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ホーム > 読みモノ > めざせ!ロッキンオン 拡大号 27. cocco 遥かなる古代からの魂(マブヤ)




彼女をはじめて見た時、そのワンピースに裸足で長い黒髪を振り乱しながら歌う姿は、
まるでグリム童話の中から飛び出して来たのか、
はたまた神話の世界から現世に降りて来たのかと思うほど、衝撃的でした。
神話の中から?あながち外れてはいないのかもしれません。


斎場御嶽から久高島を見る

沖縄の神話の中では「ニライカナイ」という
遠く太平洋の彼方にある原郷があって、
そこからアマミキヨとシネリキヨという2人の神様が
沖縄の浜比嘉島、そして久高島を経て、
その久高島を望む岩礁の高台にある
沖縄最高の聖地「斎場御嶽(せーふぁーうたき)」
へと上陸して、沖縄に五穀と火をもたらした
という言い伝えがあります。
中でも久高島は古来から神の島と呼ばれ、
島の全ての女性が神女になる可能性を持ち、
母系制的なつながりの中で
神事を最優先して生活しているそうです。


沖縄久高島、浜比嘉島、斎場御嶽

12年に一度午年に行われる秘祭「イザイホー」は
1978年以来後継者が現れないという理由で
行われていないのですが、
沖縄最大の神事とされています。
それは「ニライカナイ」伝説の
アマミキヨとシネリキヨがいつどこから来たのか、
なんのために沖縄を造られたのか、
そして未来へとどうつながって行くのか、
という謎を解く鍵と言われています。
さまざまな推論が発表されていますが、
その中でも興味を惹かれる推論がありました。
それは日本神話の中のイザナミとイザナギの
国生み物語と同様なものだということ、
そしてその神々同一なのではないかということ、
そしてその五穀、火というものから
時代的に弥生時代から飛鳥時代の間である
ということです。


ここからは話が長くなりそうなので、マニアックな方だけ読んでみて下さい。
でもCOCCOってこんな話を聞くと、なんとなく古代の巫女さんのように見えてきませんか。


日本周辺の火山分布

日本神話以前の日本人
そのもののルーツに関しては、
以前NHKで放送された「日本人はるかな旅」
での説が真相にもっとも近い
と思われているようです。
(このあたりの縄文時代から
弥生時代への移行期については、
また機会があればにします)

一万年以上も続いた縄文時代は、
火山とともに生きた「火の民族」でした。
それは遺跡群が示す以上に
地球に存在する活火山の10%強が
日本列島に集中していることに他なりません。


渡来人の流れ

その後大陸から渡来人が渡って来ると、
様相は一変します。
おそらく最初は大きな争いや侵略は
無かったのかもしれません。
稲作文化を受け入れ、
融合する縄文人も多かったはずです。
大陸では火山は無く、
渡来人は平地に住み水田を作り、
稲作のために太陽を崇めた
いわば「日の民族」だったわけで、
火山は彼らにとって脅威でしかなかったのです。


古代九州の国々

九州北部から次々と渡って来る渡来人たちは、
すぐ南の肥沃な筑紫平野から、
東に向かい関門海峡を渡り
本州へと浸透して行き、数百年かけて
縄文人と融合してゆくのです。

その中で、筑紫平野より南下する渡来人は
極端に少なかったようです。
そこには巨大火山阿蘇を中心とする
約二十ヶ国の火の民族の連合国家
「邪馬台国」があったからです。
そしてそのさらに南には霧島火山群を
中心とした「狗奴国(くなこく)」があって、
行く手を阻んでいたのです。
しかし火の民族と日の民族の同化が進む中で、
少数になっていった狩猟民族との
武力抗争が始まります。
同じ民族同士の流血でした。
魏志倭人伝の中にこの頃の倭国(日本)の様子が
こう記されています。

-倭国乱れ相い攻伐すること暦年、
すなわち共に一女子を立てて王となす。
名付けて卑弥呼という-


こうして一時期ですが
日本は一人の火の巫女(みこ)によって、
平和を得るのです。


日本の活火山、死火山

世界的にみても歴史というものは
すべて強者(侵略者)の都合の良いように
書かれたものがほとんどです。
日本の国生み物語である日本書記にしても、
現在伝わっているのは、
七世紀から八世紀にかけて
朝廷が編纂したものだそうです。
大化の改新後の中央集権国家を
磐石にするために、
この頃整備された神社が、
彼らが何におびえていたのかを
端的に表しているように思えます。
それは火山を封じ込めるための
(鎮めるための)ものだったようです。
(この火山と神社の関係と
それにまつわる神話はこれまた機会があれば)


大和朝廷の神社整備
それは3世紀に見た、
強大な力を持ち千人の巫女を従えた、
火の民族の女王卑弥呼の怨念
ではないでしょうか。


ここで日本書記に書かれている、日本神話の国生み神話を簡単に見ていきましょう。
まず、イザナギ、イザナミという男女神が結婚して、国土と万物を生み出すところから始まります。



イザナミが最後に生んだカグツチが
火の神だったため、
女陰(ほと)を灼かれて死んでしまう。



イザナギは黄泉の国まで降りて、
イザナミを訪ねにゆく。



そこで見たのは全身が腐敗して、
頭・両手・両足・陰部にそれぞれ
雷(いかずち)を置いて横たわる妻の姿だった。



その姿に驚き、逃げ出すイザナギを見て
怒ったイザナミは、雷神や鬼たちを放って
イザナギを追う。



死に物狂いで逃げるイザナギは
ついに巨大な岩で
黄泉比良坂(よもつひらざか)をふさぎ、
夫婦の契りを解いて脱出に成功。



イザナギはその死者の国のけがれを清めるため、
九州・日向の河口で沐浴をする。
その時に生まれたのが太陽の女神アマテラス。


一方イザナミはこれ以降、
死の世界の支配者
黄泉津大神(よもつおおかみ)になり、
破壊と死をもたらす女神に変わってしまう。



アマテラスは最高神として
高天原(たかまのはら)に君臨する。



しかし、弟のスサノオの横暴に驚き恐れ、
天の岩戸に身を隠してしまう。



太陽神を失って世界は暗黒と化す。



神々が常世の
長鳴鳥(とこよのながなきどり)を鳴かせて、
岩戸の前でアメノウズメを舞わせる。



その騒がしさにアマテラスが
岩戸を開いたところを引き出して、
ようやく世界に光が戻ることになった。



そののち高天原から
地上の人間界へと降臨する際、
アマテラスから孫のホノニニギに
つかわされたのが三種の神器です。
天孫一行は日向の宮を築き、
南九州に勢力をのばし始めて、
日本神話は人間世界の物語に
なってゆくのです。

(その後四代目カムヤマトイワレヒコが
日向を出て宇佐神宮を造り、
畿内へと東征して神武天皇になり
朝廷の礎を造られていく。
この辺りは、邪馬台国が九州から近畿へと
東遷したという多数の推論があって
おもしろいところですが今回は抜粋です)



邪馬台国分派と巫女団及び火の民族の道程



斎場御嶽

これらの神話解釈はそれぞれ
細かい見解の相違がありますが、
沖縄神話に基づいていくと、
ひとつのストーリーが出来上がります。

久高島の秘祭「イザイホー」は
女神アマミキヨの復活と再生を祝う祭りで、
アマミキヨとは「イザイ」すなわちイザナミであり
「ニライカナイ」とはヤマトの国
ということが言えます。
そして母なる大地、火山を象徴する
女神イザナミは、同じく火の民族の
最後の象徴であった卑弥呼だったのです。
卑弥呼が病に倒れ、邪馬台国に再び
争いが起きると、巫女たちは女王とともに
国を離れ、遠い沖縄へと流れ着いたのです。

アマミキヨとイザナミが同一であるという説は、
現在では通説として認められています。
しかし、この二人と卑弥呼が
同一人物であったのではないか、
というこの推論は、沖縄神話の中に留まらず、
日本神話の中でも興味深い内容です。

一方、分裂した邪馬台国は
渡来系の男王に率いられ、
九州から畿内へ渡り、
大和朝廷を築いていくことになるのです。


現在も琉球の方言は、
古代の日本語の音韻に最も近く、
中でも琉球神女の歌う神歌の
「ティルル」「ウムイ」といった言葉は、
古代の響きを現代に伝えるものです。
「イザイホー」は1800年の長きに渡って、
復活と再生を願ってきたのです。
現在もなお女王は、
遥か古代からの復活の時期を、
静かに待っているのでしょうか。


沖縄には御嶽(うたき)と呼ばれる
神聖な場所がいくつも存在します。
古代日本でも神社建築が起こる以前は、
こうした山や森を信仰の中心にしていました。
今でも沖縄の女性は信仰の火を消さずに
祈り続けているのです。
遥かな古代に失った、
原日本の魂を取り戻すために。



参考文献
「ヤマタイカ」星野之宣
「神の島のまつり イザイホー」桜井 満
「日本神話の新研究」松前 健
「火山列島の思想」益田 勝実
「高天原の謎」安本 美典
「アマテラスの誕生」筑紫 申真 
「沖縄の祭礼」渡邊 欣雄


cocco
沖縄県那覇市生まれ。1997年「カウントダウン」でデビュー。
同年「強く儚い者たち」がヒット、2ndアルバム「クムイウタ」でその存在を強烈に印象づけた。
2001年4枚目のアルバム「サングローズ」をリリース後活動を休止。
絵本作家として活動する中、沖縄の海をきれいにと、ゴミゼロ作戦を敢行。
大きなムーブメントへとなって行く。
2004年に再び活動を開始。
2005年にはくるりのメンバーとともにsinger songerを結成して「初花凛々」でデビューする。
2006年シングル「音速パンチ」、アルバム「ザンサイアン」で完全復活。
つい先日には6枚目のアルバム「きらきら」をリリースするなど精力的に活動している。

30歳になって、もし野生生物だったらそれで寿命だから、自分は野生生物としての生涯を終えて、
文明人として歩いて行くと決意したと語っていた彼女。
彼女はヤマトに渡り、琉球へ帰り、気付いたのかもしれません。
残っていたはずの原日本の面影が、沖縄からも消えゆく運命なのかと。

(文&イラスト: special source モリソン小林)



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