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ホーム > モノ作りの現場から > STANDARD TRADE. 渡邊謙一郎 #015




今回は修復のお話です。

僕のお店では、比較的新しいがビンテージオーディオを使用している。
音質にものすごくこだわっているわけではないが、器具として、道具として見ていても美しいから使っている。
















そして、僕のお店用にセッティングしてくださった方からの御依頼。

状態はまぁまぁなのだそうだが、
この機種はもの凄く、貴重なものなので、
きっちりきれいにしないと駄目。
少々の傷も、もちろん駄目。

さて、修復のお話ですが、
いつも僕はこんなことを考えて修復している。

これは家具に限った話ではないと思うのだが、
古いものが残っていくということはただ、貴重だからとか、
デザイナーが有名だからとかだけではない。

そこには捨てられないという事実がある。

もちろん貴重だから捨てられないとか、
高かったから捨てられないとかいうのも、
そのひとつになってくると思うのだが、
はじめて買った家具だからとか、
お父さんにいただいたものだからとか、
なんだか愛着がわいてしまって、
ずっと持ち続けているものもある。

このことをもう少し掘り下げて考えてみると
こんなことも考えられる。

壊れたり、引っ越しだったりという状況を
なんとか乗りこえているのである。

そのたびにリペアーをされ、なんとか生き残ったのである。
あるいは、日々の生活の中で、
メンテナンスをされてきたのであろう。

こんな風に考えてみるとこの手のアンティークの修復は
分かりやすくなる。

数回かのメンテナンスをされ、現代までのこっているので、
パパパっと修理し、色を合わせるのではなくて、パーツをばらし、
きちんとその時代にあった方法で塗り重ねていく。
何十年とメンテナンスをされ続けてきたように
時間をかけてゆっくりと塗り重ねていく。
ニスやワックスのようにほんの少しだけの色を繰り返し塗っていく。
そうすることによってこそ、はじめて深みがでる。
奥行きがでる。
いつ頃の傷か?いつごろの塗装か?
ということをその家具をじっと見て考え、
その家具がたどってきた様子を想像しながら、
そのように作業を行う。
時間をかけるものである。
ぱぱっとは行かない。いくはずがない。

何層かに積み重ねられて深みを増していく。
捨てられずに手入れをされて時代を乗り越えていく、
そんな家具を僕はつくっていきたい。



渡邊謙一郎 (1972生)
神奈川大学工学部建築学科を卒業後、品川職業技術訓練校木工技術科へ。
(株)ユナイテッドパシフィックス、(株)日進装備にて特注家具製作を学ぶ。
1998年春、千駄ヶ谷に特注家具製作所として STANDARD TRADE. を創立。
2000年冬、横浜に自社工場を設立。
2002年夏、東京都目黒区に事務所移転と共に有限会社スタンダードトレード設立。
2003年秋、目黒区五本木にオリジナルショップをオープンさせる。以後、個人住宅用の家具を中心にオフィス、店鋪等のデザイン設計施工、住宅のリフォームと、デザインと製作の両方の立場からスタッフと共に幅広く手掛けている。



#034 2007.08 結論
#033 2007.06 自分の使用する材料
#032 2007.05 椅子の修理・張り替え
#031 2007.04 建築パーツ
#030 2007.03 飯田水引
#029 2007.02 神戸の現場
#028 2007.01 床塗り
#027 2006.12 定番商品
#026 2006.11 小物製作
#025 2006.10 どうなっていくか
#024 2006.09 Bayon(バイヨン)
#023 2006.08 細部に手を入れる
#022 2006.07 継ぎ手と見た目とその工夫
#021 2006.06 細くなる材料
#020 2006.05 繰り返し繰り返し
#019 2006.04 家具はメンテナンスフリーではない
#018 2006.03 経験の幅
#017 2006.02 訓練校
#016 2006.01 シンプルに。
#015 2005.12 ビンテージオーディオの修復
#014 2005.11 修理から学ぶ
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#012 2005.09 家具へのアプローチ
#011 2005.08 木製フローリングの伸縮
#010 2005.07 なべぶた
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#004 2005.01 ドアノブプレート
#003 2004.12 木材塗装の退色について
#002 2004.11 special source モリソン小林
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