2月になり、より一層冷え込む毎日ですね。 先日の大雪で、裏の竹林は見事に全部倒れてしまいました。 雪の重みで折れてしまったのか、と思いきや、 2〜3日後にはまた太陽目がけて立ち上がり、 元の竹林を作りつつありました。 自然は本当にたくましい。 ビックリと同時に尊敬しました。
先月、新築マンションの表札を頼まれました。 マンション全体が、シンプルでモダンな雰囲気でしたので、 素材感と表情が感じられるシンプルな表札を提案しました。 表札は2枚の板を組み合わせるデザイン。 下地の板に、それより少し小さめに切った上板を重ねます。 上板には荒し鎚でテクスチャーを入れ、 そこに透かしで文字を入れます。 上下の板の間に1ミリの板を挟み、 上下の板に隙間が出来るようにします。 2枚の板は、真鍮、銅、アルミの3種類、 銅は仕上げ表情の違う2種類を用意し、 合計4種類のサンプルから、 希望する組み合わせを選んでもらいました。 真鍮、銅の2種類は、表面を硫化仕上げし、 クリア塗装したもの。 真鍮は、高温の液に長時間つけ込むことで、 組織の中の銅成分に序所に反応が見られ、 うっすら茶味を帯びてきます。 銅はぬるま湯で作った液に浸けては出すことを繰り返し、 表面の余分な硫化物質を取り除きながら色上げをします。 こうすることで、地金にしっかりと色がのります。 テクスチャーは、私が持っている 鎚目のサンプルから選んでもらいました。 大きな岩目や、細かいヤスリ目の中から、 好みのものを伺います。 いくつかの種類を組み合わせたりすることで、 深みを出したりもします。 今回のお宅は、黄味の強いオフホワイトの壁に、 黒い塗装のスチールがライン状に入り、 部屋番号やインターホンなどかそこに設置されていました。 サンプルを色々と現場合わせをした結果、 真鍮の下板に、銅の硫化濃い色仕上げの上板、 テクスチャーは一番荒い打ち目のもので、 字体は明朝と決定しました。 下板にゴールド色を入れることで、 全体に高級感が増しています。 上板に濃い色を持って来たので、 文字が白抜きのようになり、 文字だけが異様に目立つということもなく、 すっきりとした印象です。 実際に取り付けると、マンションの雰囲気とも良く合い、 とても気に入って頂けました。 表札は家の顔と良く言いますから、 喜んで頂けることは、何より嬉しいことです。
それから、リングの制作もまた行っています。 今回は、2月に生まれてくる赤ちゃんと奥さんに、 記念のペアリングを贈りたいという依頼。 リングはピンキー(小指用)で、赤ちゃんの誕生石を入れます。 記念のピンキーリングということで、少し目立つように、 2連のリングを制作することになりました。 まずはシルバーで試作。 2つの連なるリングの片方は枝のようなゴツゴツした風合いに、 もう片方はシンプルな甲丸(かまぼこ型)のリングに 軽く打ち目をつけました。 2つの違う表情が重なり合って面白い見え方をします。 太い枝のような方に、2月の誕生石の アメジストが入る予定です。 本制作は、赤ちゃんが生まれてから行う予定。 女の子が生まれるそうなので、 健康で元気な子が生まれることを願いつつ、 彼女の誕生を私も心待ちにしています!
工芸の伝統的な技法のひとつに、 象嵌(ぞうがん)があります。 象嵌は、一つの素材に異質の素材を嵌め込むと言う意味で 金工象嵌、木工象嵌、陶象嵌などがあります。 金工象嵌には窪みを掘って図案に沿って切った金属板 を嵌め込む「平象嵌(本象嵌ともいう)」、 透かし抜いた図案の穴にピッタリ合わせ嵌める「切り嵌め」、 高肉彫りを施した金属板を嵌め込む「高肉彫色絵象嵌」、 「線象嵌」、「打ち込み象嵌」などがあります。 私は、金属を使った小物の制作を主にしているのですが、 今まで、象嵌の仕事はほとんどしていません。 去年の展示会で、鏨で作ったくぼみに銀ロウを流し、 象嵌のような風合いを持たせた器を みなさんにご覧頂きましたが、別の素材をはめ込む、 いわゆる「象嵌」は未経験でした。 以前から象嵌には興味があったので、 挑戦してみることにしました。 まずは平象嵌をマスターすべく、特訓です。 下板に嵌め込む板の輪郭を下書きし、 毛彫りの角鏨の60°で輪郭を彫ります。 さらに、内側にも格子状に角鏨を入れます。 はつり鏨を使い、格子状に入れた鏨の深さまで、 下板の表面を削り取ります。 輪郭部分を再度、毛彫りの角鏨の60°を使って彫ります。 この時、鏨は寝かせ、 内側は輪郭線よりも深く削るようにします。 (断面は台形になるように) 嵌め込む板の形を整え、四辺を大きく面取りし、 断面が台形になるようにやすります。 嵌め込む板に、一度、 なまし(火にかけてやわらかくする)を入れてから、 裏から板の中央を叩き、膨らまします。 彫りを入れた下板の窪みに、 中央を膨らました板を嵌め込み、 ならし鏨を使ってゆっくりと板を叩き、嵌め込んでいきます。 象嵌は基本的に、真鍮や純度を下げた銀、鉄など、 硬い金属を下地に使います。 嵌め込む方の金属は、銅、銀、金など、 柔らかく延びの良い材を使い、 凹み部分を埋めるようにしていきます。 普段の仕事では、 なかなか伝統技法を用いる機会は少ないのですが、 古来からの表現方法は、とても面白いものです。 見るだけではなく、実際に制作することで得る、 沢山の発見があります。 例えば、鏨の使い方や、金属の延び方など。 どうしても、好きな形や 慣れた手法のものばかり作ってしまいますが、 新しいことへ挑戦すると、頭の引き出しが増え、 考えの幅が広がります。 これからも続けていきたいと思っています。 今月は、去年展示をさせて頂いたカフェ「トトスク」にて、 グループ展に参加します。 ファクトリーガールの小川由利子さん、knutとして彼女と一緒に 陶磁器の制作活動をしている長谷川智恵さん、 編み物作家の上田さん、ガラス作家の大迫友紀さんとの展示。 私は、前回好評だった 箸置きやクリップなどの小物シリーズと、 小川さんと開発をした花器、「with green」シリーズ、 新たに、小川さんの陶器に私が蓋をつけた小物入れ、 などを出品する予定です。 場所:トトスク 時:2月25日(木)〜4月30日(金) ※月・火・水 休み 期間中に陶器のアクセサリーのワークショップを開催します。 参加者:上田さん(編み物)大迫友紀(ガラス)小川由利子(陶磁器)佐藤江利子(金属)長谷川智恵(陶磁器) さらに、来月の3月は、青葉台にある ウィズハウスプランニングさんのショールームにて 展示を予定しています。 また来月に詳しいお知らせをします。 どちらも気持ちの良い空間ですので、 是非遊びにいらしてください!