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ホーム > 読みモノ > めざせ!ロッキンオン 26. JONI MITCHELL




あたいは猫なのさ。名前は青。
どうして青という名がついたのか、とんと見当がつかない。
何でもあたいのいたペットクリニックの隣の工場で、
ガーガービービーうるさい音を出す連中の一人が、
さびの匂いをプンプンさせてあたいの顔をのぞきに来るものだから、
なんだかとっても嫌な予感がしてたのだけれど、
あたいの立場といったら里子にいくしかないわけで、
クリニックの消毒液臭い中で一生を終えるよりはマシだと思って、
少しばかり愛想の良い顔でとりあえず見ておいたのが災いして、
そのやからの里子になることになってしまった。
あたいはここではじめて「職人」というものを知った。
しかもあとで聞くと、そのやからは職人の中でも一番高慢で高飛車な種族であったようだけれど、
その時はただ、職人の手のひらにのせられてスーッと持ち上げられて、
さび臭いのと油っぽいのが少し鼻についたけれど、
なんだかフワフワして気持ちが良かった感じがしただけだったのさ。

職人の住まいは日当たりも良く、広さもまあまあといったところだけれど、
ドスドス歩き回ったり大きな音でテレビというものを見たりして、どうもデリカシーというものが無い。
あたいがいい気分でうたた寝をしようものなら、臭い息を吹きかけてはちょっかいを出しに来る。
職人が仕事へ行った後は、近所の子供らの遊ぶ声や、
すずめやしじゅうからの鳴き声なんかも優しく聴こえて来て、
これからのいろんなことを考えたりうたた寝したりと、静かに時を過ごせるのだけれど、
帰ってくると、とたんにやかましい。
大きい尻をドスンと椅子におろして、白いテレビに向かって両の手をカタカタとせわしなく動かしたと思えば、
トイレだお風呂だとドスドス出たり入ったりしてなんとも落ち着きが無い。
しばらくそんなせわしなさが続くと、部屋の灯りを少し暗くして、
何か飲みながら青い色のインクで物書きを始める。
すると小さな音で音楽と言う物が流れて来る。
その音楽は、この職人の行動からは見当もつかないほどに静かで、せつない。
あたいもこの時ばかりは、職人の傍らにぴったりとくっついて、
まったりするのがだんだんクセになってきたほどだ。
この曲の題名は「ブルー」。この曲が好きだからあたいの名前を青にしたって言うのさ。

それからしばらくして知った話だけれど、青という名前はこの職人があたいを連れて帰るのに、
アレルギーとかいうものがないか調べるために、注射を刺した左うでのところが内出血して、
大きな青たんが出来たことでついた名前らしい。

そんなことだろうさ、と思いつつ今晩も一緒に「ブルー」を聴く。
もうそろそろ青って呼ばれたら、振り向いてあげてもいいかなって思った。


joni mitchell
ラブアンドピース全盛の1968年デビュー。
1970年のワイト島でのフェスに、ギター一本だけ持って現れ、
ジミヘンやスライストーンなどのファンからヤジ攻撃を受けるもまったくひるまず力強く歌い続け、
その凛とした姿を多くの観衆の目に焼きつける。
71年4枚目のアルバム「BLUE」を出すと、その後「COURT AND SPARK」など名作を送り出す。
ジョニミッチェルというと、アートの世界の人というイメージが強い人も多いんじゃないでしょうか。
彼女がデビュー前、一人の女の子を出産しましたが養えるお金もなく、
やむなく里子に出してしまうのですが、それから彼女はひたすら音楽に打ち込んで走り続けてきました。
30数年の時を経て、彼女は一人娘と再会を果たします。
それから彼女は音楽活動をやめたそうです。
「娘を失って、その哀しみを埋めるために音楽を始めた。
今再び娘と共に生きて行けるのだから、もう音楽はいらないのよ」
そう言って彼女はギターを置いた。
僕は「ブルー」をよく聴きます。
僕のうでに寄り添って、愛猫の青はほんとにせつなそうに、外を見てるんです。
いつか一緒だった母猫を思い出しながら。

(文&イラスト: special source モリソン小林)

今回の物語の語り手の青です。女の子です。
皆さんよろしくです。



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