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ホーム > モノ作りの現場から > tower 室愛彦 #035





東京でブティックなどの店舗デザインをしている
クリックスのイナガキさんから
ある化粧品のお店のエキシビションに使うソファ
を作ってほしいとの依頼がありました。

直径1600ミリの大きさで分割してはいけないデザインだと
絵を見てわかりました。

納期もあまりなく、こちらも少し焦るのですが、あちらのほうでも
ソファの仕上がりでエキシビションがどうなるのか決まると
大変心配なさっている様子で、図面はあるのですが、
他にも図面だけでない何かを訴えたい様子でした。
クリックスさんとの打ち合わせの電話で、
「社長のルミ子さんがゴージャスアンドリッチな感じで
と言ってまして、そんな感じでよろしくお願いします。」
と言われました。
なんとなく理解して仕事を引き受けましたが、
年配の上司に「室くん、なにをあれしとけよ。」と指示され
「はい、わかりました!」と言っていたサラリーマン時代
を思い出しました。



ゴージャス&リッチ。
たぶんキルティングの深さや微妙な膨らみで
そう感じてもらえるのではないかと思いました。
ソファは天のパイピング500ミリ丸、背中の下の600ミリ丸、
キルティングの線の1100ミリ丸、
座の外側パイピング1600ミリ丸4つの丸が
綺麗にできないといけません。
カバーを綺麗に縫製できても
ベースが歪んでいたら歪みますので、
丸のところは柔らかいウレタンでなく
固いチップで型崩れを防ぎます。
大きなパーツにキルティングをかけるのは一苦労です。
綺麗に円を描かなければなりません。
15ミリ厚のウレタンをかますので
ミシンの送りだけを頼りにするわけにはいかず、
手でも生地を適度に送っていきながらカーブさせます。
生地パーツが大きいので、
両手と左足で生地を持っていかれないように止め、
右足でミシンを踏みます。
ラインが歪まないよう細心の注意を払います。
手の人差し指と中指の間の水掻きのところを
キルティングしたい線の上に置くと上手くできます。
手のひらの中で最も神経の敏感な水掻きの部分が
ガーッと上下動するミシン針に縫われたらオオゴトだという
恐怖感がセンサーになって線を結んでくれます。

去年カッターで切った左手の親指の先は
カッターの刃が近づくと反応してくれるようになりました。
これは上手くなるための手の進化かもしれません。



背のパーツと座のパーツとを別々に作り、
張り上げたあとで底からビスで組みます。
背中のパーツの底にウレタンを張った時と
ツラになる600ミリ丸のコンパネを付けることによって
生地を張る時強く引っ張っても綺麗な丸を保つことができました。

こうしてゴージャス&リッチが完成しました。

次の問題は納品先の表参道ヒルズに入る車のサイズが
全長6mの高さ2.9までだということを言われて、
あてにしていた運送会社に聞くとそういう小さなトラックはない
と言われたことです。
なので1.3トンのアトラスを自分で運転して
東京まで運ぶことにしました。

アトラスは2002の日韓ワールドカップの
対ロシア戦の日にも仕事で東京に来ていて、
お祭り騒ぎの六本木に進入したことがあります。
「オー、ニッポン、ニッポン、オイ、オイオイオイ!」
と叫ぶ民衆に囲まれ危険でした。



アトラスで松山を出発して
まずモリソンのspecial sourceに立ち寄りました。
積み荷をチェックしたかったのです。
モリソンは現代手工業乃党の展示会場にいて不在でしたが、
いつもモリソンに叱られている弟子のだいちゃんが
ゴージャス&リッチを下ろすのを手伝ってくれました。
だいちゃんは納品日にも同行してくれて手伝ってくれました。
納品場所は表参道ヒルズの地下3階でした。
翌日ここで化粧品の秋冬の新作を発表する
エキシビションをするそうです。
「だいちゃん、終わったら山頭火行こうや。」
僕は山頭火のラーメンが1番好きなので
今回の東京で絶対食べようと思っていたのですが、
なんだかんだでこの昼食が最後のチャンスになっていました。
するとイナガキさんが「室さんお昼ご飯食べてないでしょう。
お弁当ありますからどうぞ。」と言ってくださいました。
「ありがとうございます!」とスタッフさんたちのいるところで
だいちゃんと一緒にお弁当を頂きました。
イベントスタッフさんと同じお弁当を食べられるなんて
最初で最後なので記念になりました。
山頭火はまた今度食べられるのです。
設置はスムーズに終了しました。
社長のルミ子さんのイメージした
ゴージャス&リッチになっているのか心配でしたが
スーツを着た責任者らしき方がイナガキさんに
「いや〜ソファ、カッコイイよ!バッチリだよ。」
と言いながら肩をもんでおられたのを見て安心して帰りました。


室愛彦 (1970生)
愛媛県松山市出身
1996年株式会社イデー入社。
退社後、松山に戻り2004年tower設立。
木工職人の今村 則之、椅子張り職人の白方 伸定とともに、家具の受注生産を行っている。



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