家の顔つきをかなりリアルに思い描いた時
ふと我に返り、ちょっと驚いたと同時に、
「この器、すごいな」と思いました。
ただの器なのに、ここまで考えさせるとは。
私はこの、「ちょっと気になる」から、
ぐっと引っ張り込むような奥行き感に興味をもちました。
この奥行き感をテーマに、金属を使って、
いくつか器を作ってみようと思います。
実はこのシリア時代に作られた器、
形自体はもともと金属器をトレースしたものらしいのです。
遥か時を超え、再び金属に形を変えるというのも面白いことです。
今月末から来月の頭の週、お時間ございましたら、
是非、「さる山」まで器を見に来て頂けたらと思います。
|
|
|
|
|
|
|