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ホーム > モノ作りの現場から > STANDARD TRADE. 渡邊謙一郎 #023



青山から246号線を銀座方面に車を走らせていくと三宅坂という交差点がある。
皇居のお堀に面した交差点で、この周辺は僕にとってわりと興味深い建築が建ち並ぶ。
国立劇場、国立国会図書館、憲政記念館、最高裁判所そして桜田濠(お堀)を挟んで皇居。
すこしはなれて、国会議事堂、衆議院、参議院、内閣府、総理大臣官邸、外務省、財務省、
国土交通省、警視庁、、、。あげればきりがない。







これらの建物について細かいことは知らないが、
なにしろ費用がかかっていそうだ。
膨大な土地を利用してゆとりのある建物を建てる。
外部や内部は石や木など高級な材料をふんだんにつかい、
それらを掘ったり様々な面をとったりして
細部まで見た目の装飾をしていく。
もちろん国民の税金で。
腹が立つ。だいたい、税金の使い方がまちがっ、、、、。
なんていうことはここではふれません。

せっかく税金を納めているので
僕はこの三宅坂周辺で勉強させてもらっている。

建物自体の形はシンプルに構成されているモノが多いのだが、
壁面、柱面、門などの一点に目をほそめてみると、
そのそれぞれは決してシンプルな仕事ではない。
よーく見ていくと、もの凄く手間をかけた仕事をしている。
ぱっとみではわからない、細かい面の構成、レリーフなど
細部にまで手をかけているすごさが本当に勉強になる。
また、その細部を技術面から考えてみると、
手のこんだ仕事をやっていることは間違いないのだが、
そのなかでも少しでも加工方法に無駄がなくなるように、
少しでも加工がしやすいようにできている。
(もちろん手を抜く加工のしやすさとは全然違う。)

技術面からの細部へのアプローチが手に取るようにわかる。
設計者に対して技術者から加工方法を通したアドバイスがよくわかる。
また、それを聞き入れて設計していたのであろう。








こういった昔建てられた公共建築は本当に勉強になる。
無駄に税金を使っているだけの事はある。
ふんだんに材料を使えた良い時代の建物で、
ありあまる技術を熱意を持って発揮していたのであろう。

最高裁判所なんかは権威の象徴であるかのように
ひどく冷たい表情をみせる。
民の力で石を積み上げた、ピラミッドのようにも思えてくる。

しかしながら、じっと、ゆっくりと細部に目を向けてみると
シンプルな構成のなかに技術者の知恵が伝わってくる。
ささやかな技術の集積であることが伝わってくる。

ふんだんに良い材料を使い、
ふんだんに時間を費やして建てられたそれらから、
細部に手をかけることがいかに重要で大切かを教えられる。

細部に忘れ物をしないようにしたいものだ。



渡邊謙一郎 (1972生)
神奈川大学工学部建築学科を卒業後、品川職業技術訓練校木工技術科へ。
(株)ユナイテッドパシフィックス、(株)日進装備にて特注家具製作を学ぶ。
1998年春、千駄ヶ谷に特注家具製作所として STANDARD TRADE. を創立。
2000年冬、横浜に自社工場を設立。
2002年夏、東京都目黒区に事務所移転と共に有限会社スタンダードトレード設立。
2003年秋、目黒区五本木にオリジナルショップをオープンさせる。以後、個人住宅用の家具を中心にオフィス、店鋪等のデザイン設計施工、住宅のリフォームと、デザインと製作の両方の立場からスタッフと共に幅広く手掛けている。



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