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ホーム > モノ作りの現場から > STANDARD TRADE. 渡邊謙一郎 #022



木製家具の製作において継ぎ手というのもひとつの大切なポイントである。
木材の特性を考慮しなくてはならない場所であり、デザインにもおおきく関係してくるところであるからだ。
(木材どうしをつなぎ合わせるとき、部材の接合箇所に凸凹をつくりだし、
それをかみ合わせて接合する方法を一般的に継ぎ手と呼んでいる。仕口と呼ぶ場合もある)

継ぎ手は木材の部材接合方法の一方法であり、その中にも様々な方法がある。
木製家具を製作するにあたって、最も重要な部分を占めていると言ってもいいのかもしれない。
角材と角材、板材と板材、そして角材と板材をつなぐその継ぎ手の方法は
強度、外観、加工の難易、さらに言えば製品の用途や使用場所などを考えたうえで、
最も適切な方法をとらなければならない。

強度が良くったって、見た目がおかしくてはどうしようもないし、
見た目が良くても強度が望めなければ、それは製作してはならない。
そう、強度も見た目もよいモノが僕はよく求められる。
これが一番難しいし、やりたい。







僕の定番商品のソファーのアームは角材と角材の接合である。
その接合は外には見えなくて、中でほぞ組みしているのだが、
強度をさらに増すために小さな角木をつけている。
こういった角木との相性も考えなくてはならない。
また、その角木にR加工をしてあって、
あたかもアームが曲げ木のように見せてある。
(見えない人も多いとは思いますが、、、。)
これは曲げ木でつくるとコストが上がってしまうのと、
材料の無駄が生じるのを防ぐためであり、
意匠も兼ねた工夫でもある。






また、写真にある2700ミリの大きなチェストは
板材と板材の接合である。
この側板と天板の接合も中にほぞが入っているのだが、
2700ミリという大きなチェストから
少しでも圧迫感を消すために、
正面はほんの少し内側にテーパー(傾斜)しているのである。
ただ、コーナーをトメ接ぎしただけでは
おおきさがそのままこちらに伝わってくるので少しでも緩和し、
本体がひっこんで見えればと工夫したモノである。






伸縮方向の違う接合部分の代表的なモノが椅子である。
椅子は木目が様々な方向を向いているモノどうしを
接合しなくてはならないので
継ぎ手の方法はより慎重に考えなくてはならない。
この写真の椅子はシンプルに
一枚ほぞで接合しているのであるが、
見て欲しいのは合わせ目である。
先にも述べたように木目の方向が違うモノの接合は
伸縮方向も違うのである。
もちろんねじれや反りなども
縦方向と横方向の材料を接合しているのでかみ合いがわるい。
そこで部材の厚みをかえ、合わせ目にチリ(段差)を
はじめからつけておくことによって
その狂いの違いがあまり目立たないようになる。
これも接合部の伸縮方向のことを考えた工夫である。






最後にもう一つ。ミラーです。
ミラーは部材数が他の家具に比べ極端に少なく、
厚さもあまりないために継ぎ手の強度が重要になる。
このミラーはごく一般的な方法で接合されていて、
コーナーに「かんざし」が入っています。
かんざしとは、正式名称は「ひき込み留め継ぎ」
2枚の部材を留めきりしてあわせ、
外側からひきこみをいれ(のこぎりをひいて)
薄い板材を差し込んで補強するものである。
接合に弱い木口どうしの接合となるので
このかんざしは強度を増すのには最適である。
また、ささやかながら意匠にもなる。


このように接合部分の継ぎ手は
強度や加工の難易ばかりではなく、
かなりデザインにも関係してくる。
本ざね接ぎ合わせ継ぎ、あられ組継ぎ、留め継ぎ、
端ばめ継ぎ、吸いつきざん継ぎ、相欠ぎ継ぎ、
一枚ほぞ、二枚ほぞ、三枚ほぞ継ぎ、あり継ぎ、
小根ほぞ継ぎ、地獄ほぞ継ぎ、剣留めほぞ継ぎ、
ひきこみ留め接ぎなどなど、
あげればきりがないほど数多くある。

しかしながら、強度、デザイン、加工の難易など、
様々な事を考えて最も適切な方法をとらなければならない。
これが一番難しく、おもしろい。


渡邊謙一郎 (1972生)
神奈川大学工学部建築学科を卒業後、品川職業技術訓練校木工技術科へ。
(株)ユナイテッドパシフィックス、(株)日進装備にて特注家具製作を学ぶ。
1998年春、千駄ヶ谷に特注家具製作所として STANDARD TRADE. を創立。
2000年冬、横浜に自社工場を設立。
2002年夏、東京都目黒区に事務所移転と共に有限会社スタンダードトレード設立。
2003年秋、目黒区五本木にオリジナルショップをオープンさせる。以後、個人住宅用の家具を中心にオフィス、店鋪等のデザイン設計施工、住宅のリフォームと、デザインと製作の両方の立場からスタッフと共に幅広く手掛けている。



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