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ホーム > モノ作りの現場から > STANDARD TRADE. 渡邊謙一郎 #014




しかし、いろんなところから仕事の依頼がくる。

建築家林昌二氏からの依頼で、林雅子さん(奥様であり建築家:故)のデザインしたテーブルの修理をしてほしいと。
もちろんお会いしたことはないので、林昌二氏からの直接の依頼ではなく、日建設計さんからのお話である。

ここで林昌二氏について簡単に。
林昌二氏(1928年生まれ)
建築家、日建設計名誉顧問
主な作品 旧掛川市庁舎(1956年)
パレスサイドビル(1966年)
新宿NSビル(1982年)
受賞歴 多数

と、簡単に書いただけでも日本を代表する建築家の一人であることがわかる。

なんで僕が呼ばれるのかな?周りにいっぱい製造業がいるのに、と疑問に思いながらも、
もちろん本人とお話しがしてみたかったのもあり、快諾。



先日林昌二さんのお宅にお伺いして
その壊れたテーブルの現調にいってきました。
増築を繰り返した独特なたたずまいの家に独特な玄関。
大きな扉をコンコンコン、
「こんにちはスタンダードトレードの渡邊です。」
「あーどうもどうも、わざわざすみません、こちらへどうぞ。」
室内にも興味があってキョロキョロしている僕と
簡単に話を交わしながら二階の壊れたテーブルがある部屋に。

「これこれ、これなんです。壊れてしまって。」

見てみると、折れたり割れたりしているのではなく、
パーツがバラバラ。
これは元々の組み方が悪い。
技術面の問題である。
無垢材で作らなければもたないパーツを
弱い心材を使ったベニヤでつくっていて、
鬼目ナットで組んであった。
材料や金物選択の問題でもある。

「この材料でこの組み方ではまた壊れてしまう。」

そんなお話をしていると、
しっかりした材料でつくりかえて欲しいということになった。
本来、家具はメンテナンスを繰り返して
何度でも直しながら使えることが基本だと思う。
この家具はそうではなかった。残念である。

帰り際に僕は推測からこんなことを言ってみた。
「元々のデザインで実現できていないディテールがあると思います。」

元々のデザインはこうだったのではないかと
スケッチを描いて見てもらいました。
僕の推測はかなしくも的中。
壊れた家具を見て手を抜いた箇所を発見してしまったのである。
それが、ディテールのデザイン変更もしていたのである。
技術者は常に探求心がなくてはならないと僕は思う。
乏しい技術力ではデザインの変更を強いてしまうこともある。
もちろん元々のデザインのテーブルを納めることを約束しました。

後日、林昌二氏からこんなお言葉をいただきました。
「渡邊さんは若いのに目が利くねぇ、今度お店にお伺いしたい」と。
とてもうれしかった。

だけれども、自分のつくる家具は30年後お恥ずかしい結果になるまいと思い、またやる気もでた。








最近の仕事

自由が丘に赤ちゃん用だっこひもの専門店「北極しろくま堂」
2005年11月03日オープン

内装から家具まで全てやらせてもらいました。
ちなみに看板はDeliveryWorksの俵藤さんに御願いしました。





展示会のお知らせ

2005.11.9〜11.30
京都・河原町 「ANGERS」

UTRECHT(ユトレヒト)とSTANDARD TRADE.で「BOOKSTAND」という本と家具の展示販売会をやります。

新作もありますのでよろしければ見にきて下さい。当日はいますので声をかけてください。

http://www.standard-trade.co.jp/column/column-news20050808.html


渡邊謙一郎 (1972生)
神奈川大学工学部建築学科を卒業後、品川職業技術訓練校木工技術科へ。
(株)ユナイテッドパシフィックス、(株)日進装備にて特注家具製作を学ぶ。
1998年春、千駄ヶ谷に特注家具製作所として STANDARD TRADE. を創立。
2000年冬、横浜に自社工場を設立。
2002年夏、東京都目黒区に事務所移転と共に有限会社スタンダードトレード設立。
2003年秋、目黒区五本木にオリジナルショップをオープンさせる。以後、個人住宅用の家具を中心にオフィス、店鋪等のデザイン設計施工、住宅のリフォームと、デザインと製作の両方の立場からスタッフと共に幅広く手掛けている。



#034 2007.08 結論
#033 2007.06 自分の使用する材料
#032 2007.05 椅子の修理・張り替え
#031 2007.04 建築パーツ
#030 2007.03 飯田水引
#029 2007.02 神戸の現場
#028 2007.01 床塗り
#027 2006.12 定番商品
#026 2006.11 小物製作
#025 2006.10 どうなっていくか
#024 2006.09 Bayon(バイヨン)
#023 2006.08 細部に手を入れる
#022 2006.07 継ぎ手と見た目とその工夫
#021 2006.06 細くなる材料
#020 2006.05 繰り返し繰り返し
#019 2006.04 家具はメンテナンスフリーではない
#018 2006.03 経験の幅
#017 2006.02 訓練校
#016 2006.01 シンプルに。
#015 2005.12 ビンテージオーディオの修復
#014 2005.11 修理から学ぶ
#013 2005.10 刃物から
#012 2005.09 家具へのアプローチ
#011 2005.08 木製フローリングの伸縮
#010 2005.07 なべぶた
#009 2005.06 わからない程度の調色
#008 2005.05 複製によってわかる事
#007 2005.04 家具から内装へ
#006 2005.03 手に入る材料と向き合う
#005 2005.02 正確な板材から
#004 2005.01 ドアノブプレート
#003 2004.12 木材塗装の退色について
#002 2004.11 special source モリソン小林
#001 2004.10 展示会