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ホーム > モノ作りの現場から > 井口産業 井口隆一郎 #012



先月までに主な鋼材の種類について一通り説明してきましたので
まとめとして材質について今月は紹介したいと思います。

材質については特殊鋼などは資格試験があるくらいですから
全てをお伝えすることができませんが一般的に使えるものをピックアップしていきます。

その前に鋼材に含まれる成分を確認しておかなければなりません。
基本となるのは純鉄(Fe)で90数%の含有になり
そのほか主要五元素と呼ばれる炭素(C)珪素(Si)マンガン(Mn)燐(P)硫黄(S)が数%で
銅(Cu)ニッケル(Ni)クロム(Cr)やモリブデン(Mo)バナジウム(V)などの
レアメタルがコンマ数%程で含まれています。
顕著に作用する元素としては炭素が最も影響力があり含有量の増加とともに硬くする事が出来ます。
言い方を変えれば炭素がない純鉄のままでは強度がないため鋼材は作りえないということです。
しかしながら炭素を増やしすぎると伸びや絞りなどの延性がなくなり脆くなってしまうため
そのほかの元素を添加することによって用途に合った機械的性質を作り出すわけです。
そのほかの元素に関しては、炭素と違い延性を損なわずに強度を増すことができるが
一定の含有量から極度に強度そのほかの特性が損なわれるというようなそれぞれの強み弱みがあり、
鋼材に必要な特性として溶接性・衝撃特性・耐食性・耐摩耗性・耐酸化性・快削性
などがありますのでいろいろな組み合わせをすることでその特性を発揮できるようにします。

SS400
JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材という規格に準じたもので
形鋼・鋼板類・棒鋼類がこの規格に当てはまりこの鋼種に関しては
指定がない場合は通常この材質になりSS材などと呼ばれます。
この規格にはSS330・SS490・SS540というものが存在しますが市中で聞いたことはないです。
外国材としての無規材は存在しますが国内材では無規であっても
内容はミルシートの出ないSS400になっているようです。
SS400の意味としては前のSのSteelのS、後のSはStructure(構造物)のSで、
400は引っ張り強度が400N/muということになります。
JISの規格を確認すると成分の規定はほとんどなく
引っ張り強度が400〜510N/mm2になっている物を指していますので
言い換えればメーカーや主原料の状況によって成分で見るとそれぞれが違うものになっているようです。

SM490A
JIS G 3106 溶接構造用圧延鋼材という規格で
SS400と同じ鋼種に存在するものでSM材などと称します。
この規格にもほかにSM400・SM520・SM570があり
末尾にA・B・CなどがそれぞれつきJISブックでは11種類としているようです
が身の回りではSM400A及びB・SM490A及びBが一般的に流通しています。
基本的なSS材との大きな違いは溶接性が優れている点でその他は成分量の規定がある事でしょうか?
もちろん金額はSM材のほうが高いです。
SM490Aの意味としては前のSはSteelのS、MはMarineのMで、
490は引っ張り強度が490N/mu、Aは衝撃特性を現していて
A→B→Cの順に高くなっていき一般に薄いものがAで厚くなっていくとB・Cと移っていくようです。
ちなみに、Marineは海洋などを意味しまったく関係ないようですが
この規格が規定されたころは溶接船体用圧延鋼材として開発使用されていた材質だったことの名残りに由るようです。

SN490B
JIS G 3136 建築構造用圧延鋼材。SN材。
SS材・SM材と同じ鋼種にある規格でより建築設計の精度増すために
SM材よりも厳しく規定が成されたもので15年ほど前にできた比較的新しい規格です。
SN400A・B・CとSN490B・Cの5種類が認められています。
名前のSはSteelのSでNはNew structureのN。
新しい建設材料の意か?末尾のA・B・CはSM材と同じです。

S45C
JIS G 4051 機械構造用炭素鋼鋼材で平鋼や棒鋼類・鋼板類につかわれる規格になります。SC材。
S10C〜S58CやS09CKなど23種類の規定がなされていますが、
実際うちあたりではS45C・S50Cがほとんどでその他は特殊鋼
になってしまい扱いはないに等しいです。
名前の意味はSはSteelのSで45Cは炭素(C)の含有量が0.45%前後ということになります。
硬い材料なのでSS材より硬いものが欲しい時に使われていて
引っ張ったり押したり擦りあわされる部分などや工具類に多いです。

SCM435
JIS G 4105 クロムモリブデン鋼鋼材。SCM材やクロモリ鋼とも言う。
高強度で焼き戻しの脆性が少ないため耐熱剛性を必要とする場所に多用される特殊鋼。
SCM415〜SCM822まで10種類が規定されているがSCM435しか見たことがありません。
パイプなどもあるようで最近は自転車のフレームに使用するのが流行っているようです。
薄くても強度が保てるため軽量化に適していて
指ではじくとさすがに硬くて薄いのでガラスのような高い音が聞けます。
名前はSteelのS、クロム(Cr)のCとモリブデン(Mo)のMで
レアメタルのモリブデンが配合されているため高価な材料となります。

SPA-H
JIS G 3125 高耐候性圧延鋼材。
耐候性鋼やコルテン鋼(USスチールの商標。日本では新日鉄製耐候性鋼の商標)と呼ばれます。
SPA-Cと2種類規定されていて薄い板などはSPA-Cで鋼板類や鋼管などはSPA-Hとなり、
成分的特長としては燐(P)銅(Cu)クロム(Cr)が多く含有されています。
耐候性といっても錆びない訳では無く、錆びずらく錆びても定着錆と呼ばれるものが母材に密着し
そこからは錆が進行しないという特徴があるということです。
通常、塗装仕上げと無塗装の二通りの使い方をしますが、錆による汚染や汚れの対処を適切にすれば
無塗装での定着錆が意匠的にすばらしい独自性を発揮します。
名前はSteelのSでPはPlateのP、AはAtmosphericのA。
初期には板しかなかったのであろうと予想はできますが
Atmospheric は大気のことなので意味不明な記号名です。

SMA490AW
JIS G 3114 溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材。
耐候性鋼と呼ばれます。実際、コルテンではないがそう言ってもきっと意味は通じます。
SMA400とSMA490には末尾にAW・AP・BW・BP・CW・CPがそれぞれあり
そのほかにSMA570WとSMA570Pの14種類があり、主に形鋼や平鋼の耐候性鋼規格です。
SPAとの違いは構造用のために鋼種が骨もの寄りであるのと溶接性が考慮されている点です。
名前のSはSteelのSでMはMarineのMで、AはAtmosphericのA。
末尾につくA・B・CはSM材やSN材と同じ意味合いで、
Wは無塗装の裸使用か錆安定化処理をする場合に使用する材で
Pは通常の塗装をして使用する材料の意味です。

SHY685
JIS G 3128 溶接構造用70キロ級高降伏点鋼板。新日鉄で言うWELーTENシリーズ。
ハイテン鋼(高張力鋼)の鋼板材といえます。
SS400などの普通鋼に比べ使用量を少なくしても高強度を得られる材料で
例えば比較的薄い鋼板を使って長いスパンを飛ばしても垂れないような使い方や
柱や脚を細くしても曲がらないのでコストメリットが合う時や意匠的にシャープなものには適切な材料です。
普通鋼が引張り強さ270MPa以上であるのに対して、
一般的には340MPa〜790MPaのものが高張力鋼と定義されているので
名称が高張力とついていなくてもハイテン鋼の物はあるということになります。
規格としては他にSHY685NとSHY685NSがあり全3種類が規定されています。
名前のSはSteelのS、HはHigh Yield(高降伏)のH、Yは溶接のYで
685は耐力値(引張試験による全伸び法測定値)、NはNickelのNでSはSpecialのSですが
ニッケル含有量は高いのでNは意味が通じますがSの意味は不明です。

材質の規格として良く用いられる物・面白い物はこんなところかと思います。
鋼管類は規格が多くSGP・STK・STKMなど等ありますが材質としてというよりも
大きさや厚み長さなどのサイズによる違いが流通としては大きいので今回は省きます。
その他色々なものがありますがご要望があれば紹介していきたいです。

今年1月から始めて早12回です。
ご覧頂いている方、本当にありがとうございます。
来年からは、加工を中心に展開していけたらと思いますのでなにとぞよろしくお願いいたします。
来年が皆様にとって良い年でありますように。


下げ
軒並み下げの状況である。
来年再来年としばらくは経済環境が良くならないと悲観的な声がよく聞かれるし実際納得してしまう状況が続いている。
そんな中、出荷減生産増という需給調整がうまくいっていな品種が多くなってきている。

井口隆一郎(1973生)
1996  東京造形大学 比較造形学科 卒業
1998  E&Yにて製作担当
2001  井口産業入社

現在 鋼材販売営業及び鋼管曲げ加工担当。
年に何回か発作的にモノ作りを始める二児の父。



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