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ホーム > 読みモノ > めざせ!ロッキンオン 28. T-REX




今からちょうど30年前の9月16日、マークボランは自動車事故で、29年の短い生涯を終えた。
グラムロックの象徴として、70年代初めのシーンに君臨したマークは、数多くのフォロワーを生み出し、
パンクスからも支持を受けるが、いつも満たされることのないうつろな目をしていた。
当時狂騒的なロマンチシズムに満ちていたロンドンでは、髪をちりじりにしたり色とりどりに染めたり、
口紅を塗り眉を剃り、10数センチのロンドンブーツを履き、ラメやサテンやら別珍の服を着て、
街を徘徊する若者で溢れていたが、マークのような血の気のない色白のうつろな目をした青年はいなかった。
しいて言えば、映画で観た吸血鬼くらいだった。


たーちゃんの絶叫とともに過ぎ去って行ったカブト山の夜の後、
しばらくしてたーちゃんが、お弁当ににんにくばっかり入っているのかと思うほどにんにくくさいのと、
誰にもらったかどこで拾ったのかと思うほどへんてこな十字架のおもちゃを持っているのに気付いた僕とワギは、
なんとなく意味ありげな彼にそのへんのことを聞いてみると、
とんでもない事実を知らされた。
#07 DAVID BOWIEの話からのつづきです。読んでない方は読んでからこの先続けてね)
「実はオレ、あれからあのお兄さんのうちに遊びに行ってさ、大変なことを知っちゃったんだ」
たーちゃんは事細かにお兄さんのおうちでのことを、ぼくらに説明し始めた。
「あのお兄さんは吸血鬼なんだよ」
「え〜!」
僕とワギは一瞬びっくりしたのと半笑いになってるのとで、ビミョーな顔で驚くと、
たーちゃんは真顔でその信憑性について話した。
「ほんとなんだよ!吸血鬼にされそうになったんだから!」
僕とワギが返答に困りながら黙っているのに耐えられなかったたーちゃんは語気を荒らげて、
「なんだよその顔、友だちが命を狙われてるのに助けようとかないのかよ!」
と、僕らに詰め寄って来た。
さすがに、いつもただであんこ玉とかラメックとかを食べさせてもらってる駄菓子屋の息子には頭が上がらず、
僕とワギはたーちゃんと3人で吸血鬼を退治しに行こうということになった。


JR原町田駅のすぐ裏にあるお兄さんのアパートの窓は、黒いカーテンで塞がっていて、
中の様子はまったくうかがえないというか、人のいる気配はしなかった。
僕らは首にこれでもか、というくらいにんにくをぶら下げ、駄菓子のおまけの十字架を握りしめて
お兄さんのいる部屋のドアの前に立った。

たーちゃんがおそるおそるドアノブを回すと、鍵は空いていて吸い込まれるように中に入っていった。
僕とワギも後について入っていくと、すぐ右側の部屋の片隅にある黒い箱のふたが開いて、
真っ白な手が飛び出して来た。
「ギャ〜!!」
たーちゃんはにんにくと十字架と僕らを残して、瞬く間に夕暮れのバスターミナルへと消えていった。

その後、お兄さんはびっくりして僕らに「何やってんの?」と笑いながら、
横にある棺桶の中で眠るとリラックスできるとか、
夜のライブハウスで働いてるから昼間は寝てるんだとか、
バンドの名前がヴァンパイアだから吸血鬼の付け歯を持ってるんだとか
いろいろと説明してくれました。
そして僕らはお兄さんのバンドのテープをもらって帰ったのでした。

それから25年後、2年前のある日、ワギから久しぶりに電話がかかってきました。
仕事の帰りに町田の駅前で、あの時のお兄さんとそっくりの、
本当に顔も髪型も服装もあの時のまんまのお兄さんにそっくりの人を見かけたんだそうです。
ワギはまさかな〜と思って通り過ぎようとしたんだけれども、気になって振り向いたらその人は
立ち止まってずっとこっちを見ていたので恐くなったんだけど、
意を決して話しかけようとしたら、急にいなくなって見失ったそうです。
その後すぐにあのアパートに行ってみたら、
大きなマンションとマンションの間にまだあのボロアパートが残っていて、
お兄さんのいた2階の部屋の窓には、あの時と同じように黒いカーテンがかかっていたそうです。
もちろんこの話はたーちゃんにはしてませんけど、もしかすると.....


T-REX
1968年ティラノザウルスレックスとして異常に長いタイトル「My people were fair and had sky in their hair... but now they're content to wear stars on their brows」でデビュー。
フォーク調の弾き語りと、パーカッションとコーラスのみという神秘主義と
サイケデリア趣味の入り交じった世界観のアルバムで、アンダーグラウンドの世界で台頭し、
1970年T-REXに改名後「Ride a white swan」が大ヒット。
その後「電気の武者」「スライダー」など数多くのヒット曲を含むアルバムを生み出し、
時代のカリスマとしてキャリアの頂点を迎える。
73年「タンクス」発表後『グラムロックは死んだ』と発言すると、
彼は次第にその身を再びアンダーグラウンドの世界へと移行させていく。
堕ちたグラムスターとなった彼をパンクスたちが再び支持し出すも、
77年「地下世界のダンディ」リリース後の9月16日、
『30歳になる前に死ぬだろう』という自身の予言通り、29歳でこの世を去った。
今となっては、彼の功績について説明する必要のないほど、どこかで必ず彼の音楽が流れている。
たぐいまれなソングライティングのセンスを、
デヴィッドボウイもブライアンイーノもルーリードも追いかけたが、彼に追いつくことは出来ないでいる。
死した彼の肉体は、ドラッグによって血管がボロボロになり、血もほとんど出なかったらしい。
色白で妖しい彼の肉体は、血を失ってしまっていたのかもしれない。ヴァンパイアのように。

(文&イラスト: special source モリソン小林)



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