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ホーム > モノ作りの現場から > STANDARD TRADE. 渡邊謙一郎 #004


『ドアノブプレート』

ともすると忘れられてしまいそうな
ドアノブプレートをデザインするのが僕は好きだ。
理由は簡単で、僕がデザインしている物件の
内装はなるべくシンプルな考え方で納めているので、
最後の方に登場するドア周りの金物や、
サイン工事関係にちょっと手のこんだ仕事が
したくなるからである。





『ディテールに凝る。』

僕ら技術職はときに技術の押し売りをしてしまう事があるので、
僕がトータルで物件をやる時にはシンプルなデザインや施工
を心掛けるようにしている。
その反動で最後の方に残ったドアノブプレートを
手のこんだものにしたくなるのかもしれない。
つまりすごく細かいところや小さい面積の中で
技術を披露したいのである。
わかる人にはわかる、わからない人には全くわからない。
これが好きなのである。(あんまりイイとは思わないが・・・。)


『気に入ったものがないならつくる。』

いざドアノブプレートを探してみても
あんまり気に入ったものがない。
既製品は確かにシンプルなのだが、
画一的で表情に豊かさがないように思える。
真鍮やステンレスプレートを一枚ただ張っただけでは
何だか満足できない。
手抜きをしているような感覚に迫られて、
物足りなさを感じる・・・。
だったらつくる。ないなら作れば良いのである。




『技術屋』

既製品で気に入ったものがないなら作ってしまえばいいのである。
僕ら小さな技術屋は特注という事にあんまり抵抗感がない。
金額もだいたい想像できるし、日常のほとんどが特注品で、
1個や2個だけ作るのは普通である。
同じものを1000個2000個つくる既製品の下請け工場
でないので「たった一個作るのかよ!」なんて文句も言わない。
以外と東京にある工場はあまり大きくはないので
きちんと頼めば1個2個でもやってくれるのである。
製造の現場にしかわからない事なのかもしれないのだが
特注の敷居は以外と低いのである。


『もうひと手間』

これからも僕はドアノブプレートとは言わずに細かいところに、
「もうひと手間」を掛けてゆきたいと思っている。
それが技術とデザインの両方を行き来ししているものの
強みだとも思う。



『事例』

1)ひとつはうちのお店の入り口のドア。
真鍮のプレートの下にガラス色のアクリルを
ノブ穴やカギ穴をあけて挟み込んで面取りをしています。
木製のトビラについている真鍮のプレートに
透明のふちが回って、表情が豊かになりました。

2)もうひとつはトータルでやらせていただいて、
先日吉祥寺にオープンしたばかりのアートブック&ギャラリー
のお店「A-things」の入り口ドア。
DeliveryWorksの俵籐さんに加工していただいたものです。
透明のアクリルにノブ穴やカギ穴をあけて挟み込んで
面取りをして、裏からレーザーで文字を彫り込んで、
その彫り込んだ中にラッカーでクロを入れています。
表から見ると店鋪名がほんの少し浮いてみえて
奥行き感のある文字に見えます。
(ちなみにこのお店のサインは唯一これだけなので看板代わりです。)



渡邊謙一郎 (1972生)
神奈川大学工学部建築学科を卒業後、品川職業技術訓練校木工技術科へ。
(株)ユナイテッドパシフィックス、(株)日進装備にて特注家具製作を学ぶ。
1998年春、千駄ヶ谷に特注家具製作所として STANDARD TRADE. を創立。
2000年冬、横浜に自社工場を設立。
2002年夏、東京都目黒区に事務所移転と共に有限会社スタンダードトレード設立。
2003年秋、目黒区五本木にオリジナルショップをオープンさせる。以後、個人住宅用の家具を中心にオフィス、店鋪等のデザイン設計施工、住宅のリフォームと、デザインと製作の両方の立場からスタッフと共に幅広く手掛けている。



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