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ホーム > モノ作りの現場から > hitin metals 佐藤江利子 #020



こんにちは。
空気がひんやりとする日が増えてきて、もう秋がすぐそこまでやってきました。

今月は、株式会社 渓水の菅野社長に、エアロコンセプトの商品について伺ったお話をします。


前列左の方が、株式会社 渓水の社長、菅野さん。


外観。


エアロコンセプト商品。


スーツケース。


みんなが集まって見ているのは・・・。


かの有名なギターケース。すごい!

今回の見学は、EXITの清水さんの呼びかけで、
現代手工業乃党の多くのメンバーと一緒に伺いました。
清水さんの記事、「世界最高レベルのアルミ精密板金
株式会社 渓水 エアロコンセプト
」で
取材されていた会社です。
大人数でお邪魔しましたが、快く迎えてくださり、
心に響くお話をして頂きました。

事務所に入ると、カバンや名刺入れ、ケース類など、
エアロコンセプトの商品がずらりと並んでいました。
しかもそのどれもが、さらりとは見過ごせないものばかり。

四角い箱の形状に大きな穴のデザインという
シンプルな見た目の印象とは異なり、
そこには、繊細な仕事がぎゅっと詰まっていました。
四隅の処理、開閉のスムーズさ、内側の構造など、
使い心地がとても考えられていて、
長く愛用出来る一品ばかり。
スマートでタフな大人の持ち物といった感じです。


都バスに引かれてしまったカバン。


杖 いろんなデザインがあります。


持ち手には突起をつけて、一カ所だけではなくいろんな角度から掴めるようにしてあります


杖の柄部分。細かい部分がネジ式になっていて、分解出来たり。マニアにはたまらなそう。


柄アップ。

事務所のテーブルにつき、
しばらくメンバーと菅野さんとで話をしていると、
テーブルに黒いスーツケースが乗せられました。

「これ、都バスに引かれちゃったんだ。」
その、エアロコンセプトのジュラルミンとアルミ合金のカバンは、
真ん中の部分がぺちゃんこに潰れています。
あー、壊れちゃったんだな、と思ったのですが、
「でも使えるから、このまま使っているんだよ。」
とおっしゃったのです。

え?
と思いながら開け閉めしてみると、
なんと普通に開いたり閉まったりするのです!
こんなに形状が変わっても機能を果たすなんて。
これはもう、何も返す言葉がないというか・・・感動でした。


「実は足を複雑骨折してね。」
菅野さんはスキーで足を複雑骨折されて、
今も足にボルトが入っています。
かなりひどい怪我で、最初は杖を使わざるを得ない
状況だったそう。
今はリハビリの末、複雑骨折したことなど感じさせないくらい、
杖もなくスムーズに歩かれていますが、
手術のすぐ後は自力では歩けず、その時の無力感は、
今まで感じたことのないものだったとのこと。
そして、自分が歩くのに頼れる唯一のものが杖だったのです。

「でも、市販の杖は本当に使いづらいんだよ。」
市販の杖を手に取ったものの、よくあるステッキの型は
歩けない人には全然優しくないのだそうです。

「傘の柄みたいになっているものは、方向を限定されちゃうでしょ。
それに、立ち上がる時、前に進む時と、全体重をかけて
移動する時には上からグッと掴める柄じゃないとダメ。
掴んだ時に安心出来て、軽くて丈夫なものがいいんだよ。
そうゆうの全然売ってないから作ったんだ。」

ということで、杖を自ら作ってしまいました。

その杖が、言うまでもなくとても考えられており、
見た目に素敵なのはもちろんのこと、
丈夫さや軽さ、握り易さなど、
使い手の痒い所に手が届く設計になっているのです。

杖が素敵で信頼の出来るものなら、
ちょっと出かけてみようかなとか、
人と会って杖の話をしたいなとか、
気持ちが前向きになれると思います。

例えば、私もそうですが、目が悪い人。
眼鏡もコンタクトもなければ生活出来ないほど、
目の機能が低下しています。
でも、世の中には様々なデザインの眼鏡や、
コンタクトがあり、レンズや素材、デザインを選択出来ます。
ダテ眼鏡をかける人もいるぐらい、
ファッションの一部となっていて、
眼鏡をかけるということをそれほど苦痛に感じない方
が多いのではないでしょうか。

杖を使うことで感じた無力感を、
新しい杖の開発に繋げる姿勢に感動しました。
この素材、フォルム、こだわりは、杖を持つ人の気持ちを
わかっている菅野さんにしか出来ないこと。

エアロコンセプトの提案するステッキは、
今、商品化に乗り出しているそうですので、
今後がとても楽しみですね。



曲げ加工最中。


見入る党首と理事長。


ビニール紐ケース。渓水さんでは道具箱も全て自社で作ってらっしゃいました。市販のものは壊れてしまうからとのこと。その中でもこの紐ケースはヒットでした。重量もあって動かないし、こんな素敵な紐ケース見たことないです。


ビニール紐ケース細部。


見学終了後、工場の裏などに置かれたサビサビの鋼材を物色するスペソーチーム。ここにも揺るぎない我が道を行く大物がいました。

菅野さんの開発したエアロコンセプトは、
世界の著名人が好んで使う商品を多数
世に送り出しているのですが、
そのターゲットは至ってシンプル。
誰のために作っているのかと言えば、「自分」だそう。
菅野さんが人生の壁にぶつかり、ギリギリまで追いつめられた時、
これからの残りの人生、自分の欲しいものを作ることに
時間をかけると決めました。

だから、自分がいいと思うもの以外は、
基本的に制作しません。
何でも入るような分厚く大きなビジネスバッグは作りません。まして、肩掛けなんて問答無用。
それは、単に格好が悪いから、
野暮なデザインになるからということではありません。
薄いデザインのカバンには、あなたに会うだけのために、
最小限の資料を入れてこの場に来ましたという、
相手への礼の気持ちを込めています。
だから、沢山入らないようにしているのです。
ワイシャツ、ネクタイ、スーツ、
身につけるものにこだわりを持っている人が、
肩掛けのカバンを背負って、
着ているものにしわが寄ることを許すでしょうか。
手に持つことを億劫に思う人は、
最初からエアロコンセプトのカバンを選ばないでしょう。

自分が欲しいものしか作らない。
自分勝手なように響く言葉ですが、
菅野さんのプロダクトからは、「奢り」のようなものは感じません。
それは、細部への気配り、何故その形大きさなのかが、
使い手やその人を取り巻く人々に配慮しているから
なのではと思います。

菅野さんが欲しいもの、
その一個人の視点を一貫して持ち続けていること。
そしてプロダクトは決して大量生産せず、
エアロコンセプトの商品を気に入ったお客さんのために、
一点ずつ丁寧に作り、要望に答え、
メンテナンスまでの責任を負う。
沢山の人ではなく、一人一人を大切にする。
それがエアロコンセプトが著名人に好まれ、
異彩を放つ要因のように思いました。

菅野さんは、自分はデザインのことはわからない
とおっしゃいます。
でも、菅野さんの作られたエアロコンセプトの商品を見ていると、
デザインと機能が融合しており、
ひとつひとつに意味を感じます。

世の中で流行っていたり、売れているものを形にしたものや、
見た目でディテールを決めて、内側や負荷のかかる部分に
コストダウンのつけが回っているようなものとは、
存在感がまるで違います。

この商品を気に入って買って行くお客さんは、
一生モノを手に入れたという喜びに満ちることと思います。
私もモノを作っている者として、
菅野さんみたいな素敵な先輩の存在が自分の励みになります。
同時に、今の自分のモノ作りに喝を入れたい気分になりました。

どんなものを作る時でも、ただ手を動かすだけではなく、
自分の考えを持って仕事をしたい。
あまり人に理解されない時でも、
自分だけは自分の味方でいてあげられたらいいなと、
そんなことを思った見学会でした。

菅野さんは、沢山の有名な方と接している凄い方なのに、
とても気さくでバリアがなく、でも、
揺るぎない強さを感じる方でした。

また是非お話を聞かせて頂きたいですし、
私が作ったテーブルウェアも見てもらう機会がくることを
願っています。

それまでに一歩レベルアップしておくのが目標です。


話は変わりまして、2009/9/4(金) CLASKAパーティー
お買いものしナイト」に参加します。
現代手工業乃党として、デリバリーワークスの俵藤党首、
クヌートの小川由利子ちゃんと共に、商品を出します。
ヒティンメタルズからは、新作のベビースプーンを8パターン展開します。
銀の匙に彫りを施したものや、打ち目を入れたものなど、
新しいものばかりです。
木箱にパッケージし、そのままプレゼントにも出来ます。
もちろん、名前、生年月日、
誕生時間や誕生体重の彫刻も承ります。
お時間のある方は是非、会場にいらして下さい。
お待ちしています!

日時:2009/9/4(金) 19:00-23:00
会場:CLASKA 2F/3F/8F

◇「夜フリマ」
◇「POSTALCO UP UNTIL NOW??ポスタルコの頭のなか」展
◇ Mix room:様々なジャンルのアイテムを取り揃えたクリエイターズマーケット






佐藤江利子 (1978生)
2002 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 卒業
2002 株式会社プレステージジャパン 入社
オリジナル家具の販売、インテリア小物の仕入れ・開発に携わる
退社後、金工職人の元で仕事を勉強
2006 hitin metals設立

金属を使ったテーブルウェア、インテリア雑貨、照明器具、ジュエリーのデザイン・製作。
家具や什器における装飾部分のデザイン・製作などを行います。



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#025 2010.03.02 トトテン
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