モノ作りの現場から(アーカイブ) | 読みモノ(アーカイブ) | 最新のコンテンツはこちらです
ホーム > モノ作りの現場から > tower 室愛彦 #011





無垢の木で家具を作りオイルで仕上げると
木は呼吸したままなので縮んだり、曲がったりします。
それを防ぐために十分に乾燥させた木材を使用するのですが、
注意して作っても木の個性もあるし、
置く環境で割れや反りが生じる事がたまにあります。
去年作って納めたダイニングテーブルが
木のはぎ合わせの所が少し開いたのですが、
置く場所がエアコンから1メートル程でかなり過酷な環境です。
そこで今試しているのが、「木固め」という作業です。
木の食器などに用いられる塗装方法です。
プレポリマーという液を木の奥まで染み込ませ
中の水分などと結合して、それが固まります。
樹脂で木目を潰さず木の繊維の空洞は残すので
呼吸はし続けるし、その上からオイルやワックスで
仕上げる事ができます。
質感は今までと変わらずに出来ました。
これでどこに置いても狂いが生じなければ
これからも使っていこうと思います。



僕も小林くんも軽の箱バンを持っています。
僕の箱バンは二年前に購入した現行型で、
小林君のは十年以上も前に作られた古いものです。
軽の箱バンは小さいサイズながら、
広大なスペースを誇る経済的な実用車です。
僕は車はモデルをチェンジするたびに
どんどん進化していくものだと思っていたので、
同じ車類の箱バンでも僕の持っているほうが
全てにおいて優れているのだと思っていたのですが、
実はそうではない事が最近解ってきました。
ぱっと見新しいほうがカッコよく、乗った感じも快適ですが、
荷台の有効スペースはなんと古い箱バンのほうが
10センチ以上長さ方向に広いのです!
180センチの荷物が入るのと、
170センチの荷物しか入らないのでは
僕らの業種では死活問題です。
これは走行性能とカッコ良さを重要視してしまい、
タイヤの位置を前にずらしてしまったからです。
しかもそのせいで座席に座ると
足元にタイヤスペースの張り出しができてしまい、
真っすぐに脚が置けず、内股にするか、
又は身体を車の中心方向に向けなければなりません。
男二人で前席に座ると少し向かい合い気味になり、
仲が良さそうに見えてしまいます。
それが嫌で身体を正面に向けると脚が内股になり、
どちらにしてもオカマっぽくなってしまいます。
そう見ると旧型のタイヤのレイアウトほうが実用面で正しく、
そこからくる無駄のないデザインは
新型より遥かにカッコ良く見えてきます。
十年以上も前の箱バンのほうが外寸が小さいのに、
荷台も人の座るスペースも広いという事は
実用車としては進化を失敗したと言われても仕方ないと思います。



ある日、Kくんの様子がおかしくなっていました。
お昼ご飯に誘うといつもは明るくノッてくるのに、
「僕、ちょっと前に食べたんで・・・」と少し暗い感じでした。
今日、towerに来た時に何かあったのか?と聞くと、
どうもKくんはエヴァンゲリオンのDVDを初めて見て
昨日最後まで見終わったそうで、
モヤモヤ感でおかしくなってしまい、
その影響で昨日はテンション落とし日となってしまい、
家に引き込もっていたのです。
少し前に小林くんにもエヴァンゲリオンブームがありましたが、
見終わった後はやはりモヤモヤしてしまったようです。
お昼ご飯が終わった後、Kくんはエヴァンゲリオンについて
小林くんに質問をぶつけていましたが、
小林くんは影響を受けすぎているKくんにダメ出しをして、
二階に降りて土手内ファーム
(小林くんの始めたドテウチーズのための農園)
の看板を作りに二階に降りて行きました。
小林くんは精神的に強いので多少のモヤモヤ感はあったものの
大きなダメージはなかったようですが、
K君は小林くんが去った後も魂を持って行かれたように
ボーッとしていて、「海から使徒が出てくる・・・」とか
「死について考えたんすよ・・・」とか時々変なことを言います。
そんな事がありながら夕方になり、
小林くんの所に行くと看板は完成しつつありましたが、
それを見たぼくらはビックリしました。
板に書いてある「土手内ファーム」の字体が
エヴァンゲリオンっぽくなっているのです。
Kくんに「なんすかこの看板、エヴァンゲリオンっぽいやないすか!」
と突っ込まれ、小林くんは少し離れて見て
「あ、ホントだ!」と大笑いしました。
書いていた本人もその時初めて気付いた様子でした。
小林くんも無意識のうちにエヴァンゲリオンの影響を
再び受けてしまっていたのです。



例年五月といえば、晴れて暖かい日が多く、
土手内の美しい風景を楽しめるのに、
今年は晴れて雲がなくても白い霧のような物が
遠くの島を見えにくくして、ぱっとしませんでした。
これは黄砂の影響と思われます。
酷い日は薄黄色に見えた事もあります。
五月中頃には止むだろうと思っていたのに、
とうとう梅雨入りしてしまいました。
生まれた時から土手内に住んでいるイズミおじさんは
子供の頃、ここはもっと砂浜が広く、野球をして遊んでいたそうです。
海際にいるとたったの4年でも環境の変化を感じます。


室愛彦 (1970生)
愛媛県松山市出身
1996年株式会社イデー入社。
退社後、松山に戻り2004年tower設立。
木工職人の今村 則之、椅子張り職人の白方 伸定とともに、家具の受注生産を行っている。



#037 2010.08 7月のtower
#036 2010.07 6月のtower
#035 2010.06 5月のtower
#034 2010.05 4月のtower
#033 2010.04 3月のtower
#032 2010.03 2月のtower
#031 2010.02 1月のtower
#030 2010.01 12月のtower
#029 2009.12 11月のtower
#028 2009.11 10月のtower
#027 2009.10 9月のtower
#026 2009.09 8月のtower
#025 2009.08 7月のtower
#024 2009.07 6月のtower
#023 2009.06 5月のtower
#022 2009.05 4月のtower
#021 2009.04 3月のtower
#020 2009.03 2月のtower
#019 2009.02 1月のtower
#018 2009.01 12月のtower
#017 2008.12 11月のtower
#016 2008.11 10月のtower
#015 2008.10 9月のtower
#014 2008.09 8月のtower
#013 2008.08 7月のtower
#012 2008.07 6月のtower
#011 2008.06 5月のtower
#010 2008.05 4月のtower
#009 2008.04 3月のtower
#008 2008.03 2月のtower
#007 2008.02 1月のtower
#006 2008.01 12月のtower
#005 2007.12 11月のtower
#004 2007.11 10月のtower
#003 2007.10 9月のtower
#002 2007.09 オーシャンズ13
#001 2007.08 tower