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ホーム > モノ作りの現場から > 井口産業 井口隆一郎 #013



明けましておめでとうございます。
世の中が不況と言われあまり順調な状況ではありませんがきっと良い一年になるはずです。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


昨年、鋼材の種類について淡々と記事にしてきましたが
やっと本題の加工に入りたいと思います。
鋼材加工は大きく、切断・穴明・曲げ・切削に分別が出来
それぞれいろいろな方法があり費用対効果で選択していく必要があります。
基本的には、グラインダー・ドリル・ガスがあればすべて手作業で可能ですが
仕上がりや精度・時間に大きな違いが出て来ますし
何から何まで手でこなすのは大変なことです。
逆に便利な世の中になってしまった為に熟練の手が育ち辛くなってしまい
昔はできた加工が今は出来ないなどということは良くあることになっています。
残念ではありますが人間は逆戻りできない生き物ですし環境が人間を育てることを考えると、
昔出来たことは今は新しい方法で出来るようにすれば良いという前向きな立場で発展する様に
なるべく詳しく鋼材の加工について紹介していきたいと思います。



砥石での切断
かなり音と火花が出るので使用場所は
限られます。


砥石での切断面
内バリ外バリともにかなり出てますが
面取りしないで溶接する場合は面は出
ているので有効かもしれません。


まずは切断加工あれこれです。

砥石
削って切るので切断面はかなり粗くなり
精密とはいえませんがグラインダーに付けられるサイズもあり
一番手軽にできる方法と言えます。
斜めに切れてしまったりバリが強く出てしまったりと
刃によって違いはありますが
細かく切ったりするのには不向きです。
切断できるサイズは大きいものでも高さと奥行きが
100mm〜150mm程までになっています。


メタルソーの切断
音も少なく火花は出ないですが切削油を
流しながら切断するのでものによっては
ビチョビチョです。


メタルソーの切断面
バリも少なくキレイだが刃の状態に悪い
と面に深い傷が入ります。

メタルソー
木工の丸ノコの様な金属の刃を使って切るもので
バリも少なく比較的にキレイに切ることが出来て
切断面の垂直度も正確です。
一般的には、切れるサイズは高速カッターと同程度ですが
太丸を切ったり大型形鋼を切ったりするものもあり、
かなり大きなサイズまで切断可能になっています。
スピードと正確さを見ると一番と言えますが
刃がかなり高価なのとまとめて切るには不向きです。


バンドソーの切断と切断面
バンドソーも切削油をかなり使うが最近は
油を霧にして吹きかけるタイプが増え濡れ
ずらくなっています。
バリは薄皮が出る程度です。

バンドソー
こちらも金属の刃で切るタイプになり切断面はキレイですが
機械によっては刃が細いので垂直度が出にくく、
早く切ろうとすると曲がっていくため
切断スピードは比較的遅いです。
まとめて切ることが出来、鋼材屋などでは良く使われています。
持ち運びできるタイプは上から刃を落とすだけでも
切れていくので使いやすく
最近よくある火気厳禁の現場などでは
重宝されているようです。


プレスの切断面
ダレとかえりがかなり出て、厚いものを切る
ときはすごい音です。


アングル不等辺加工のプレス機
真ん中あたりにある互い違いになっている
刃で少しずつ落としていきます。


仕上がった不等辺加工アングル
メーカーで製作していないサイズを必要な
が多々あるのです。


H形鋼の開先加工
鉄骨として溶接するために端部をこの様に
加工します。
えぐれている部分がスカラップです。


H形鋼開先加工機の刃
三工程を一度に削り取れます。
一番上の刃でウェブを残してフランジを
削り次にスカラップ、最後に斜め開先します。
プレス
H形鋼などは切断できませんが
アングルやチャンネル・FBなどは一本づつで
細かい明細に切る場合には適しており
幅切りなどもできるので細かいことはしやすい方法と言えます。
切断面はダレが出るのでキレイとはいえません。

ガス
大型形鋼などは切断できる機械が限られるために
切り売りしてくれる場合に
長めにフリーハンドでガス切断したりします。
BH(ビルトエッチ)を作ってくれるところなどは
開先からスカラップまでガスでやってしまったりしますが
今では機械加工が主流です。

レーザー
通常、形鋼ではまず切断に使わない方法ですが
切断部を変わった形状にしたい場合や
任意に切断したい場合に必要になります。
場合によっては三次元加工になるため、
かなり高額な加工です。

機械加工
ミーリングやプレーナーなどがこれにあたると思われますが
形鋼ではあまり使われない方法。
寸法や角度の精度は抜群ですが単価も抜群です。




キリ穴の加工
手前のペットボトルから切削油を適度に
かけます。現在はボール盤より全自動の
マシニングセンターなどが主流です。

キリ穴
回転方向に無数の傷がつき底面にバリが
出るのでオーバーサイズのキリで面取り
したりします。


プレスの型
真ん中あたりにある穴で穴明けします。


プレス穴と抜き残
表裏でかなりのダレが出るのがわかります。

レーザー穴
バリもなく垂直度も精度も出せます。


ホールソーの刃
中心の尖がりを任意の場所に合わせて
使います。かなり大きなものも存在し
ます。
穴明加工あれこれ

キリ穴
ボール盤やマシニングセンター・ドリルなど
一般に言うドリルの刃を使ったものがキリ穴になります。
最も一般的な穴明け加工ですが
機械や刃の状態によってキレイさがまちまちです。
より大きな力で加工した穴はきれいに仕上がります。

ホールソー
機械によってはかなりの大きさまでキリ穴で開けていきますが
ドリルや比較的に力のないボール盤などで
大きな穴をあけるときにはホールソーになります。

プレス
形鋼に限って言えば一番安価な
穴明方法ではないでしょうか?
長穴も型があれば一瞬で開いてしまうので
使い勝手は抜群です。

ガス
大型形鋼などで鉄骨の梁に配管を通すような大穴は
キリやホールソーで開かないのでガスで穴明けします。

レーザー
形鋼では通常あまり加工しない方法で
穴形状が特殊なものや意匠として
必要な場合に使われます。
鋼種によっては火口が当たってしまったり
加工条件が複雑になるため出来ないことも多いです。



今回は加藤鉄鋼(株)様・斉藤鋼業(株)様に
撮影協力いただきました。
いつもお世話になりありがとうございます。


注釈
スカラップ 鉄骨の柱梁の接合部で溶接が交差しないように梁に設ける扇状の切欠き

ミーリング フライスなどと同義語。いろいろな回転する刃を使い切削によって加工する行為または機械の略称。

プレーナー ミーリングが回転だとすると一定方向に刃が行き来することで切削する加工。長尺の対象物に強い。

マシニングセンター  ミーリングなどをで刃の交換からコンピュータ制御で行う機械の総称。

火口 ガスなどの燃料が出る口。その部分を動かすことによって切れ込みを入れていく場所。
レーザーではその場所はレンズとなる。

開先 厚いものを中まで溶接するためにわざと対象部分に空間をあける行為または加工。
通常は厚みを斜めに落とす斜め開先。


据え置き
新年も変わらずの状況である。
問屋筋では逆ザヤ販売が頻発しており売れば売るほど損をする状況で、
メーカー販価とのギャップを対処しきれているのか?
引き合いもなく在庫も少なくなっている状況で
原料高が見え始めているのは良い兆候なのか
急激な上げのサインなのか、、、。

井口隆一郎(1973生)
1996  東京造形大学 比較造形学科 卒業
1998  E&Yにて製作担当
2001  井口産業入社

現在 鋼材販売営業及び鋼管曲げ加工担当。
年に何回か発作的にモノ作りを始める二児の父。



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